際立つ個性がスポーツ魂を刺激する

ヤマハTMAX530DX & XMAX 2台の”マックス”試乗比較インプレッション

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

スポーツバイクの遺伝子を受け継ぎ、”コミューター”の枠を超えた存在感を放つヤマハMAXシリーズ。トップモデルであるTMAXと、’18年に国内デビューした新星XMAXの2台をピックアップし、その本質を探った。

YAMAHA TMAX530DX ABS
【YAMAHA TMAX530DX ABS ●価格135万円 ●色:灰、黒/青(SX、124万2000円)】欧州で爆発的なヒットを飛ばしたオートマスポーツ。現行は5代目で、アルミフレーム+倒立フォークなど豪華な車体に530cc並列2気筒を組み合わせる。スポーティグレードのSX、快適装備が充実した豪華版のDXを用意。
YAMAHA XMAXABS
【YAMAHA XMAX ABS ●価格64万2600円 ●色:青、黒、赤、銀】久々に登場した国産250ccスクーター。元々は欧州仕様だったが、’17年型のフルチェンジに伴い、’18年から国内導入がスタート。軽量スリムながら抜群の積載性や使い勝手を兼ね備え、日本でも好セールスを記録している(テスト車は’18モデルの黄)。

まずは主要スペックを徹底比較

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
[TMAX(左)]往復ピストンバランサーで振動を打ち消す、低重心設計の360度クランク並列2気筒が伝統。同社スクーター初の電制スロットルを備え、走行モード×2も用意。[XMAX(右)]環境性能とクラス最高の加速性能を目指した「ブルーコア」単気筒を搭載。同社軽2輪スクーター初の一体式鍛造クランクなどでマジェから+4psを実現。
YAMAHA TMAX530DX ABS
[TMAX]φ41㎜倒立フォークにラジアルマウント対向4ポットキャリパーと本格的。リヤはリンク式モノサスで、DX はイニシャル&伸側減衰力の調整が可能だ。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
[XMAX]φ33㎜正立フォークを上下のブラケットで支持。ブレーキは片押し式2ピストン+シングルディスク。リヤは2本ショックでイニシャル調整が可能。
YAMAHA TMAX530DX ABS
[TMAX]パワーモード×2、トラコンに加え、DXはオートクルーズ、グリップ&シートヒーター、電動可変スクリーンと快適装備が充実。
YAMAHA XMAX ABS
[XMAX]オンオフ可能なトラコンを装備。右手元にメーターの表示切り替えスイッチを配置する。
YAMAHA TMAX530DX ABS
[TMAX]スクリーンは左手元のボタンで135mm幅の間で任意に調整でき、最も下げると目線の下に。最大まで上げると視界はスクリーン越しとなる。風切り音が少ないのも美点だ(左:LOW、右:HIGH)。
YAMAHA XMAX ABS
[XMAX]スクリーンはボルト10本を外して50mmアップが可能。下だと首元、上げると風が鼻先辺りに当たるが、屈めば風が頭上を抜ける。いずれもスクリーンは視界の下でジャマではない。ハンドルも後方に約20mm移動可能(左:LOW、右:HIGH)。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
[TMAX(左)]配置はXMAXと同様ながら、造形が一段と凝っており、高級感抜群。中央はモノクロ反転液晶で時計を常時表示。モードやヒーターの状態も一目瞭然だ。[XMAX(右)]アナログタコと速度計の間に液晶パネルを装備。2車ともスマートキーで、カギを差し込む手間が不要。シートや前側トランクなどのロック解除も可能だ。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
TMAX(上左)、XMAX(上右)ともに座面が広く、シートストッパー側ほど柔らかい。TMAX(下左)はフルフェイス1個+雨具やグローブなどの小物も収納可能。リヤヒンジ部にメットホルダーもある。XMAX(下右)のシート下は容量約45Lで、フルフェイス2個が入る。シート下照明は2台とも完備。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
フロントトランクは、TMAX(左)はロック付きを右側に1つ備える。XMAX(右)が左右にあり、左側がロック付き。2台とも12V電源ソケットを標準装もしている。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
[TMAX(上左右)]前側ウインカー以外はLED。ヘッドライトはローで内側2灯、ハイで外側2 灯が光る。導光体を組み合わせ、レンズ輪郭にクロームラインを入れるなど質感が高い。[XMAX(下左右)]こちらも前側ウインカー以外の灯火類は全てLED。中央のヘッドライトはハイビーム時に点灯する。前後とも「X型」のデザインを取り入れ、車体の各部にも「X」字を採用する。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

