
どんなに時間が経とうが、その輝きを失わない物がある。モーターサイクルに対する確固たる信念と溢れる情熱でつくられたハーレーダビッドソンもそのひとつだ。アメリカの工業製品が高性能と洗練されたデザインで世界を席捲した1930〜1960年代に生産されたモデルは、旧き佳き時代の象徴として人々を魅了してやまない。大阪のセンバモータースに保管されている貴重なコレクションの一部を紹介しよう。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:藤村ノゾミ ●外部リンク:センバモータース
世界的文化遺産と言うべきオリジナルカラーが残るヴィンテージハーレー
早くから車体に凝った塗装を施していたハーレーダビッドソン。1936年に登場したナックルヘッドの車体には、アールデコ様式に影響を受けた手の込んだグラフィックがあしらわれ、それまでのグレー/オリーブグリーン/ブラックなど落ち着いたトーンではなく、ブルーやレッドといった明るい色調でペイントされていた。
これには落ち込んでいた消費を促す狙いがあった。1929年10月24日、暗黒の木曜日を境にニューヨーク・ウォール街の株価が大暴落し、1930年代の世界恐慌を引き起こす。1932年まで米国の工業生産力は著しく低下し、実質GNPは35%以上も下落。1929年に3.2%だった失業率は、1933年には24.9%にまで達する。
米国の経済がどん底にあった1933年、150社あったアメリカのモーターサイクルメーカーは、ハーレーダビッドソンとインディアンの2つだけとなってしまう。
第二次世界大戦後、戦勝国であるアメリカが驚異的な経済成長を遂げたのは、ご存知の通り。その口火を切った1946年は、軍用から一転、ゴージャスなモデルが市場で求められた。ファクトリーオプションでは、より豪華なツートーンをオーダーすることができ、その仕上がりはモーターサイクルの域を超え、芸術作品のように美しく、羨望の眼差しが向けられた。
センバモータースに現存する1946年式FLは、ワンオーナー車で、当時ペイントされた純正オリジナル色のツートーンオプションであることがわかっている。
分割式のティアドロップタンクに、塗料の痕跡がわずかに残るエンブレム。速度計を埋め込んだキャッツアイコンソールやフェンダーオーナメントなどがそのまま残る、たいへん貴重な車両である。
早い段階から、鮮やかなツートーンカラーをファクトリーオプションとしてオーダーすることができたハーレーダビッドソン。センバモータースにて撮影した1946年式FLは、ワンオーナー車で、リペイントされていない純正オリジナルカラーであることが確認できている。当時からのデコレーションパーツもコンディション良く保たれ、その佇まいからは、世界的文化遺産とも言うべきヴィンテージハーレーならではの芸術性を感じずにはいられない。心臓部はハーレー初のOHVエンジン「ナックルヘッド」(1936〜1947年)。ロッカーカバーの形状がゲンコツに似ているため、そう呼ばれる。61キュービックインチ=1000ccのEおよびELだけでなく、74ci=1200ccのFおよびFLが1941年以降に加わった。圧縮比はFが6.6、FLは7.0。48ps/5000rpmの最高出力は変わらない。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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