
工具メーカーといえば、開発から製造まで一貫して自社内で行うイメージがあるが、それとはまったく異なる方法で成長してきたのがシグネットである。生産工場を持たず、製造を得意とする外部の工場とアイテムごとに連携することで、高い品質とコストパフォーマンスの高さを両立してきたシグネット(SIGNET)は、工具業界を代表するファブレスメーカーである。今回はその中でも人気の工具セットを紹介する。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:ワールドインポートツールズ横浜
持ち運びにも据え置きにも適した好バランス。2トーンのウレタントレイで工具の紛失を予防
シグネットでは、20年近くに渡ってイヤーモデルとして工具セットを企画/販売してきた実績があり、その中でユーザーの好みやニーズをくみ取り、アップデートを重ねてきた。
現在ではスタンダードツールとして認識されているラチェットメガネレンチを、日本市場で初めて販売したのはシグネットで、早くからセット工具にも取り入れてきた。またウレタントレイを2トーンにして視認性を高めるアイデアを広めたのも、シグネットの功績が大きい。
アイテムごとに生産工場を使い分けることで、セットとしての統一感が出ないのでは? という懸念があるかもしれないが、1990年から積み重ねてきた30年以上の実績により、その品質は多数のプロメカニックにも認められている。
そもそもソケット製造が得意なメーカーでソケットを作り、ドライバーが得意なメーカーからドライバーを調達すれば、品質的に間違いが起こるはずはない。高いコスパを求めるユーザーこそ注目すべきブランドである。
【SIGNET 9.5SQ 58PCツールセット マットブルー 800S-5822MBL】 幅555×奥行250×高さ300mm ●価格:3万9800円
【視認性の良い2トーントレイ】ブルーのトレイ本体に薄い黒スポンジを貼り、さらにカーボン調のプレートを貼付することで、工具を取り出した場所が明確に分かり、収納時に迷子になったアイテムに素早く気付くことができる。視認性の向上は作業効率アップにもつながる。
【傷つきや盗難を予防する専用カバーが付属し、開閉がスムーズな引き出しはベアリングレール仕様】現在販売されている58点ツールセットのボックスカラーは、マットブルーとマットブラック。工具箱は赤という固定観念を捨てて、次々とカラフルなボックスをリリースしたのもシグネットである。3段の引き出しのレールは操作感の軽いベアリング仕様で、天蓋を閉じると2か所のロックプレートによって引き出しが固定される。付属のボックスかバーを上からかぶせておけば、傷付きを予防できる。カバーをかけた状態でハンドルを掴めるので、持ち運びも可能。
【トップ収納】スタンダードソケットは立てて、ディープソケットは寝かせて収納されているトップ収納部。ソケットレンチとドライバーが同一エリアに並ぶのがシグネットの特徴。トレイの型抜きは工具形状を正確にトレースしており、収納場所を誤ることはない。
【引き出し1段目収納】1段目の引き出しにはメガネレンチとシグネットレンチが収まっている。シグネットレンチとはメガネ部分にギヤレンチを採用したレンチで、日本で初めて販売したことに由来して命名された。メガネレンチの手前はフリースペース。
【引き出し2段目収納】プライヤーやニッパーなどの掴み系と、ハンマー/ヘックスレンチが収納された2段目。ソケットやレンチ類はカーボン調プレートにサイズが表記されるが、この引き出しは製品番号がプリントされている。また各トレイにはSIGNETのロゴも入っている。
【引き出し3段目収納】3段目の引き出しはフリースペースで、ここでは上段のトレイに入らないピックツール(これも工具セットの内容物)を入れてある。セットとは別に所有している単品工具/ケミカル/サーキットテスター/LEDライトなどを入れておくのも良いだろう。
ギヤレンチを最初に実用化したのがシグネット
美しいクロームメッキ仕上げのメガネレンチは、ボルトやナット周辺の干渉物を避けやすい立ち上がり角度45°タイプ。最大24mmまであるので足まわりやホイール着脱でも有効。
シグネットレンチには、60ギアから120ギアまで幾多のバリエーションがあるが、このセットでは72ギアのスタンダードタイプを採用。ラチェットの回転方向は一定で、レンチ本体の裏表で締め作業と緩め作業を使い分ける。メーカーロゴやサイズは長期間使用しても消えない刻印仕様。
■セット内容:SIGNETレンチ 10/12/13/14/17mm 45°メガネレンチ(コンパクトサイズ)8×10/12×14/17×19/22×24mm
ソケットは耐久性に富んだ6ポイント
ソケットレンチの差込角は3/8インチで、小判型ヘッドの72ギアラチェットハンドルはソケットをスムーズに着脱できるプッシュボタン式。ソケットはスタンダード/ディープとも6ポイントで、狭い場所でも周囲に干渉しにくい薄肉タイプ。