【テスターはヤングマシンでおなじみのこの2人】
(左)丸山 浩[プロ目線]本誌メインテスター。スポーツバイクのイメージが強いが、’90年代に移動の足としてマジェスティ、フォルツァなどを乗り継いだビッグスクーター愛好家だ。
(右)沼尾 宏明[一般目線]本誌などで活躍するライター。普段の足は250モタードで、TMAXの走りと250ビグスクの積載性に憧れている。スクーターは試乗経験こそ多いが、所有はナシ。

比較試乗インプレッションその1:街乗り

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

[丸山]Tも機動性はあるが、軽快さ&利便性はX

XMAXは実に乗りやすい。従来のマジェよりスリム&軽快。その上、重心位置が適度に高く、ステアリングにシッカリ感があるのでキビキビ走れる。さらに回転数を選ばず従順にパワーを発揮するので通勤向きだ。TMAXは大型バイクの雰囲気だが、スクーターらしい機敏性を確保。出足はややマイルドなので、右手を大きく開けなければ扱いやすい。

[沼尾]気負わずに軽快。イージーなXが光る

250ビグスクは、ゼロ発進でのドッカン加速と小回りのしにくさが印象的だったが、XMAXは正反対。素直かつ機敏に走れる。TMAXは動き出せば軽快。ただし車重と足着きの関係でUターンはやや緊張感があった。

比較試乗インプレッションその2:高速走行

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

[丸山]疲れずに飽きないT。Xの巡航性能も抜群

TMAXの安定感は圧巻。前後15インチでよくぞこここまでと感心した。秀逸な防風性と衝撃吸収性、ゆったりしたライポジで疲れにくい。そして滑らかに伸びるエンジンが気持ち良く、長時間乗っても飽きないのは僕にとって大きなポイント。おまけに荷物も入る。旅バイクとしての完成度が非常に高い。

XMAXも巡航性能は抜群。親分ほどではないが、スクーターらしからぬ安定感を示し、フロントの剛性感を街中より実感できた。サスはやや動くが、乗り心地もイイ。スクリーンを高めると少し屈むだけで風を避けられ、ロングも十分こなせる。

[沼尾]平和なXはロングラン向き、Tはここでも刺激的

100km/hでXMAXは6100回転、TMAXは4700回転。前者は振動もなく、静か。ライポジも窮屈感がなく、淡々と長距離を流せる。一方TMAXは僕には元気過ぎて若干疲れるかも。防風性は完璧と言っていい。

比較試乗インプレッションその3:ワインディング

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

[丸山]速さ=楽しさを体現したTMAX

TMAXはシフト操作要らずで美味しい回転域をキープでき、尻をズラさずに体重移動でスポーツ可能。旋回中の安定感も絶品で、思わずドンドン攻めたくなる。ピュアな速さを追求したSSは乗っていて楽しくない場合が多いが、この”速さ感”は実に愉快痛快だ。XMAXは既存のビグスクに比べ、フロントの頼りなさが少なく、倒し込みも軽快。TMAXのような激攻めではなく、気持ちよく流すのに向いている。

[沼尾]どちらもスポーティ。XMAXは安心感抜群

私のような一般人にはXMAXでも十分スポーティ。コーナーでは車体に体を預け、立ち上がりでは安心して右手を開けることができた。これも安定感のあるフロントとシャーシのおかげだ。TMAXはやはり速い! 操作がイージーな割に、素直に曲がるので速さを引き出しやすい。

