
●文:ライドハイ編集部(伊藤康司) ●写真:長谷川徹 スズキ HRC TRIUMPH
飛行機の燃料キャップを模した形状が主流に
近年のバイクの燃料キャップは、スーパースポーツやネイキッドなどのカテゴリーにかかわらず、閉じると燃料タンク上面に対し滑らかに平らになるタイプが多い。この形状の燃料キャップは「エアプレーンタイプ」と呼ばれるが、なぜ主流になったのだろうか?
その呼び名のとおり、この形状は“飛行機の燃料キャップ”を模したものだ。飛行機は燃料タンクを主翼の中に備える場合が多い。そして小型機などは、翼の表面に直に燃料の給油口が設けられている。
揚力で浮き上がる飛行機にとって、とくに翼の表面に余計な突起物などないに越したことはない。そこで翼の表面と真っ平になって、空気抵抗にならない燃料キャップが考案されたのだ。
そんな航空機用の燃料キャップに目を付けたのが、レーシングマシン。バイクだとキャップの位置的に空気抵抗は関係ないように感じるが、じつは多くのメリットがあった。
まず、飛行機で使うくらいなので、確実に閉まって燃料漏れを起こさない。それに開口部が大きくレバー操作で簡単に開閉できるので、素早い給油作業が可能になる。そして燃料タンクの上に飛び出さないため、ライダーがピッタリ伏せる時に邪魔にならない。キャップ単体では空力に関係ないが、ライダーの身体やヘルメットの高さを考えると空力効果が得られるワケだ。
そのため、エアプレーンキャップはレーシングマシンに瞬く間に広まった。…となると、マネしたくなるのがライダーの性。そして迎えた1980年代は、レーサーレプリカの大ブーム。そこでバイクメーカーもエアプレーンキャップに似せた燃料キャップを採用することに。市販バイク初装備はスズキのRG250Γ(1983)で、その後は一気にエアプレーンタイプが主流になった……
※本記事は2021年8月6日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ライドハイの最新記事
燃料タンク部分に収納スペースと給油口はテールカウルの思いきった新しいデザイン! 1990年4月、スズキはいかにもエアロダイナミクスの良さそうなフルカバードボディの250cc4気筒をリリース。 最大の特[…]
カワサキZ1の次は2st.750スクエア4だったが頓挫 1969年に2ストローク3気筒500ccのマッハIIIで、とてつもないジャジャ馬ぶりの高性能で世界を驚かせたカワサキ。 そして1971年には同じ[…]
250A1、350A7に続く最速チャレンジャー真打ち登場!! 1966年に250ccA1サムライで、先行していたホンダCB72、ヤマハYDS3、スズキT20の性能を上回り、次いでボアアップした338c[…]
半クラッチは熱膨張で繋がる位置が変わる! ほんとんどのバイクは、エンジンのシリンダーよりちょっと後ろに丸い膨らみがある。これがクラッチ。 丸い膨らみの中には、エンジンのパワーを発生するクランクシャフト[…]
アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる…… ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
キーロック付きタンクキャップ:スズキGT380(1972) バイクの燃料キャップは、そもそもは転倒時の漏れ防止の安全対策からキーロック式が採用されるようになったが、その最初は1972年のスズキGT38[…]
日本でもっとも人気の高いジャンル=ネオクラシック プロポーションの枷を覆す【カワサキ Z900RS】 まず、現代のバイクと昔のバイクではプロポーションがまったく違うんです。昔のバイクはフロントタイヤが[…]
クルマの世界では「並列」表記はほぼ見かけない カタログやメーカーwebサイトでバイクのスペックを眺めていると、エンジン種類や形式の表記で「直列」や「並列」という文字を見かける。いずれもエンジンブロック[…]
実燃費の計測でおなじみだった「満タン法」だが…… エンジンを使った乗り物における経済性を示す指標のひとつが燃費(燃料消費率)だ。 「km/L」という単位は、「1リットルの燃料で何キロメートル走行できる[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかって[…]
インフレの今、価格破壊王のワークマンがまたやってくれた! 春から初夏にかけ、ツーリングのシーズンがやってきた。爽やかな空気を全身に浴びてのライディングは最高だ。しかし…この期間はジメジメ・シトシトの梅[…]
ネオクラシックながら”新しさ”で対抗 ヘリテージやネオクラシックと呼ばれるカテゴリーで、登場以来絶対的な人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズ。現代スポーツネイキッドをベースに、名車Z1を絶妙にアレ[…]
実は”ホンダエンジン”時代からの愛車だった マンセルがF1のパドックで乗っていたのは、ホンダのダックス70(CT70)でした。1988年モデルとも、1987モデルとも言われていますが、いずれにしろ当時[…]
◆今回のPRO解説者:以前にはネオクラ車の解説記事もお願いしたバイクデザインのプロフェッショナル。1980年代前半に某社に入社したベテランで、オンロード系をメインに排気量の大小を問わずさまざまな機種を[…]
最新の投稿記事(全体)
Street VWs Jamboreeの概要 フォルクスワーゲンの祭典、Street VWs Jamboree 2025が6月1日に開催されます。 概要についてはこちらの記事に詳しくまとめてありますの[…]
アメリカの野生動物や軍隊に由来する車名 「最強」「最速」そして「独自のルックス」をイメージするカワサキブランドのルーツといえば2ストロークマシンの怪物500SSマッハⅢと4ストローク4気筒キングZ1を[…]
燃料タンク部分に収納スペースと給油口はテールカウルの思いきった新しいデザイン! 1990年4月、スズキはいかにもエアロダイナミクスの良さそうなフルカバードボディの250cc4気筒をリリース。 最大の特[…]
ツーリングの目的地としても楽しめる「日本の峠」たち ツーリングの醍醐味にはいろいろあるが、バイクならではの「五感で感じる風景」や「季節の移ろい」を楽しむことも大きな魅力。 山/海/川/田園風景など、走[…]
◆今回のPRO解説者:以前にはネオクラ車の解説記事もお願いしたバイクデザインのプロフェッショナル。1980年代前半に某社に入社したベテランで、オンロード系をメインに排気量の大小を問わずさまざまな機種を[…]