路上駐車中を狙う場当たり的な窃盗だけでなく、組織化された犯罪集団が自宅の駐輪場やガレージに置いた愛車を狙うこともある、昨今のバイク盗難事情。ロックをかけても持ち去られるリスクのあるバイクを守るために開発されたPOLARISS.NETは、自車の位置情報をスマートフォンに知らせるIoT時代のセキュリティグッズ。大切な愛車を守るには、種類が異なる防犯アイテムを組み合わせた自己防衛が効果的だ。
●文/写真:ウィズハーレー編集部(栗田晃) ●外部リンク:OWL-TY
誰にとっても他人事ではないバイク盗難問題
盗難対策に“絶対”はない。こう言ってしまうと身も蓋もないが、バイクの盗難自体は間違いなく深刻なのにもかかわらず、決定的な対抗手段がないのが現実だ。
警察庁が毎年まとめている犯罪統計によれば、令和4年1〜12月に全国の警察が認知したバイクの盗難件数は約8000台。平均すると毎日22台が被害に遭っていることになる。
暗然とするのが18.4%という検挙率の低さで、幸運にも検挙されても、フレームナンバーが削られたり部品単位に分解されたりと、まともな状態で戻ってくる可能性は低い。だからといって、やけっぱちのノーガード戦法が通用するはずもない。
表現は悪いが、“盗む価値のあるバイク”を狙う賊に対抗するには、ハンドルロックやチェーンロックや車体カバーなど、地道でも複数の防御策を講じることに意味がある。
そうした物理的ロックに加えて、注目度が高まっているのが「POLARISS.NET」だ。これはGPSユニットと4G LTE通信を使った通信機能を組み合わせることで、端末を搭載したバイクの位置情報が分かるという盗難対策アイテムである。
物理的なロックには、破壊されて車両を運び去られたらアウトという弱点があるが、位置情報を発信するPOLARISS.NETであれば、“その後”の足どりを追うことができる。
自車の位置を知らせる機器としては、Bluetoothトラッカーがあり、警備業者による位置情報サービスもある。それらに対して、POLARISS.NETには次のような強みがある。
1. GPSの位置情報を大手キャリアの通信網を利用して知らせる
Bluetoothトラッカーは、端末とスマートフォンの通信を利用するため、ユーザー以外のスマートフォンとのペアリングにより、端末を発見/遺棄される恐れがある。またBluetoothは基本的に近くにある端末同士をつなぐ通信なので、スマホユーザーが少ない場所に運ばれると、位置情報の更新頻度も低下する。
これに対してPOLARISS.NETは、携帯電話と同じNTTの通信網を利用するため、日本中どこにあっても端末を捕捉できる。
2. ユーザー自身がPOLARISS.NETを直接操作できる
警備会社による位置情報把握サービスは、ユーザーの依頼により、端末を搭載した車両の位置情報を警備会社が検知、または専用アプリでユーザーが知ることができるが、盗難対策に必要な監視機能はオプション扱いとなり、別途利用料金が発生する。
一方、POLARISS.NETは専用アプリ不要で、多くのスマホユーザーが使用しているLINE上から、監視開始/解除/自車位置の確認などすべての操作ができる。
つまり、POLARISS.NET端末とユーザーのスマホが直結し、必要な時に愛車の状態をリアルタイムで把握できるのが特徴であり、盗難対策グッズとしての大きな魅力となる。
自宅や出先などで愛車を置いた場所から不正な移動を感知すると、LINEに通知され、同時に位置情報や移動軌跡はGoogle Map上に表示される。
「盗難されたのは間違いないが、どこに運ばれたのか見当がつかない」のと「どのような経路で移動し、現時点ではここにある」のでは、捜査を依頼する際の具体性と説得力がまったく異なり、早期発見の強力な手がかりとなるのは間違いない。
また、監視時の位置情報は端末の電池があるかぎり通知されるので、追跡が長期戦となっても、その都度場所を確認できる。
現在は盗難対策に特化した機能で運用を行っているが、今後はユーザー間の相互監視機能をはじめとした新たなサービスを追加したアップデートも予定されている。盗難情報を多くの人に知らせることが早期発見に有効なことは、昨今のSNSを見ても明らかだが、ユーザー間で情報共有すれば、これもまた早期発見にとって大きな力となるはずだ。
さまざまなモノやコトが、インターネットを通じてつながり作用するIoT時代を象徴するPOLARISS.NETだが、車体に搭載した端末が見つかり、取り外されてしまえば追跡は不可能で、残念ながら無敵というわけではない。
冒頭で述べたように、“絶対”がない以上、ハンドルロックやチェーンロックを併用した重層的な自己防衛が不可欠。カギの破壊に気を取られることで、隠されたPOLARISS.NETへの警戒感が薄れるかもしれないし、逆に、いくつもの防犯グッズを見せることで「これ以外にも何か仕かけてあるかもしれない」と思いとどまらせる力になることもあるだろう。
検挙率20%以下という数字は残酷だが、盗難された愛車が運ばれた先が分かれば、早期解決の大きな手がかりになる。大切な愛車を守りたいオーナーにとって、POLARISS.NETは魅力的な盗難対策グッズとなるはずだ。
POLARISS.NET端末を車両に取り付ける
すべての操作はLINEアプリで行う
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
ウィズハーレーの最新記事
スピード感を纏ってクオリティアップ ホイール/エンジンまわり/ステップなどの金属パーツは、パウダーコートや塗装を剥がし徹底的にポリッシュすることで、ノーマルパーツを使いながらも高級感を出した。汎用品で[…]
