
●文:ヤングマシン編集部(Peacock Blue K.K.)
文字の書体を表す言葉=フォント。日常生活で見かける文字は、用途に応じてさまざまなフォントが使われていますが、実は道路標識でもフォントが使い分けられています。
バイクはツーリングの進捗確認などのために、地名が書かれた案内標識を見ることが多い傾向にありますが、道路標識のフォントにまで着目するライダーは少ないかもしれません。
昔と今では使用されているフォントが異なるほか、一般道と高速道路でもフォントが使い分けられていると言います。いったいなぜ、標識のフォントを使い分ける必要があるのでしょうか。
道路標識に使われるフォントが一般道と高速道路で違う理由とは?
道路標識に使用されるフォントは、ゴシック体/明朝体/筆書体などの書体分類のカテゴリがあり、その下に細かな違いが設けられた「ナール/ヒラギノ」などの書体名が無数に存在します。その数は和文用だけでも約3000種類に及ぶとされ、外国語なども含めるとさらに増えるそうです。
フォントは文字の形だけでなく、文字線の太さ/密度/縦線と横線のバランスなども異なるため、視認性/可読性/判読性に大きく影響します。中でも日本の標識は漢字が用いられるため、文字線が密着しすぎると可読性が著しく低下します。
とくに道路標識となると、遠くからでも短時間で正確に文字を読み取る必要があるため、フォントが持つ役割はそれだけ重要といえるでしょう。
ただし以前の道路標識は、ゴシック体の角部を丸めた丸ゴシック体が基本とされるだけで、細かな決まりはなく地域によってバラバラでした。現在はフォントにも基準が設けられたことで統一されていますが、以下のように一般道と高速道路では異なるフォントが使い分けられているようです。
- 一般道 :丸ゴシック体 ナール(和文用フォント)
- 高速道路:角ゴシック体 ヒラギノ(和文用フォント)
では、無数にあるフォントのなかから、どのような理由でこれらのフォントが選ばれたのでしょうか。
一般道用のフォント選定にあたっては、以下の理由から丸ゴシック体の「ナール」に統一されたと、一般社団法人全国道路標識標示業協会 関東支部の資料に記録が残っています。
- 地名/通称道路名等の表示は、視認性に優れているとともに、環境デザイン上から見ても美しく、道路景観を損なわない書体にされていることが望ましい
- 一般道の標識は、運転手ばかりでなく一般市民とも密接な関係にあるため、社会生活および教育に及ぼす影響を考慮し、俗字や点画を簡略化したも文字は使用しないものとする
- 従来の標識との間に違和感を生じないことを定型化の基本としている、など
一方、高速道路はやや事情が異なります。
高速道路では、1963年の初開通以来、漢字の視認性を高める目的で、複雑な文字の一部を省略した「公団文字」と呼ばれる旧道路公団のオリジナルフォントが用いられ、民営化後のNEXCOの管轄に変わってもそのまま使用されてきました。
しかし「簡略化された文字は正しくない」と指摘されることもあったそうで、公団文字と同等以上の視認性を備えつつ、文字を正確に記載でき、標識製造時にもばらつきが生じないフォントを使う必要に迫られたとのことです。
そこで、一般流通している角ゴシック体の「ヒラギノ」が選ばれ、2010年以降はNEXCO東日本/中日本/西日本いずれもヒラギノを使用するようになりました。ただし、NEXCO管轄以外の高速道路は、管理会社によって細かな書体が異なります。
首都高速では、旧首都高速道路公団時代から「ゴナ」が使用されており、現在は「新ゴ」が用いられています。その他の都市高速道路も、管理会社ごとに使用しているフォントは異なるようです。
フォントによって標識の視認性が変わる! 気分も変わる?
NEXCOでは、フォントの決定にあたって視認性実験を行っており、その記録結果資料が残されています。
実験内容は、案内標識に書かれた「静岡 浜松」の判読可能距離を、公団文字で書かれた旧標識と、ヒラギノで書かれた新標識とで比較するというものです。実験は外国人を含めた一般被験者109人に比較してもらい、結果は旧標識の判読可能距離が210mだったのに対し、新標識は243mまで伸びたとのこと。
新標識は文字高が5cm大きくなっていたようですが、実験結果にはフォントによる視認性の向上も間違いなく影響していたはずです。つまり、道路標識のフォントは、ライダーの安全性や利便性に少なからずからず影響していることを意味します。
また、フォントによって文字から受ける印象も変わるとされています。たとえば多くの人が抱く一般的なイメージは、丸ゴシック体が“優しい/ナチュラル/女性的”、角ゴシック体は“力強い/シャープ/男性的”などです。
「速度落とせ」などの交通安全看板の文字は、丸ゴシック体だと緊急性が感じられないため、一般的に角ゴシック体などが用いられていると言います。一方、高速道路で鋭いイメージの角ゴシックが用いられるのは「気を引き締めて運転してください」という隠れたメッセージとも受け取れそうです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
命と未来を守る20日間の誓い:第51回二輪車安全運転推進運動 生身の体で風を切り、その流れと一体になるバイク。その楽しさを支えるのは、揺るぎない安全と安心だ。一般社団法人 日本二輪車普及安全協会(以下[…]
