V型2気筒の原付二種 GV125Sボバー試乗レビュー

●文:[クリエイターチャンネル] 相京雅行
東京モーターサイクルショー2023の会場で気になるバイクを見つけました。
韓国ブランド、ヒョースンのGV125Sボバーです。
なぜ気になったのかといえば、125㏄なのにV型2気筒エンジンを搭載しているから。
125ccクラスで単気筒エンジン以外のバイクを見たことがありませんし、乗ったこともありません。
貴重なV型2気筒エンジン搭載のGV125Sボバーをお借りすることができたのでレビューします。
質感の高いディテール

ヘッドライトはオーセンティックな丸目一灯スタイルでH4ハロゲンバルブを採用。
ウインカーもLEDではありませんが、シンプルなボバースタイルにはマッチしています。

フロントフォークは正立、ブレーキはシングルディスクに3ポットキャリパーを採用しています。
3ポットは珍しいですが、GV125Sボバーはコンビネーションブレーキを採用しており、リアブレーキをかけるとフロントブレーキのピストンが一つ作動する仕組み。
つまりフロントブレーキレバーだけを操作すると2ポットになるというわけです。

水冷4ストロークVツインSOHC6バルブ124.7ccエンジンは冷却用のフィンが刻まれており、一見空冷に見えますが、前側には大きめのラジエーターがマウントされています。

エアクリーナーはエンジン横にマウントされ、ハーレーを彷彿させるデザインです。

ローロングスタイルなのでストロークは決して長くはありませんが、リアサスペンションはツイン、更にプリロードの調整機構も備えています。

灯火類では唯一テールユニットだけがLEDを採用しており、短くチョップされたリアフェンダーにマウントされています。

エンジン横には謎の六角レンチがマウントされていますが、何に使うかというと、

なんとサイドカバーの開閉に使うのです。中には車載工具と書類が入っていました。

メーターはデジタルとアナログの複合タイプですが、ODOの部分はシフトポジションやトリップ、時間などに表示変更できます。

しばらく走行しているうちに慣れましたが、樽型のグリップは手が小さい人は握りにくいかもしれません。

メインシートにはダイヤステッチが入っており高級感を演出、タンデムシートも広めなので積載する際にも重宝します。

フロント16、リア15インチ。幅はフロント120、リア150mmの太いタイヤを装備しています。
GV125Sボバーの足つき

GV125Sボバーのシート高は710mm、車両重量は165kg。
筆者の身長は164cm、体重62Kg、試乗した日のライディングブーツのソール厚は1.5cmでした。
跨ってみるとシートが絞り込まれているので、股が広がらず足をまっすぐに下ろすことが可能で、サスペンションがしっかり沈むので踵まで両足ベッタリでした。
座面の広いシート後ろに座るとサイドカバーで股が広がりますが、それでも両足着くので不安はありません。
車両重量165kgは125㏄としては重量級ですが、両足ベッタリつくこともあり跨ったまま押し引きするのも楽でした。
ブレーキのタッチは癖あり

走り始めて最初に感じるのはリアブレーキの強烈な違和感。
125ccクラスはコンビネーションブレーキかABSの装備が義務付けられていますが、スクータータイプではないフルサイズ車両でコンビネーションブレーキを装備しているのは稀です。
そのためいつも通りにリアブレーキを操作してしまうと制動力がガッツリ効いてしまい、ギクシャクしてしまうのです。
フロントブレーキもかけ始めからカッチリ効くので、乗り始めて10分ぐらいはブレーキの操作に慣れませんでした。
しばらく乗っているとフロントブレーキを先に弱めにかけて、リアブレーキを追加する操作方法に慣れてくるので違和感はなくなりました。
クルーザーならではのドコドコ感が気持ちいい

2気筒エンジンを搭載していると聞いて、勝手にエンジンが鋭くふけあがる特性を想像していましたが、完全に予想は裏切られました。
よく考えればGV125Sボバーはローロングスタイルのクルーザーなのです。CB125RやGSX-R125のようなスポーツモデルとはキャラクターが違います。
アクセルの入力に対してエンジン回転数の上がり方がゆったりしていますが、6000~7000rpmぐらいから加速にメリハリがつき始めます。

試乗当日は風が強かったのですが、橋の上を走行した際も煽られにくく、太いタイヤ、低い重心のお陰で125㏄とは思えない安定感。
プリロード調整機能付きのリアサスペンションもしっかりとダンパーが効いており、乗り心地も良好ですが、シートが若干硬いからか1時間ほど走っていると多少尻へのダメージを感じました。
長距離走行時は乗車位置を座面の広いシート後方にした方が良さそうです。