何がいま求められているのか、販売の現場で徹底リサーチ! 「ステップをミニフットボードに交換するのに伴って、シフトチェンジペダルをカカトでも踏み下ろせるようにシーソー式にしたいという要望を耳にしますね」[…]
OHV45度Vツインの伝統を受け継ぐ史上最強エンジンは、キャラに違いあり!! 長きにわたり、ウィリーGが熱き情熱でスタイリングを手がけ、開発技術者たちとともに魂が込められ、製品化されてきたハーレーダビ[…]
パフォーマンスダンパーは効果絶大! 絶対に欲しかった!! 4輪の高性能車に標準装備あるいはアフターパーツとして選ばれ、定評のある「パフォーマンスダンパー」は、モーターサイクル用としてもヤマハを皮切りに[…]
運動性能も飛躍的に向上させた、クラブスタイルカスタムの完成形 軽快かつパワフル! 強力なモーターに隙のない足まわりで、スピードクルーザーとしての理想形のひとつを具現化していると言っていいだろう。 ノー[…]
最新の関連記事(ポラリス)
決して逃げられない、切実な“盗難問題” すべてのライダーにとって切実な盗難問題。自宅はガレージ保管だから安心と言っても、出先で被害に遭わないとも限らない。令和4年1〜12月で全国の警察が認知した盗難件[…]
IoTを使った最新盗難対策「POLARISS(ポラリス)」とは? 盗難のことを考えると片時も気が休まることはなく、出先はちろん自宅での保管時にも二重三重のロックを使っているサンデーメカニックも少なくな[…]
盗難台数年間2万台のうち検挙率は僅か15%という現実 第4次バイクブームが到来し、新たに免許を取得しバイクを楽しむ新人ライダーから、久しぶりにヘルメットをかぶるリターンライダーまで、バイク市場を賑やか[…]
他人ごとではない盗難問題。高スペックセキュリティで愛車を守る 自宅での保管時はもちろん、出先で駐車する際にも二重三重にロックを掛けて盗難対策に気を遣うユーザーは多いはず。そうしたアピールは有効だが、突[…]
最新の関連記事(バイク用品)
旅館の一室でFRP製ヘルメットを手探りで作り始めた 東京・新橋で経営していた旅館の一室で、創業者の鎌田栄太郎がFRP製ヘルメットの製作をはじめたのが今日のSHOEIのはじまりだ。 その旅館はホンダの社[…]
冬のUber Eats配達は過酷です。寒さと路面の凍結の両方と戦わなくてはいけません。しかし、それゆえに配達員が少なくなるため、やり方次第で1年を通してもっとも高額な収入を得られるチャンスの季節だと思[…]
メンテナンス捗るスタンド類 ちょいメンテがラクラクに:イージーリフトアップスタンド 2890円~ サイドスタンドと併用することで、リアホイールを持ち上げることができる簡易スタンド。ホイールの清掃やチェ[…]
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106:1万5000円台~ ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/4[…]
2024冬・おすすめグリップヒーター×5選【Amazonブラックフライデーセールを狙え!】 エンデュランス:グリップヒーターSP(汎用) エンデュランスの「グリップヒーターSP」は、スイッチ部の材質と[…]
人気記事ランキング(全体)
110ccベースの4kW制限モデル=新基準原付か 2025年11月の新排出ガス規制導入によって現行モデルの継続生産が困難になり、新たに110~125ccのモデルをベースとした車両に4kW(5.4ps)[…]
※タイトル写真は欧州仕様 デイタイムランニングライトにウインカーを統合 ホンダが新型「X-ADV」を国内でも正式発表。EICMA 2024で初公開されたもので、ヘッドライトまわりを含むフェイスリフトに[…]
“ヨシムラ”がまだ世間で知られていない1970年代初頭のお話 世界初となる二輪用の集合マフラーが登場したのは、1971年のアメリカAMAオンタリオでのレース。当時のバイク用マフラーは1気筒につき1本出[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
復活の軽二輪レトロは足着き性抜群、エンジンは大部分が専用設計だ 現在の国内メーカー軽二輪クラスでは唯一となるネオクラシック/レトロスタイルのモデルが待望の登場を果たした。 カワサキが以前ラインナップし[…]
最新の投稿記事(全体)
旅館の一室でFRP製ヘルメットを手探りで作り始めた 東京・新橋で経営していた旅館の一室で、創業者の鎌田栄太郎がFRP製ヘルメットの製作をはじめたのが今日のSHOEIのはじまりだ。 その旅館はホンダの社[…]
冬のUber Eats配達は過酷です。寒さと路面の凍結の両方と戦わなくてはいけません。しかし、それゆえに配達員が少なくなるため、やり方次第で1年を通してもっとも高額な収入を得られるチャンスの季節だと思[…]
110ccベースの4kW制限モデル=新基準原付か 2025年11月の新排出ガス規制導入によって現行モデルの継続生産が困難になり、新たに110~125ccのモデルをベースとした車両に4kW(5.4ps)[…]
トラベル・エンデューロの最高峰に自動クラッチ制御が装備! BMWモトラッドのロングセラーモデルであるGSシリーズ。その最上位モデルにあたるのがGSアドベンチャーだ。初代モデルの登場は’02年のR115[…]
機密事項が満載のレーシングマシンたち バイクムック”RACERS(レーサーズ)”は、「いま振り返る往年のレーシングマシン」がコンセプト。それぞれの時代を彩った、レーシングマシンを取り上げている。 現在[…]