CB400SF愛が止まらなくなる「ハイパーVTEC」の魅力とは?「ンバアァァ!」の快感を考察&解説してみた
みなさんがバイクに乗っていて「気持ちいい!」と思える瞬間はいつでしょうか? 肌に感じる風や、流れる景色、エンジンの鼓動・・・バイクの魅力は数あれど、その中でも「ンバアァァ!」の瞬間! と言うならば、あなたはきっと「ハイパーVTEC」搭載のCB400SF乗りなことでしょう。かの“スーフォア”が新車生産終了になった2024年10月現在でも、ライダーを魅了し続ける「ハイパーVTECの魅力」について改めて考えてみたいと思います。
●文:[クリエイターチャンネル] DIY道楽テツ
ライダーを魅了してやまない「ハイパーVTEC」
CB400SF(スーパーフォア)に採用されていることでも有名な、バルブ制御システム「ハイパーVTEC(HYPER VTEC)」。この口コミを検索してみると、とにかく「楽しい」「気持ちいい」「クセになる」というレビューで溢れてます。「乗りにくい」てのがあってもおかしくないのに、「ハイパーVTECやりすぎて危険かも」といった苦言があるぐらい。
・・・そこまでいうなんて、一体なぜ? 絶対的な最高速でもないし、圧倒的な加速力とも違う。採用車種を見ても、ハイパワーエンジンというわけでもないのに、何がそんなにライダーを魅了してやまないのか? なぜにこれほど、多くのライダーを虜にするのか? その秘密を、この記事では探ってみます。
ハイパーVTECとは何か?
「ハイパーVTEC」を振り返るには、まずバルブとはなにかを理解する必要があります。これはエンジンの内部で吸気と排気を制御する、とても精密なパーツ。
その重要性は、バルブの数でエンジンの特性がある程度決まってくるほど。例えば、2バルブだと“低回転型=中低速域で力強さを発揮するものの、最高速が伸びにくい”エンジンになり、4バルブだと“高回転型=中低速域は粘りがなく、最高速が伸びやすい”エンジンになるといった具合です。
これを聞いて、「2バルブと4バルブを切り替えられるようにしたら、最強のエンジンになるんじゃない?」と思ったあなた、ご明察。これを実現するのが、1999年にCB400SFに採用されて世に出た、可変バルブタイミング制御システム「ハイパーVTEC」なんです。このハイパーVTEC、実は年々進化していて、次のような変遷を辿っています。
・1999 CB400SF「ハイパーVTEC」
直押しタイプとしては量産車初のバルブ数切り替え機構「ハイパーVTEC」
・2002 CB400SF「ハイパーVTECスペックII」
バルブ数切り替えタイミングの回転数を6,750rpm→6,300rpmに変更
・2003 CB400SF「ハイパーVTECスペックIII」
6速のバルブ数切り替えタイミングの回転数を6750回転に引き上げ
・2007 CB400SF「ハイパーVTECレボ」
PGM-FIを導入、ハイパーVTECも3Dマップを導入した「Revo」に進化
このように、ハイパーVTECの進化はそのままCB400SFの進化と言っても、過言ではありません。とはいえ、進化して名前が変わっても、6500回転付近を基準に、「低・中回転では2バルブ」「高回転では4バルブ」という2つのモードを切り替えるという、基本的なシステムは同じです。
低・中回転域では2バルブのみが作動して、それに応じたベストな燃調を実現。そして2バルブらしい、発進時からの力強い加速や、巡航走行時のゆとりあるトルクを発揮します。高回転域では4バルブすべてがフルに作動して、それに応じたベストな燃調を実現。そして4バルブエンジンならではの、スムーズで伸びのある出力特性を発揮します。
すごーくざっくりいえば、2バルブと4バルブのまったく性格の違うエンジンが、6500回転付近で積み替わっているようなイメージですね。
ハイパーVTECの快感、その正体
なんとなく機能がわかっても、ハイパーVTECがなぜ「気持ちいい」と評されるのかは、ちょっとわかりにくいですよね。このへんを考察してみましょう。
ハイパーVTECがもたらすのは、ただの性能向上ではなく、切り替えの瞬間に“唐突にやってくる”ライディングフィーリングそのものの変化です。「ハイパーVTECは燃費とパワーの両立を実現」するのですが、それはあくまで性能面でのおハナシ。フィーリングはまた別の話です。
回転数が上がったときにハイパーVTECが作動して、バルブの開閉が切り替わるその瞬間、エンジン音が変わり、回転の伸びが増し、パワーの出方も変わる。このエンジン回転数がギュン! と伸びて排気音が一段甲高くなる瞬間、「ンバアァァ!」という音で表現される感覚こそが、多くのライダーにとってハイパーVTECの最大の魅力となっているのです。
このフィーリングは、かつてのターボエンジンが生み出す「ドッカンパワー」や、レーサーレプリカ全盛期の2ストロークエンジン特有の「パワーバンド」に入った瞬間の感覚に似ているかもしれません。しかし、ハイパーVTECはそれらとは異なり、ピーキーな特性を持たず、下から上まで扱いやすい特性を持ちながらも、明確な「境界線」をライダーに感じさせてくれるのです。
気持ちいい、快感・・・いや、ここはあえて「官能的」と言わせてもらいましょうか。この点が、ハイパーVTECが長年にわたり愛され続けている理由なのではないでしょうか。
ハイパーVTECを楽しめるシーン
CB400SFの400ccエンジンともなると、一般道でそのフルパワーを試すのは現実的には難しいところです。1速でもしっかり回せば、法定速度を超えてしまうほどのパワーを持っているぐらいなので、全開走行=免停まっしぐら。
しかし、ハイパーVTECの切り替わる瞬間を楽しもうと思えば、日常の走行シーンでも十分可能です。信号待ちからのゼロ加速でも、7000回転以上でシフトアップにすれば、何度でも楽しめてしまうのがハイパーVTECの魅力。高速道路の加速車線ともなれば、一般公道より上のスピードレンジで、「その瞬間」を存分に味わうことができて、さらに爽快な走りを楽しめます。
もちろん、エンジンをレッドゾーン手前まで回して楽しむのもひとつの方法ですが、レブリミット半分の回転数でも、十分に楽しめるのがハイパーVTECの大きな魅力です。ひょっとしたら開発のきっかけも、そんなところの狙いがあったのかもしれませんね。
もっとも、CB400SFのインジェクション化と同時に2007年から採用された、ハイパーVTECレボとなってからは、あえて切り替えのタイミングをスムーズにして、わかりにくくする調整がなされています。明確に「変わった!」という感覚を味わいたい方は、キャブレター時代のモデルを選ぶと良いかもしれません。
ハイパーVTECよ永遠なれ
ハイパーVTECの魅力は、その性能だけでなく、ライダー自身が感じる「瞬間的な変化」にあります。エンジン回転数の増加とともに変わるフィーリングや音、そしてその独特の快感こそが、多くのライダーを虜にし続けている理由だといえるでしょう。
残念ながら、CB400SFの新車生産終了とともにハイパーVTECも役割を終えてしまったわけですが、そのフィーリングもメカニズムも、後世に受け継がれていくことを切に願います。みなさんもチャンスがあれば、ぜひともハイパーVTECの面白さを体感してみてください。あっ、その時はくれぐれも法定速度を守って安全運転を忘れずに。おじさんとの約束だぞ~!
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