![ホンダNR750[名車バイクレビュー] オーバルピストンの衝撃【Part3:ネモケン、ルマン24時間出場】](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/02/RideHi_NR750-1.jpg)
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:大谷耕一
ネモケンにかかってきた“1本の電話”からドラマが始まった 1986年の秋、ボク(根本健)のところへ、世界GPで闘うHRCワークスチームのボスである尾熊さん(以下 クマさん)から、電話があった。 「来春[…]
ビッグシングルのような低中速パンチ&ジェットフィールの高回転! Part1で触れたように、鈴鹿のバックストレートで2速も6速も同じ加速Gという、経験したことのない哮(たけ)り狂ったダッシュに怖れを感じ[…]
一瞬では理解しにくい高度な開発には、ホンダ伝統の反骨精神も必要!?
Part1から説明している通り、4ストロークで挑戦を決めたNR500の開発で、ライバルとなる2ストローク4気筒500ccの110~120psを上回ろうと、130ps/10,000rpmを目標に充填効率からバルブ面積を算出すると、必要な吸気バルブ口径が通常の丸いピストンだと入りきらない。
バルブを半月状にできればもっと稼げるが、燃焼室でバルブが接して密閉するシート面に、排気で生じる微粒の硬いカーボンが挟まると、圧縮漏れを起こしてしまう。そうならないよう、丸いバルブが常に回転しながら開閉する仕組みなので、変形にはできない。
しかし、吸気4本を横一列に、排気も横一列が並ぶ長円の燃焼室とピストンだと、必要なバルブ口径面積が稼げることがわかった。これが、オーバルピストン32バルブV4を開発した理由なのだが、NR500のデビュー当時は、V8を開発したくてもレギュレーションで4気筒までなため、ピストン2個を連結した変形V4とした苦肉の策…と誤解? されがちだった。
NR750のオーバルピストン32バルブV4。
乗ってみれば、排気量がひとクラス以上も大きなエンジン特性が得られるという圧倒的な違いを理解できただろうが、数人のGPライダーとテストライダーしか乗っていなかったのだからムリもない。
今回のルマン出場プロジェクトは、フランスのモトレビュー誌のジルベール・ロイ、英国のMCN(モーターサイクルニュース)のマット・オクスレイ、そして根本健のジャーナリストライダー3人が乗る計画。
オーバルピストン32バルブV4が、何を狙ったコンセプトなのかも伝わるだろうという目論見も含まれていた。
【HONDA NR750】
Part2では、24時間耐久の仕様とする検討ミーティングでの、レーシングマシンというより、乗りやすく疲れない、ライディングを楽しめるマシンとするのが至上目標であったと伝えた。
そのため、重心位置や前後のアライメントを先に決め、そこへエンジン&車体を嵌め込むような順序で組むというのも、なかなかないことに違いない。
これらの詰めの部分で、アンチスクワット設定に自由度がある位置にドライブスプロケットを置く検討をしているとき、エンジニアが既存のカセットミッションを流用するため、エンジン前後長がわずかだけ長くなることに気づき、「これだと上司から評価されにくいナァ…」と嘲笑気味に呟いた。
1ミリでも短くコンパクトに、1グラムでも軽くなれば「良くやった」とわかりやすい。でも、「その人たちのための開発じゃない」。そう自分に言い聞かせていた。
そんな反骨精神が、また“ホンダらしい”と、羨ましく思えたのを思い出す。
信じがたい短期間での設計試作。可能性に賭ける柔軟さとこだわりの頑固さと
かくして、24時間耐久仕様にエンジンも車体も設計し直されたNR750が、わずか2ヶ月ほどで完成。オーストラリアのメルボルン郊外にあるサーキットで、極秘テストが開始された。
【HONDA NR750】
85度の挟み角となったV型4気筒は、748.76cc/155ps/15250rpm/7.76kg-m/12500rpm。デチューンしても、RVF750ワークスマシンより強力だ。
最大の魅力である、8000rpm以下から扱いやすく力強いトラクションを、さらに低い5000rpm以下でも低速コーナーで活かせるようアングルを深く取ったところ、コーナー立ち上がりだと強大なトルクでスイングアームが上下に揺れる現象も起きていた。
エンジニアは、このスイングアームの上下動が許せない。「上下に動いている間は前進していない」 そんな効率の悪い、言葉を換えれば“みっともなさ”を感じていたようで、意外なほど説得に時間がかかった……
※本記事は2023年2月2日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
鈴鹿8耐でV4に勝つ750インライン4開発に単を発した操る面白さでライディングする新次元のスーパースポーツFireBlade! 1992年に登場したCBR900RR FireBladeは、それまでトッ[…]
世界をリードしたCB、CBR、VFR、RVFの歴史を積み上げた経験とこだわりのありったけを注ぎ込む! スーパーブラックバード。米空軍で超高々度を偵察飛行する目的で開発された最高速度記録3529.56k[…]
2バルブで半球形燃焼室のツイン点火プラグ! 1989年のゼファー(400)が火をつけたネイキッド・ブーム。 カワサキは1990年にゼファー750、そして1992年にはゼファー1100とビッグバイクでも[…]
不朽の名車KATANAのレプリカで、尖ってないスポーツモデルをリリース! スズキといえばKATANA……国産4メーカーが揃ってビッグバイクへチャレンジして肩を並べた1970年代を過ぎて、スズキはスペッ[…]
ネオレトロなロケットカウルへの郷愁を巧みなグラフィックで新しさへと巧みに演出! 1989年、スズキは1レーサーレプリカ全盛だった頃に感性も価値観も異なる、オトナを意識した都会的な新ネイキッド、BAND[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | ホンダ [HONDA])