YAMAHA TMAX530DX ABS
[ライディングポジション:TMAX]大柄で余裕のあるライポジ。前方にコンソールがあり、尻の位置は限定されるが、足の置き場は自由度が高い。フロントまわりはXMAXよりボリュームたっぷりだ。足着きは、両足のつま先が着く。前方に尻をズラすと接地性が良くなる(ライダー身長168cm、体重61kg)
YAMAHA XMAX ABS
[ライディングポジション:XMAX]立ち姿勢に近く、上体が起きてヒザの曲がりが緩いので長距離もラク。力が分散するのでお尻も痛くなりにくい。シートは幅が広く、前側に座ることも可能。ハンドル位置はTMAXより若干広め&高い。足着きは両足の付け根が接地する(ライダー身長168cm、体重61kg)。
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
[2人乗り比較]2台ともリヤシートが広く、座り心地は優雅。サイドの持ち手も握りやすい。TMAX(写真左)は横幅があり、質感も高いが、車体を足で挟みにくいのが玉にキズ。ライダーとの一体感があるのはXMAX(写真右)、操縦性に影響が出にくいのはTだ。

別次元の安定性を示すTMAX。マルチに使いこなせるXMAX

その走行性能が、フォルムが、スポーティさを主張するMAXシリーズ。発端となったのは、’01年に登場した初代TMAXだ。一般的なモーターサイクルと同様のダイヤモンドフレーム+足まわりの車体にパワフルなオートマチック並列2気筒を搭載し、運動性能を追求。ライバルがクルーザー的なキャラクターだったのに対し、「スクーターの皮を被ったスポーツバイク」として一大センセーションを巻き起こした。

この流れを汲むXMAXは、欧州で’06年にデビュー。スクーターの本場で125〜300㏄のスポーティコミューターとして人気を誇り、現地で独自に進化してきている。

2台に共通するのは、まず颯爽としたデザインだ。精悍な2眼LED ヘッドライト、ブーメラン形状のサイドビューはまさに同じ血脈を思わせる。細部へのデザインのこだわりは、TMAXが圧倒的。XMAXは、車両価格がTMAXの約半分ながら、チープさは感じさせない。

車格もパッと見では大きく変わらないが、走り出せば違いは歴然。街中では、XMAXの軽量スリムさと従順な出力特性が際立つ。従来のマジェスティ250がロング&ローかつ車体も重めだったのに対し、XMAXは腰高で車重も9kg軽い。それでいて積載性は既存の250スクーターとほぼ変わらない。この機敏性と利便性は本作の武器だ。TMAXはより大柄で安定感のある走りが信条。XMAXより足着きは厳しいものの、前後15インチによる機動性は一般のビッグバイクより優れているとも言えるだろう。

XMAXの目玉であるフロントフォークは、高速道路で恩恵を体感できた。同社軽2輪スクーターで初めて、TMAXと同様に上下のブラケット2か所でフロントフォークを支持し、剛性をアップ。高速巡航で抜群の直進性を示す。街中で軽快、高速では安定感に溢れるのだから見事だ。

TMAXはさらに上を行く。高速では剛性に優れたシャーシの賜物でピタッと安定。接地感に優れ、乗り心地に高級感がある。スクリーンを上げれば、ほぼ風が当たらず、後席まで風からガード。そして何よりエンジンが飽きない。右手を捻ると微振動と豪快なサウンドを伴い、無段変速で二次曲線的に伸び上がる。クルーザーとしての実力は一線級だ。

