ベストセラーモデルが全面刷新

ホンダ2018新型PCX150 vs 旧型PCX150比較試乗インプレッション

軽二輪枠で最も売れているスクーター、PCX150がフルチェンジ! そこで、新旧対決を決行したぞ! ※ヤングマシン2018年6月号(4月24日発売)より

シリーズ初のフルモデルチェンジを敢行

クラスを超えたプレミアム感と取り回しのしやすいボディサイズ、通勤通学からツーリングまでマルチに使える走行性能により、’10年の登場以来、快進撃を続けているPCXシリーズ。ラインナップは原付二種の125と軽二輪の150があり、両車とも今年4月にフルモデルチェンジした。PCX150は軽二輪スクーターの中で最も売れており、追撃を目論むライバルも多い。まずは進化のほどが最も分かりやすい新旧対決から。

モデルチェンジの内容を簡単に説明すると、フレームはアンダーボーン構造からダブルクレードルに変わり、タイヤは前後14インチをそのままにフロントを1サイズ、リヤを2サイズ太くしている。149ccの水冷単気筒eSPエンジンは、平成28年度排ガス規制をクリアしつつ、吸排気系や駆動系、冷却系を変更。最高出力は1㎰増えて15psなっている。それと、フロントブレーキにシリーズ初のABSがタイプ設定されたのも注目すべきポイントで、今回はこちらを試乗した。なお、ABSのないSTD仕様はブレーキが前後連動式となる。

【HONDA PCX150/ABS 2018年型国内仕様 価格:37万3680円/39万5280円】’18年4月20日に発売となった新型。フレームを一新し、eSPエンジンを熟成。試乗車はシリーズ初となるタイプ設定のABS仕様。
【HONDA PCX150 2017年型国内仕様 価格:36万720円~37万1520円】’10年にPCX(125)が初登場し、’12年に150が追加された。’14年にモデルチェンジを実施。写真は’17年型で、赤いFキャリパーなどが特徴。

フレームの改良によって走りが格段に進化した

走り出す前、車両を押し引きしている段階から気付いたのは、新型から受ける車体の剛性感。力が無駄に逃げないからか、車重は従来から変わらないのに取り回しが軽く感じるほどだ。そして、実際に走り出しても車体に対する好印象は続く。先代は路面からの衝撃を前後サスとフレームのしなりで緩和する印象だったのに対し、新型はフレーム剛性が高まった分、サスが正しく仕事をしているようで、乗り心地が抜群にいい。しかも、高速道路で横風を受けた時の安定成分は格段に上がっており、安心して巡航できるスピードが10㎞/h以上高まっている。タイヤが太くなったことで、倒し込みや切り返しが重くなるのではないかと危惧していたが、むしろ適度な手応えと接地感、グリップ感が上がっていて、当初の心配は杞憂に終わった。加えて、太いタイヤによるルックスの向上も見逃せないポイントと言える。

新型における目玉は一新されたフレーム構造だ。一般的なアンダーボーンからダブルクレードルとなり、またぎやすさはそのままに剛性を向上。また、フロントカバーステーが鉄から樹脂に。この2つで先代比で2.4㎏もの軽量化を実現。

走りも質感も1ランクアップ

エンジンは、引き続きアイドリングストップシステムを採用。新排ガス規制をクリアしながらも、むしろ全域でわずかに力が増した印象で、特に中間加速の元気が良くなったと感じた。体に伝わる微振動が少なく、常に上質さを感じさせるという初代からの良さは受け継がれており、先代と同様に燃費の面でも大いに期待できるだろう。タイプ設定された1チャンネルABSは、デュアルABSよりも軽量かつコスト的にも有利とのこと。砂が浮いている場所や水溜まりなど、あらゆる路面でフロントブレーキを強く利かせてみたが、ABSの作動をほとんど感じさせずに短い距離で減速、または停止することができた。個人的にはSTD仕様のコンビブレーキも好きなのだが、この正確でスムーズな作動は非常にレベルが高く、これを体感すると迷わずABSを選んでしまうだろう。

Lクランクケース、ドライブ&ドリブンフェイスを新設計し、変速比の幅を拡大。引き続きアイドリングストップ機構を採用するeSPエンジンは、吸排気系の変更により高回転域の出力をアップ。最高出力は従来の14㎰から15㎰へ。
タイヤサイズは従来のフロント90/90-14、リヤ100/90-14から、フロント100/80-14、リヤ120/70-14へとワイド化。合わせてタイヤの偏平率が下がったことでケーシング剛性が上がり、たわみによるエネルギーロスも低減している。
携帯し車両に接近するだけでメインスイッチノブの解施錠が可能なスマートキーを新採用。電波法の関係で仕向地により通常のキーが採用されるが、日本ではこれが標準装備に。

新PCX開発プロジェクトリーダーに訊く

「’10年に発売した初代は、40代の方を中心にセカンドバイクとしての需要が多かったのですが、最初のモデルチェンジ(’14年)でスタイルを一新したところ、20代の若い方からファーストバイクとして選んでいただけるようにもなった。そうした流れや各国からの要望も取り入れ、今回のモデルチェンジでは初代からのコンセプトをキープしながらも、バイクとしての楽しさを追求しました。その結果がフレームの改良やエンジンの特性見直しなどですね。

ダブルクレードルフレームに関しては、後にリリース予定のハイブリッドやエレクトリックに搭載されるリチウムイオンバッテリーを、アクシデント時の衝撃から守るという点でも有利です。パーツ点数や溶接箇所が増えるので製品のバラつきが大きくなりがちですが、そこはフォルツァなどで培った技術でコストを上げずにカバーできました。先代よりもさらにマルチな使い方できるようになったと自負しています」 ※新型PCX開発責任者:大森純平さん談

新型PCXの開発主要スタッフの面々。左から3人目が前作でも開発責任者代行を務めたリーダーの大森純平さん。テストライダー出身で、走りの楽しさを追求する。

ニュース提供:ヤングマシン2018年6月号(4月24日発売)
撮影:真弓悟史
テスター:大屋雄一
まとめ:宮田健一

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