スポーツバイクの遺伝子を受け継ぎ、”コミューター”の枠を超えた存在感を放つヤマハMAXシリーズ。トップモデルであるTMAXと、’18年に国内デビューした新星XMAXの2台をピックアップし、その本質を探った。
YAMAHA TMAX530DX/XMAX
まずは主要スペックを徹底比較
【テスターはヤングマシンでおなじみのこの2人】
(左)丸山 浩[プロ目線]本誌メインテスター。スポーツバイクのイメージが強いが、’90年代に移動の足としてマジェスティ、フォルツァなどを乗り継いだビッグスクーター愛好家だ。
(右)沼尾 宏明[一般目線]本誌などで活躍するライター。普段の足は250モタードで、TMAXの走りと250ビグスクの積載性に憧れている。スクーターは試乗経験こそ多いが、所有はナシ。
比較試乗インプレッションその1:街乗り
[丸山]Tも機動性はあるが、軽快さ&利便性はX
XMAXは実に乗りやすい。従来のマジェよりスリム&軽快。その上、重心位置が適度に高く、ステアリングにシッカリ感があるのでキビキビ走れる。さらに回転数を選ばず従順にパワーを発揮するので通勤向きだ。TMAXは大型バイクの雰囲気だが、スクーターらしい機敏性を確保。出足はややマイルドなので、右手を大きく開けなければ扱いやすい。
[沼尾]気負わずに軽快。イージーなXが光る
250ビグスクは、ゼロ発進でのドッカン加速と小回りのしにくさが印象的だったが、XMAXは正反対。素直かつ機敏に走れる。TMAXは動き出せば軽快。ただし車重と足着きの関係でUターンはやや緊張感があった。
比較試乗インプレッションその2:高速走行
[丸山]疲れずに飽きないT。Xの巡航性能も抜群
TMAXの安定感は圧巻。前後15インチでよくぞこここまでと感心した。秀逸な防風性と衝撃吸収性、ゆったりしたライポジで疲れにくい。そして滑らかに伸びるエンジンが気持ち良く、長時間乗っても飽きないのは僕にとって大きなポイント。おまけに荷物も入る。旅バイクとしての完成度が非常に高い。
XMAXも巡航性能は抜群。親分ほどではないが、スクーターらしからぬ安定感を示し、フロントの剛性感を街中より実感できた。サスはやや動くが、乗り心地もイイ。スクリーンを高めると少し屈むだけで風を避けられ、ロングも十分こなせる。
[沼尾]平和なXはロングラン向き、Tはここでも刺激的
100km/hでXMAXは6100回転、TMAXは4700回転。前者は振動もなく、静か。ライポジも窮屈感がなく、淡々と長距離を流せる。一方TMAXは僕には元気過ぎて若干疲れるかも。防風性は完璧と言っていい。
比較試乗インプレッションその3:ワインディング
[丸山]速さ=楽しさを体現したTMAX
TMAXはシフト操作要らずで美味しい回転域をキープでき、尻をズラさずに体重移動でスポーツ可能。旋回中の安定感も絶品で、思わずドンドン攻めたくなる。ピュアな速さを追求したSSは乗っていて楽しくない場合が多いが、この”速さ感”は実に愉快痛快だ。XMAXは既存のビグスクに比べ、フロントの頼りなさが少なく、倒し込みも軽快。TMAXのような激攻めではなく、気持ちよく流すのに向いている。
[沼尾]どちらもスポーティ。XMAXは安心感抜群
私のような一般人にはXMAXでも十分スポーティ。コーナーでは車体に体を預け、立ち上がりでは安心して右手を開けることができた。これも安定感のあるフロントとシャーシのおかげだ。TMAXはやはり速い! 操作がイージーな割に、素直に曲がるので速さを引き出しやすい。
別次元の安定性を示すTMAX。マルチに使いこなせるXMAX
その走行性能が、フォルムが、スポーティさを主張するMAXシリーズ。発端となったのは、’01年に登場した初代TMAXだ。一般的なモーターサイクルと同様のダイヤモンドフレーム+足まわりの車体にパワフルなオートマチック並列2気筒を搭載し、運動性能を追求。ライバルがクルーザー的なキャラクターだったのに対し、「スクーターの皮を被ったスポーツバイク」として一大センセーションを巻き起こした。
この流れを汲むXMAXは、欧州で’06年にデビュー。スクーターの本場で125〜300㏄のスポーティコミューターとして人気を誇り、現地で独自に進化してきている。
2台に共通するのは、まず颯爽としたデザインだ。精悍な2眼LED ヘッドライト、ブーメラン形状のサイドビューはまさに同じ血脈を思わせる。細部へのデザインのこだわりは、TMAXが圧倒的。XMAXは、車両価格がTMAXの約半分ながら、チープさは感じさせない。
車格もパッと見では大きく変わらないが、走り出せば違いは歴然。街中では、XMAXの軽量スリムさと従順な出力特性が際立つ。従来のマジェスティ250がロング&ローかつ車体も重めだったのに対し、XMAXは腰高で車重も9kg軽い。それでいて積載性は既存の250スクーターとほぼ変わらない。この機敏性と利便性は本作の武器だ。TMAXはより大柄で安定感のある走りが信条。XMAXより足着きは厳しいものの、前後15インチによる機動性は一般のビッグバイクより優れているとも言えるだろう。
XMAXの目玉であるフロントフォークは、高速道路で恩恵を体感できた。同社軽2輪スクーターで初めて、TMAXと同様に上下のブラケット2か所でフロントフォークを支持し、剛性をアップ。高速巡航で抜群の直進性を示す。街中で軽快、高速では安定感に溢れるのだから見事だ。