ユニバーサルジョイントにはスプリングが内蔵され、傾けた状態から手を離すと直立状態に復元するのが特徴。マット仕上げのT型スライドハンドルは、ハンドルバーが半円型で握りやすく、ヘッドが回転しないため使いやすい。
■セット内容:3/8DRラチェットハンドル 3/8DRスピンナーハンドル200mm 3/8DR半円グリップT型スライドハンドル 3/8DRエキステンションバー75/150mm 3/8DR6角ソケット8/10/12/13/14/17/19mm 3/8DRディープソケット8/10/12/14mm
超ミニビットラチェットはアクセス性抜群
トップ収納部のアルミケースに収まる60歯のビットラチェットハンドルは、貫通ヘッドで超コンパクト。1/4HEXビットの凸部分をヘッドに挿入すると超低頭レンチになるので、クリアランスが少ない部分のビスやキャップボルトの着脱作業で重宝する。
また、グリップ後端にもビットをセットできる六角凹があり、ラチェットヘッド側を握ればドライバーのようにして使うこともできる。ケースに収納してバイクのシート下に置けば、車載工具としても役に立つ。
■セット内容:ミニラチェットハンドル +ビット1/2/3 -ビット4/6mm 六角ビット4/5/6mm アルミケース
回転トルクがしっかり伝達できるソフトグリップ
樹脂柄グリップの断面は、強く握っても手や指に食い込みにくい滑らかなラウンド形状で、先端に向かう絞り形状によって指先で早回しするのも容易。シャンク(軸部)がグリップ後端まで繋がった貫通仕様なので、固着したビスを緩める際はハンマーでショックを与えることもできる。
また軸の根元のボルスターにレンチをかければ、トルクを増大することもできる。差し替え式スタビードライバーのビットにはプラス3番があるが、通常のソフトグリップドライバーのプラスが2番までなのが、バイクのメンテナンスを考えた際にやや残念。
■セット内容:差替式スタビーソフトグリップドライバーセット[+]1/2/3 [-]5mm ソフトグリップドライバー[+]1×75/2×100 [-]6×100/8×150mm
細かい手元作業で重宝する4種のピックツール
Oリングやガスケットを剥がしたり、固着した汚れを削り落とす際に便利なピックツール。4種類の先端形状はそれぞれ使用場所が決まっているわけではなく、作業内容に応じて使いやすいアイテムを選択すればよい。
作業の幅が増えればやがて必要になる工具なので、あらかじめ入っているのがありがたい。ニードル状のストレートタイプやフックタイプがポピュラーだが、カギ型に曲げられたコンビネーションタイプも意外と多くの場面で活躍してくれる。
■セット内容:4PCSピックツールセット(ストレート/フック/コンビネーション/90°先曲がり)
キャップボルトに不可欠なヘックスレンチも採用
コンフォートタイプのニッパーとラジオペンチのグリップは、力を入れて握っても手が痛くなりにくいラウンド断面で、前方に滑り止めが付いた形状が特徴的。
一方、全長200mmのスリップジョイントプライヤーは、細かい作業で扱いやすいようノーズ部分がスリムにシェイプされており、グリップのデザインがニッパーなどとは異なる。黒染め仕上げのヘックスレンチはボールポイント側が長めに設定され、奥深い場所にあるキャップボルトにも届きやすい。
レンチホルダーにフック穴があるので、9本セット状態で壁掛け収納することもできる。ハンマーの柄は強度が高く適度にしなるグラスファイバー製で、グリップ部分はラバーコーティング仕様。
■セット内容:スリップジョイントプライヤー200mm 強力ニッパーコンフォートタイプ160mm 強力ラジオペンチコンフォートタイプ160mm ボールピンハンマー12オンス 9PCロングボールヘックスレンチセット
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
妥協することなく繰り返される設計変更で進化を続けるMADE IN JAPANホイール オリジナルホイール開発当初から、一貫して鍛造製法を採用し続けているアドバンテージ。溶かした素材を鋳型に流し込む鋳造[…]
きめ細かい泡を連続噴射できる電源不要のポンプ式フォームガンとカーシャンプー ここ最近、各方面で話題となり人気上昇中なのが、洗車用シャンプーなどを手動ポンプで加圧して泡状に吹き付けるフォームガン。バケツ[…]
脚もとの輝き具合は意外と目立つので要注意!! フルレストア進行で一気に仕上げると、当たり前のようにすべての部品は輝いている。一方で、今週はホイール、来週はサスペンション、といったように、パートごとに仕[…]
エアコンプレッサー:62dBの静音仕様は室内や夜間作業でも安心 サブタンクと違ってコンセントから電源を取る必要があるが、サブタンク並みに持ち運びができる手軽さが最大の特長。本体サイズは幅360×奥行3[…]