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

Tは唯一無二のスポーツ性。より幅広い層が楽しめるX

高速道路でツアラーとしての優れた使い勝手を見せた2台。考えてみれば、高い快適性と居住性もMAX シリーズの伝統であると改めて気付かせてくれた。

そして、持ち味のスポーティさを存分に味わえるワインディングでは、TMAXが本領を発揮した。6000回転付近で力強い領域に入り、この回転域の伸び感をキープしたまま走れるのが愉快。特にSモードはレスポンスが鋭く、アクセルを大きく開けるとスパッと立ち上がれる。コーナーの進入では、効力とコントロール性に優れたブレーキに加え、高い剛性感のある前後サスにより車体の倒し込みがスムーズ。モーターサイクルのように前後輪に荷重が載り、フロントから旋回力が発生する。コーナリング中も安定感があり、攻めるほど「もっとイケそう」と思えるほど限界レベルも高い。

絶対的な速さはミドルスポーツには敵わないが、ギヤ操作に自信のない人ならミッション付きのバイクよりTMAXの方が速いかもしれない。だが、何より大事なのは楽しさ。速さの演出と、このスタイル&ライポジによって、体感的な速度がズバ抜けている。この独自性はTMAX固有の魅力だ。

XMAXは、高めの重心と軽さを活かしたクイックな倒し込みや、タイトコーナーでの切り返しが得意。従来のマジェスティより格段に峠道では軽快だ。介入を感じさせないトラコンもマジェにはない安心感に貢献している。

剛性を高めたFフォークによって既存のビグスクのような不安感が減り、荒れた路面のコーナリングも安定している。一方で深く倒し込んでいくとフロントの接地感が希薄に。TMAXと違い、前輪荷重を稼ぎにくいユニットスイング構造のため、仕方ない部分ではある。贅沢を言えばブレーキの効力をもっと高めて欲しい。スポーティに走るには効きがマイルドで、もっと強力であれば峠でFフォークの恩恵をより受けられるハズ。とはいえ、しっかり握り込めて街中では安心して使えるのは長所だ。

TMAXは積載性や足着きをある程度割り切り、妥協なく独自の世界観を追求した孤高の存在であると再認識した。XMAXは、フルフェイスが2つ収納できるマジェスティ譲りの使い勝手を維持しつつ、快適さとFUN性能を高めたマルチユースな1台。万人向けでありながら、そこには確実に「MAX」の遺伝子が継承されている。

YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS
YAMAHA TMAX530DX ABS/XMAX ABS

まとめ:主張が強いMAXは自己表現できるツール

利便性を保ちつつ、走りとデザインに筋を通したTMAXは、自己主張が強い。スクーターの枠を超え、バイクとしても独特な存在。他人と違った乗り物やカッコよさに憧れる層へ強烈なアピールを放つ究極の「MAX」だ。

XMAXは、そのDNAを受け継ぎ従来のビグスクが持っていたファッション性からは一線を画した250㏄スポーツスクーターとして新たな基準を打ち立てた存在と言える。

2台は外観も中身も個性豊かで、自己表現の手段として魅力的。特にXはTほどトガッておらず、機動性、積載性、2人乗り、価格と「全盛り」のコスパ仕様だ。こちらから乗り始め、飽き足らぬ人はTMAX、あるいは一般的なバイクにスイッチしてもいい。同じ遺伝子を継ぎながら、より身近なNMAX125/155に移行するのも手。MAXシリーズには幅広いライダーを受け入れる素地が整っているのだ。

車名TMAX530DX[SX]XMAX
全長×全幅×全高(mm)2200×765×14202185×775×1415
軸距(mm)15751540
シート高(mm)800795
車両重量(kg)218[215]179
エンジン型式水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ水冷4スト単気筒SOHC4バルブ
総排気量(cc)530249
最高出力(ps/rpm)46/675023/7000
最大トルク(kgf・m/rpm)5.4/52502.4/5500
燃料タンク容量(L)1513
キャスター角(度)/トレール量(mm)26°/9826.3°/95
ブレーキ前Wディスクディスク
ブレーキ後ディスク
タイヤサイズ前120/70R15120/70-15
タイヤサイズ後160/60R15140/70-14
車両本体価格135万円[124万2000円]64万2600円

●まとめ:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ●取材協力:ヤマハ発動機

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