ハンドリングは前後に太いタイヤを装備しているからか、倒しこむ際に多少抵抗がありますが狙ったラインから外れるほどではありません。
ただコーナリング中にリアブレーキをかけてしまうと、フロントブレーキも同時にかかるコンビネーションブレーキが効いてしまうので注意が必要です。
GV125Sボバーの燃費

GV125Sボバーには燃費計がついていないので、今回は満タン法で測定してみました。
結果は40.0km/L。
タンク容量は12.5Lなので、単純計算で500kmは走行できることになりますが、400kmあたりで給油すると良いでしょう。
他にはない125㏄ボバースタイルは走行性能も異質でした
今や希少になってしまったV型2気筒エンジンのドコドコ感が心地よく、早めにギアをあげて低い回転をキープしていると、どこまでも走っていきたくなります。
2気筒エンジン搭載と聞いてスポーティーな走りを期待してしまいましたが、見ため通りのクルーザーらしい走りは他の125㏄では体験することができません。
海外製の場合はメッキや塗装の質が気になることもありますが、GV125Sボバーは各所パーツの質感が高いのにも関心。
所有欲を満たす125ccバイクが欲しいという人にも自信をもってお勧めしたい一台です。
動画でレビューを見たい方はこちら
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(新型原付二種 [51〜125cc])
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
LCDメーターがTFTにグレードアップ、外観も一新! リーニングマルチホイール=LMW採用の原付二種/軽二輪スクーターとして独自の地位を築いているヤマハの「トリシティ125」「トリシティ155」がマイ[…]
9/10発売:スズキ アドレス125 まずはスズキから、原付二種スクーターの定番「アドレス125」がフルモデルチェンジして登場だ。フレームを新設計して剛性を高めつつ軽量化を実現し、エンジンもカムシャフ[…]
イタリア魂が込められたフルサイズ125ccネイキッド イタリアンブランドとしての誇りを胸に、資本も製造もすべてイタリアで行うファンティックは、コストダウンのために安易なアジア生産に走らず、職人の手で丁[…]
シグナスシリーズ、20年の歴史を背負うニューフェイス 以前は空冷エンジン搭載のコンパクトな原付二種スポーツスクーターとして人気を博した「シグナスX」だが、水冷の新世代「シグナス グリファス」に交代した[…]
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
オーバー500cc・ビッグシングルの力強さ 世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。 歴史的ビッグネームの「ゴールドスター」は1938年から1963年まで製造された、BSAの代名詞の[…]
ツーリングの楽しさを気軽に、疲れ知らずで ウェット路面に翻弄され、全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラス今季初戦は、決勝9位という不本意な結果に…。その悔しさを癒してもらおうと、新型のRebel […]
世界の二輪市場にBSA復活を知らせる2台の新型車 BSAブランドが再び動き出したのは2016年。自動車や二輪車、物流や不動産など多角的に事業を展開するインド/マヒンドラ・グループが、新たに起ち上げたク[…]
“クラシック”シリーズ初の2気筒モデル ミドルクラスでグローバルな存在感を増しているロイヤルエンフィールドは、空冷350cc単気筒シリーズと空冷650cc 2気筒シリーズを多数展開。これに水冷450c[…]
今回のツーリングで3337.2kmを走ったトレーサー9 GT+Y-AMT ①ACC&Y-AMTの組み合わせは高速移動が圧倒的にラクチン! 今回のインプレッションでは首都圏から北海道まで高速道路を使って[…]
人気記事ランキング(全体)
カスタムスピリットから生まれた英国ブランド まずMUTT Motorcyclesというブランドについておさらいしておこう。2016年、英国バーミンガムでカスタムビルダーのWill RiggとBenny[…]
50レプリカのフルサイズからミニバイクレースを経てデフォルメフルサイズへ! VR46カラーのTZR50……実はヨーロッパで1997年から2012年まで生産されていたイタリアのミナレリ製エンジンで、現地[…]
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
オーバー500cc・ビッグシングルの力強さ 世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。 歴史的ビッグネームの「ゴールドスター」は1938年から1963年まで製造された、BSAの代名詞の[…]
潮風と愉しむ瀬戸内の海の幸をその場で堪能せよ! ツーリングで心地よい疲労を感じた体に染みわたる、とびきりの港メシはライダーにとって最高の贅沢だ。IKEDA PORT MARCHÉでは、島の牡蠣や地魚を[…]
最新の投稿記事(全体)
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
用品から観光までバイクライフが広がる一日 「茶ミーティング」の最大の魅力は、その出展ブースの多様性にある。国内外のオートバイメーカーや用品メーカー、卸商といった我々ライダーにはお馴染みの企業が多数参加[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
- 1
- 2