ショールームとワークスペースのセットにレンタルバイクが加わり、さらにパワーアップ 「以前の店舗もここから10分程度の近所ですが、中央道路に出てきたら『こんなにお客さんがいるの!?』という感じです」と語[…]
最新の関連記事(工具)
エアインパクトレンチ:手のひらに収まるサイズで500Nmを発揮。狭い場所で活躍する力自慢 ガレージにエアコンプレッサーを導入したら、まず揃えておきたいのがエアブローガンとエアゲージ、そしてインパクトレ[…]
ソケットセット:ツールキャビネットの引き出しにそのまま収まるトレイ付きZ-EALセット ラチェットハンドルもソケットも、専門メーカーのノウハウを注入して開発されたZ-EAL。その代表的アイテムをセット[…]
動きが渋い鍵穴に潤滑剤はNG! ・・・の前に ちょっと前に「キーの回りが渋くなってきた鍵穴に、潤滑剤を吹きつける(注入する)のはNG!」という情報がネット上で広く流れました。その理由は一時的に動きが滑[…]
フレーム/スタンドの別体構造と自在キャスター装備で自由に移動できる 向山鉄工のオリジナル製品である「ガレージREVO」は、バイクスタンドに自在キャスターを取り付けることで、スタンドアップしたバイクを前[…]
やっぱり「素手」が好き! いきなりですが、筆者はかなりの作業を素手で行っています。ていうか、素手が大好きです。ボルトを回すにしても、工具を持って締め付けるにしても、とにかく手先にダイレクトに伝わる感覚[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」、今回は大ヒット街道まっしぐら、女性人気も高いホンダ「レブル250(S[…]
エアインパクトレンチ:手のひらに収まるサイズで500Nmを発揮。狭い場所で活躍する力自慢 ガレージにエアコンプレッサーを導入したら、まず揃えておきたいのがエアブローガンとエアゲージ、そしてインパクトレ[…]
ソケットセット:ツールキャビネットの引き出しにそのまま収まるトレイ付きZ-EALセット ラチェットハンドルもソケットも、専門メーカーのノウハウを注入して開発されたZ-EAL。その代表的アイテムをセット[…]
創業60年以上の老舗メーカーの強力アルカリクリーナーに注目 モータリゼーションの先進国・アメリカでは早くから洗車やディテーリング産業が確立しており、より短時間で効率よく愛車を輝かせるためのケミカル製品[…]
空気圧のチェック。「適正圧」には意味がある タイヤの空気圧管理、ちゃんとやってますか? この「ちゃんと」管理ってとこに、実は落とし穴があるんですよね~。たとえば、空気圧が低いとグリップ力が低下したり、[…]
人気記事ランキング(全体)
トレッドのグルーブ(溝)は、ウエットでタイヤと接地面の間の水幕を防ぐだけでなく、ドライでも路面追従性で柔軟性を高める大きな役割が! タイヤのトレッドにあるグルーブと呼ばれる溝は、雨が降ったウエット路面[…]
新型スーパースポーツ「YZF-R9」の国内導入を2025年春以降に発表 欧州および北米ではすでに正式発表されている新型スーパースポーツモデル「YZF-R9」。日本国内にも2025年春以降に導入されると[…]
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
北米にもあるイエローグラフィック! スズキ イエローマジックといえば、モトクロスやスーパークロスで長年にわたって活躍してきた競技用マシン「RMシリーズ」を思い浮かべる方も少なくないだろう。少なくとも一[…]
アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる…… ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200[…]
最新の投稿記事(全体)
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
圧倒的! これ以上の“高級感”を持つバイクは世界にも多くない 「ゴールドウィング」は、1975年に初代デビューし、2001年に最大排気量モデルとして登場。そして2025年、50年の月日を経てついに50[…]
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
マーヴェリック号の燃料タンク右側ステッカー エンタープライズに配属された部隊 赤いツチブタは、「アードバークス」の異名を誇る米海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」のパッチ。1980年代には第1作[…]
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
- 1
- 2