1.千代田区にはどんなバイク駐車場があるのか 前編でお知らせした通り以下の7つの実例について紹介する。 ①歩道を切り下げての区営自動二輪駐車場 ②首都高1号上野線高架下の区営自転車等駐車場 ③JR高架[…]
ツーリング日和に325名が集結した「JAPAN RIDERS CAFÉ 北海道」 日本二輪車普及安全協会が主催する「JAPAN RIDERS CAFÉ」は、2024年度からスタートした取り組みだ。バイ[…]
1. “本丸”東京都の中でも最も重要な自治体「千代田区」 東京都はバイク駐車問題の“本丸”なんて言い方をよくされる。「東京都で改善できれば…」「東京都でモデルケースを作れれば…」全国の都市部にも良い影[…]
一定のレベルを超えると風の危険度は一気に増す バイクの面白さのひとつは、夏の暑さや冬の寒さを直に肌で感じながら走ること。必ずしも快適なばかりではありませんが、それゆえに非日常感や自然の中に生きている実[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
ミラーの奥に潜む影…覆面パトカーはどんな車種が多いのか まず押さえておきたいのはベース車両の傾向。国内で多く採用されているのは、トヨタ・クラウンや日産・スカイラインといった中〜大型セダンだ。いずれも街[…]
車両の種別と免許の関係が複雑な「あの乗り物」 1.信号無視車両を停止させる 白バイ新隊員としてひとり立ちし、しばらく経った頃の話です。その日も私は、交通量の多い国道で交通取り締まりをしていました。交差[…]
BADHOPが、自らの存在と重ね合わせたモンスターマシンとは すでに解散してしまったが、今も多くのファンに支持されるヒップホップクルー、BADHOP。川崎のゲットーで生まれ育ったメンバーが過酷な環境や[…]
元々はレーシングマシンの装備 多くのバイクの右ハンドルに装備されている“赤いスイッチ”。正式にはエンジンストップスイッチだが、「キルスイッチ」と言った方がピンとくるだろう。 近年はエンジンを始動するセ[…]
なぜ「ネズミ捕り」と呼ぶのか? 警察によるスピード違反による交通取り締まりのことを「ネズミ捕り」と呼ぶのは、警察官が違反者を待ち構えて取り締まるスタイルが「まるでネズミ駆除の罠のようだ」と揶揄されてい[…]
人気記事ランキング(全体)
20周年の系譜と「アウト・トリン」の意志 ベトナムにおいて2006年に誕生して以来、見た目はスクーターながら中身は歴としたMTミッションという、アンダーボーン型スポーツバイクのジャンルを確立したのが「[…]
直列5気筒、25バルブの咆哮と650馬力の衝撃 舞台に選ばれたのは、NASCARの聖地であり、世界一危険な超高速バンクを持つタラデガ・スーパースピードウェイ。そして、この過酷なプロジェクトのために用意[…]
三輪ソーラーEV「スリールオータ」 スリールオータは、電気だけで動く極めて実用的な小型三輪モビリティだ。ドアがない仕様は「側車付き軽二輪車登録」、ハードドアを装備した仕様は「ミニカー登録」と、ユーザー[…]
鉄は錆で崩れゆくのが宿命か 古いバイクの部品、そのほとんどは鉄でできています。であるがゆえに錆びやすく、そしてレストアともなると出くわすのがこれ。 サビが進行すると腐食で穴が開いてしまったり(↑)極め[…]
スポーツ向きのハンドル剛性 ビキニカウルと段付きのシングル風シートを装備した正統派カフェレーサースタイルのZ900RS CAFE。SEやBBのハンドルがナロー化してライダーに近づいた分、ワイドで低いC[…]
最新の投稿記事(全体)
判明!あのブーツはイタリアの名門「スティルマーティン」だった 岩城さんの足元を支えていたのは、ずばりイタリアが誇るモーターサイクルフットウェアの老舗ブランド、スティルマーティン(Stylmartin)[…]
普通免許で3人乗れる「ビベル」の電動トライク 自動車の普通AT限定免許さえあれば、ヘルメットを被る必要もなく、車庫証明や面倒な車検手続きも一切不要で公道へ繰り出せる。そんな夢のようなモビリティが、株式[…]
アールデコを全身で体現するベースモデル「チーフ ヴィンテージ」 インディアン・モーターサイクルの基幹モデル「チーフ」シリーズのラインナップにおいて、ひときわ古典的な情緒を漂わせるのがベースモデルの「チ[…]
今のバイクはマフラー作りも大きな苦労 念のために触れておくけれど、2025年〜2026年にかけてあったCB1000Fのリコールについて。これに関しては、オイル点検方法などユーザーができる必要なことはY[…]
ショップに設置された特設什器でサウンドを体感して最新インカムをゲット! 応募手順は超シンプル。全国の対象ショップに設置された特設什器でサウンドを体感し、その什器をスマホでパシャリ。専用フォームから写真[…]

![一般道に設置されている標識の画像|[交通系雑学] 標識に使われている文字の書体(フォント)が使い分けられている理由とは?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/03/photo-1-4-768x481.jpg)
![高速道路の標識の画像|[交通系雑学] 標識に使われている文字の書体(フォント)が使い分けられている理由とは?](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/03/photo-2-4-768x498.jpg)





