ホンダの“R”だ! 可変バルブだ‼ 1980年代に入ると、市販車400ccをベースにしたTT-F3やSS400といった敷居の低いプロダクションレースの人気が高まってきた。ベース車として空冷直4のCBX[…]
長時間の高速移動で悩まされる風圧 休日のツーリング。目的地に着く頃には、高速道路での強烈な風圧で首や肩が悲鳴を上げている。そんな経験を持つライダーも多いはず。かといって、風を防ぐために過激な前傾姿勢を[…]
どう計算したって同じようにはなれない 2025年のホンダ熊本イベントでフレディ・スペンサーと話せる機会を得て、あらためて彼は「天才」だと感じたね。僕が高校時代にバイクの免許を取った頃には、もうスペンサ[…]
スペンサーの世界GPでの大活躍がAMAレースの注目度を高めた 旧くからのバイクファンなら、だれもが“ファスト・フレディ”の愛称を知っているだろう。1983年に世界GP500でチャンピオンに輝き「彗星の[…]
世界中のカスタムアワードを総なめしてきた有名ビルダー 2013年、ベルギーで開催されたブリュッセル・モーターショーのホンダブースは異様な熱気に包まれていたといいます。 ジャパン・トリビュートのタイトル[…]
最新の関連記事(ネモケンのこのバイクに注目)
新型4気筒を待ち焦がれていたホンダファン CBにXが加わった車名のCBX400Fは、1981年10月にデビュー。バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったマシンだ。 実はカワサキ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
一般公道は乗りやすさ最優先、そのコンセプトを後方排気でピュアレーシーへ ヤマハは、1980年にレーサーレプリカ時代の幕開けともいうべきRZ250を発売。一躍250ccをビッグバイクを凌ぐパフォーマンス[…]
人気記事ランキング(全体)
乗っていてワクワクする相棒を求める気持ち 年齢とともに車の運転が不安になり、免許返納を考える。だが、いざ代わりの移動手段を探すと「いかにも」なデザインの乗り物ばかり。ただ近所のスーパーへ行ければいい、[…]
チェーンメンテナンスから解放される悦び。ヒョースン「GV250X Roadster」 ヒョースンから2026年6月に上陸予定の「GV250X Roadster」は、チェーンメンテナンスから解放してくれ[…]
シニアカーへの抵抗感と、移動のジレンマ 歳を重ねるにつれ、長年親しんだクルマの運転免許を返納する日は誰にでも訪れる。しかし、その後の移動手段に頭を悩ませる人は多い。電動アシスト自転車は便利だが、バラン[…]
段差を恐れない「足長」サスペンションの威力 一般的なスクーターはタイヤが小さくサスペンションのストロークも短いため、路面のギャップを拾いやすい。しかし、SR GT 200 Sportは根本から設計が異[…]
窮屈さとは無縁。余裕のフルサイズボディがもたらす優越感 125ccのバイクというと、小柄でコンパクトな車体を想像するかもしれない。しかし、SX 125は違う。全長2050mm、ホイールベース1430m[…]
最新の投稿記事(全体)
【開発背景】「インカムで耳が痛い……」全ライダーの悩みをサイズ3割減で一発解消! インカムを使っていて「スピーカーが耳に当たって痛い」「ヘルメットを脱ぐときに耳がちぎれそう」という経験はないだろうか?[…]
すべてのライダーよ、初夏の駿河湾に集結せよ! 「バイク乗りは自然を愛し、地球を愛するグッドライダーであるべき」という信念のもと、これまで多くのライダーと二輪業界が一丸となって紡いできたこの活動。今回の[…]
高い防水性で長時間の走行も快適に:RY7001 コミューティング ストレッチレイン 雨の日でも快適に走りたい気持ちに応える、上下セットアップタイプのレインウェア。生地にはヤマハオリジナルの防水透湿素材[…]
ヘルメットやウエアに合わせて“着せ替え”を楽しめ! バイク用インカムといえば、今やツーリングの必須装備。しかし「みんなと同じ見た目じゃつまらない」「ヘルメットのグラフィックと色が合わない……」と密かに[…]
疲労ゼロと操る歓びの融合。Eクラッチの真価 クラッチ操作の自動化といえば、ホンダにはすでに「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」という確立された技術がある。しかし、DCTが約10kgの重[…]
- 1
- 2




![ホンダNR750の「オーバルピストン32バルブV4」|ホンダNR750[名車バイクレビュー] オーバルピストンの衝撃【Part3:ネモケン、ルマン24時間出場】](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/03/RH_honda_nr750-03_221221_1-768x432.jpg)
![ホンダNR750|ホンダNR750[名車バイクレビュー] オーバルピストンの衝撃【Part3:ネモケン、ルマン24時間出場】](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/03/RH_honda_nr750-03_221221_2-768x432.jpg)
![ホンダNR750|ホンダNR750[名車バイクレビュー] オーバルピストンの衝撃【Part3:ネモケン、ルマン24時間出場】](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/03/RH_honda_nr750-03_221221_3-768x432.jpg)





