TMAXはさらに上を行く。高速では剛性に優れたシャーシの賜物でピタッと安定。接地感に優れ、乗り心地に高級感がある。スクリーンを上げれば、ほぼ風が当たらず、後席まで風からガード。そして何よりエンジンが飽きない。右手を捻ると微振動と豪快なサウンドを伴い、無段変速で二次曲線的に伸び上がる。クルーザーとしての実力は一線級だ。
Tは唯一無二のスポーツ性。より幅広い層が楽しめるX
高速道路でツアラーとしての優れた使い勝手を見せた2台。考えてみれば、高い快適性と居住性もMAX シリーズの伝統であると改めて気付かせてくれた。
そして、持ち味のスポーティさを存分に味わえるワインディングでは、TMAXが本領を発揮した。6000回転付近で力強い領域に入り、この回転域の伸び感をキープしたまま走れるのが愉快。特にSモードはレスポンスが鋭く、アクセルを大きく開けるとスパッと立ち上がれる。コーナーの進入では、効力とコントロール性に優れたブレーキに加え、高い剛性感のある前後サスにより車体の倒し込みがスムーズ。モーターサイクルのように前後輪に荷重が載り、フロントから旋回力が発生する。コーナリング中も安定感があり、攻めるほど「もっとイケそう」と思えるほど限界レベルも高い。
絶対的な速さはミドルスポーツには敵わないが、ギヤ操作に自信のない人ならミッション付きのバイクよりTMAXの方が速いかもしれない。だが、何より大事なのは楽しさ。速さの演出と、このスタイル&ライポジによって、体感的な速度がズバ抜けている。この独自性はTMAX固有の魅力だ。
XMAXは、高めの重心と軽さを活かしたクイックな倒し込みや、タイトコーナーでの切り返しが得意。従来のマジェスティより格段に峠道では軽快だ。介入を感じさせないトラコンもマジェにはない安心感に貢献している。
剛性を高めたFフォークによって既存のビグスクのような不安感が減り、荒れた路面のコーナリングも安定している。一方で深く倒し込んでいくとフロントの接地感が希薄に。TMAXと違い、前輪荷重を稼ぎにくいユニットスイング構造のため、仕方ない部分ではある。贅沢を言えばブレーキの効力をもっと高めて欲しい。スポーティに走るには効きがマイルドで、もっと強力であれば峠でFフォークの恩恵をより受けられるハズ。とはいえ、しっかり握り込めて街中では安心して使えるのは長所だ。
TMAXは積載性や足着きをある程度割り切り、妥協なく独自の世界観を追求した孤高の存在であると再認識した。XMAXは、フルフェイスが2つ収納できるマジェスティ譲りの使い勝手を維持しつつ、快適さとFUN性能を高めたマルチユースな1台。万人向けでありながら、そこには確実に「MAX」の遺伝子が継承されている。
まとめ:主張が強いMAXは自己表現できるツール
利便性を保ちつつ、走りとデザインに筋を通したTMAXは、自己主張が強い。スクーターの枠を超え、バイクとしても独特な存在。他人と違った乗り物やカッコよさに憧れる層へ強烈なアピールを放つ究極の「MAX」だ。
XMAXは、そのDNAを受け継ぎ従来のビグスクが持っていたファッション性からは一線を画した250㏄スポーツスクーターとして新たな基準を打ち立てた存在と言える。
2台は外観も中身も個性豊かで、自己表現の手段として魅力的。特にXはTほどトガッておらず、機動性、積載性、2人乗り、価格と「全盛り」のコスパ仕様だ。こちらから乗り始め、飽き足らぬ人はTMAX、あるいは一般的なバイクにスイッチしてもいい。同じ遺伝子を継ぎながら、より身近なNMAX125/155に移行するのも手。MAXシリーズには幅広いライダーを受け入れる素地が整っているのだ。
車名 | TMAX530DX[SX] | XMAX |
全長×全幅×全高(mm) | 2200×765×1420 | 2185×775×1415 |
軸距(mm) | 1575 | 1540 |
シート高(mm) | 800 | 795 |
車両重量(kg) | 218[215] | 179 |
エンジン型式 | 水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ | 水冷4スト単気筒SOHC4バルブ |
総排気量(cc) | 530 | 249 |
最高出力(ps/rpm) | 46/6750 | 23/7000 |
最大トルク(kgf・m/rpm) | 5.4/5250 | 2.4/5500 |
燃料タンク容量(L) | 15 | 13 |
キャスター角(度)/トレール量(mm) | 26°/98 | 26.3°/95 |
ブレーキ前 | Wディスク | ディスク |
ブレーキ後 | ディスク | |
タイヤサイズ前 | 120/70R15 | 120/70-15 |
タイヤサイズ後 | 160/60R15 | 140/70-14 |
車両本体価格 | 135万円[124万2000円] | 64万2600円 |
●まとめ:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ●取材協力:ヤマハ発動機
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