●文:モーサイ編集部(阪本一史)
ハーレーダビッドソンには50ccやオフロード車もあった!
最近でこそ、オフロード走行も視野に入れたアドベンチャーモデル「パンアメリカ」など今までイメージとは違ったモデルを展開しているハーレダビットソンだが、「ハーレー」と言えば、多くの人が大排気量Vツインエンジン搭載の威風堂々のビッグなクルーザーをイメージするだろう。
だが、ハーレーダビッドソンの100年以上にわたる長い歴史の過程では、じつはミニバイク/スクーター/オフロード車も存在していたのだ。当記事ではそうしたユニークな“ハーレーファミリー”を紹介する。
ハーレーにVツインが登場したのは1909年から
ハーレーダビッドソン=Vツインが今や定石のようになっているが、かつては様々なエンジンレイアウトのマシンがハーレーダビッドソンのマークを付けて販売されていた。
さかのぼれば、1903年の創業当初は409ccの4ストローク単気筒エンジンでスタート。今から112年前の1909年にVツインエンジン(810cc)が登場。
裏を返せば、創業から数年間は単気筒エンジンのみを生産していたのであり、それ以降、第二次世界大戦を挟んで、戦後復興の復興状況に合わせて経済的なシングルモデルを生産していた。
またそれ以外にも、水平対向エンジンや自社製の2ストロークエンジンまで手がけ、排気量では50ccや90ccのミニモデルまで存在していた。
他のモーターサイクルメーカーにしても、シンプルな構造のエンジンで創業している例は多い。
縦置きVツインで有名なモトグッツィは、戦前に水平単気筒エンジンでスタートしたし、Lツイン(90度Vツイン)でおなじみのドゥカティは、戦後50cc4ストローク単気筒搭載の原動機付自転車・クッチョロが始まりだったのだ。
ハーレーダビッドソンも例に漏れず、黎明期はもちろんのこと、Vツインエンジン登場後も、市場の動向に合わせた様々なタイプのモデルを供給した。
そして、ハーレーは1960年にイタリア・アエルマッキの株式の50%を取得、多くのイタリアンハーレーを市場に投入してユーザーを増加させていったのである。
ハーレーダビッドソン Bハマー(1955)
1947年より、ハーレーは自社製の2ストロークモデルを開発。ドイツのDKWを模した、125cc2ストローク単気筒エンジン搭載の「S125」というモデルを1947〜1952年まで生産し、価格の安さと手軽さで通勤や通学などにバイクを用いる人にも支持された。
1953年には165ccモデルも追加されている。写真の「Bハマー」は特にスタイリッシュな外観のモデルだ。しかし、1960年にアエルマッキを傘下として以降は、徐々に自社製2ストモデルは姿を消していった。
ハーレーダビッドソン Cスプリント(1961)
1961年、ハーレーダビッドソンはイタリアの名門アエルマッキと提携。アメリカ市場においてハーレーブランドで発売されることになった。
その第1号として、手薄だった250ccクラスに投入されたのが、この「Cスプリント」だ。アエルマッキ アラドーロなどの傑作エンジンとして世界的に有名な4ストロークOHV水平単気筒エンジンを搭載し、最高速130km/hをマーク。イタリアンデザインが特徴的なハーレーダビッドソンだ。
ハーレーダビッドソン AHトッパー(1962)
ハーレーダビッドソンにはスクーターも存在した。1960年に登場した「AHトッパー」は、自社製の165cc2ストロークエンジンを搭載。シリンダーが水平にレイアウトされ、Vベルトを使用した自動変速装置を採用した。始動はキック式ではなく、ユニークなリコイルスターターだった。1965年まで生産され、州によっては免許不要でOKだった5ps仕様のモデルも造られた。
※本記事は2021年8月9日公開記事を再編集したものです。*本記事は2008年発行『GREATEST HARLEY1903-2008 ハーレーダビッドソン105周年とVツインの100年』(八重洲出版)の内容を編集/再構成したものです。
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