第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

安全に基本が身につく!

中井直道の『もう一度、基礎ライディング #01』【目線と下半身でバイクを曲げる】

  • 2019/5/12

初心者やリターンライダーはもとより、長くバイクに乗っていてもなぜか怖さが抜けない、本当に正しいライディングができているのか自信がない……。そんなライダーはけっして少なくないことだろう。ライディングのインストラクター・中井直道さんは、ヤングマシンの姉妹誌“ビッグマシン”でライテク記事を多く展開してきたプロライダーだ。誰にでも参考になる、その普遍的な基礎ライディングを紹介しよう。実践編の第1回は、目線と下半身がテーマである。

PHOTO:Takeshi TSURUMI

安心して曲がるための『基本』とは?

「安全に基礎を身につけたいなら、やはり“8の字”での練習に尽きますね」

中井さんが安全運転をテーマに導き出した結論、それは8の字トレーニングで基礎を磨くことだった。

「もちろん8の字だけをやっていればいいというわけではありません。でも、8の字をベースとし、すべてをそこから発展させていけばいいのです。ライディングは、『ここはこう、そこはそう』などとバラバラにつくっていくことはできません。初めての人でも段階的に、連続性をもって学んでいけるようにする、そのはじまりが8の字というわけです」

そこで最初に教えてくれたのが、一定の速度で一定の弧を描く定常円旋回。

「ここで学んでいただきたいのは、まず目線です。バイクは、ライダーの見た方向に向かうもの。きちんと行きたい目標を定め、そちらに目線を向けているかをチェックしてみてください。その際、目だけではなく顔ごと目標物に向けるようにすると、自然に切れたハンドルに手が追従するなどのメリットも得られるはずです」

2つのパイロンを使い、その周囲を均等な間隔で数字の8を描くように回るのが、いわゆる“8の字”だ。まずは一定の速度で8の字を描きながら、目線と下半身のホールドを確認しよう。最初は楕円で右回り/左回りでもいい。目標物がパイロン×2本だけだと走行ラインが安定したいこともあるので、路面にガムテープなどで円を2つ作ってしまうのもアリ。

ここで注意点も教えてくれた。

「特にバイクを寝かせることに抵抗の少ない方に多いのですが、より速く、より勢いよく曲げていこうとして速度が上がり、バンク角ばかりが増えていくことにならないよう、注意していただきたいのです。路面コンディションが悪いときに同じことができるでしょうか? また、そのままでは切り返しの瞬間以外、バイクがとちらかに寝ていることになります」

「もしも寝かすのが怖いということであれば、まずは8の字ではなく楕円による右回り/左回りから試してみるといいでしょう。いずれにせよ、まずは大きな速度変化を作らなくていいので、目線でバイクの曲がり方が変わることを体験し、理解していただければ、このステップの目的は半分達成したと言えます」

目線がすべての基本と言われることは、バイクに限らず多くのスポーツに共通している。では、半分達成したとして残りのもう半分とは?

「バイクは下半身で操るものだ、ということを感じ取っていただければと思います。それにはまず、ニーグリップを中心としたバイクのホールドが必要になります。こによって車体が安定してフラつかなくなります。上半身はなるべくフリーにして、手元の操作系に集中できるようにしていくといいでしょう」

【行きたい方向に目線を送っていく】曲がったいきたい方向に目線を送ると、バイクも自然とそちらに向かう。近くの路面を凝視すれば、バイクの行き先が安定しにくくなるのだ。目標となる地点をその時々で定め、目線を送るようにしたい。これがライディングの基本にして、上級者になっても欠かせない重要なテーマとなる。

ちなみに、と付け加えてくれたのは……。

「やや慣れている方向けの話になりますが、目線の動きからバイクを導いていくこともできます。そうなると、今度はいつどんなタイミングで目線を送っていくのかといった考え方に変わっていきます。同じくベテラン向けの話で下半身ホールドについて触れるならば、ニーグリップにこだわる必要がだんだんなくなっていくことになるでしょう。といってもバイクをホールドしないわけではなく、いつどのようにバイクに働きかければいいのかという勘どころがわかってくると、必要なときに必要なだけホールドを強めるような意識で十分になるのです。また、ライディングフォームの動きが大きくなってきたら、今度はヒザではなく内モモやカカトによるホールドも意識してみていただければと思います」

正しく操作しやすいライディングポジションを取り、目線を行きたい方に向ける。これが基礎ライディングのはじまりというわけだ。

「シートのどの位置に座るかも重要です。これによってハンドルが遠くもなれば近くもなります。ハンドルが切れても上半身が影響を受けにくい位置を探すといいと思います」

『顔からグイッと』で効果が大きく

後ろから肩を叩かれたときに振り向くようなイメージ。目だけをギョロッと向けて顔が追従するのではなく、顔からグイッと向けるようにする。そうすることで、つられて自然に首や肩、体幹も連動し、身体全体がバイクの曲がっていく動きに先行していけるようになる。

ありがちなのは……目線が外へ向くとバイクも外へ

カーブの外側にあるガードレールなどを見たとたんに、走行ラインも外へとふくらんだ経験はないだろうか。目線が向いた方へとバイクも向かうのが基本。ということは、行きたい方向を見る=行きたくない方向は見ないということでもある。

自然なライディングポジションで、しっかりとニーグリップ

ステップの上に立ち上がり、そこからまっすぐ降りたところがおおよその適正なシッティングポイントとなる。あとは猫背にならず、かといって胸を張り過ぎずの位置でハンドルバーに手を伸ばし、上半身の前傾度合いなども考えつつバランスのいい(=快適に操れる)位置に微調整する。シート前端に座ってしがみついたり、後ろ過ぎる位置に座って猫背になるパターンに気を付けよう。

ツマ先は外側に向けない

シートに座る際、ツマ先を外に向けたまま座ると自然にヒザが開き、ニーグリップがおろそかになる。見た目にも美しくはないので、内側にしまうように意識し、リヤブレーキも操作しやすい状態にしておきたい。

慣れてきたらカカトと内モモのホールドも意識していく

ある程度慣れてきたら、要所で必要なぶんだけホールドすればいいということが感覚的にわかってくる。バイクの動きに合わせてライディングフォームも変化していくことになるので、ニーグリップにこだわり過ぎることなく、カカトは内モモのホールドを有効に使えるようにしていく。

ハンドルを左右に切っても手首はまっすぐ前に向ける

ハンドルグリップを強く握りしめると、バイクの自然なステアリングを邪魔してしまう。両手を上から添えるように載せ、ハンドルが切れても手首を曲げずに腕を前後させるだけの追従を意識。

ビッグマシン2011年1月号より抜粋、再構成

中井直道さんのプロフィール

鈴鹿8時間耐久ロードレースへの出場回数は20回という、国際A級レーシングライダーとしての経験を持つ。ビッグマシン誌などでライディングテクニックの記事多数。ライディングスクールには運営、インストラクターとして数々のスクールに携わる。大阪府出身54歳。インストラクター歴は25年目となる。

資格:
・全日本交通安全協会 二輪車安全運転推進委員会 二輪車安全運転特別指導員
・MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会) 公認インストラクター
・ブリヂストンモーターサイクルタイヤ スーパーバイザー
・LSO(モータースポーツライフセービング) 認定
役職:MFJ 近畿支部ロードレース委員

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)