[スーパーカブ50生産終了へ] 2000年代まで存在した長男モデル・スーパーカブ90のキャブレターをオーバーホール

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ホンダ スーパーカブ90

単一機種として世界でもっとも数多く製造されたホンダ スーパーカブ。吸気系がフューエルインジェクション(FI)となった現在は、50cc/110ccがあり、長兄のスーパーカブC125、さらに派生モデルとしてクロスカブ50/110やCT125ハンターカブなど、125ccまででさまざまな排気量があります。しかしながら、2007年のFI仕様が登場するまでのキャブレター時代、排気量が最大だったのはスーパーカブ90(85cc)でした。50ccや70ccに比べてトルクとパワーに勝るスーパーカブ90(以下C90)は、ビジネスでもホビーユースでも余裕の走りを見せ、多くのユーザーに愛されました。40年近くにわたる歴史の中で、モデルチェンジを繰り返したC90は、年式によってキャブレターの仕様も変遷しており、キャブレター燃調キットを開発製造するキースターでは、5種類のキットを用意しています。

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ロングセラーモデルのキャブレターいじりに役立つ燃調キット

1958年に発売されたC100の大成功を受けて、スーパーカブシリーズのラインナップ拡充に力を注いだホンダは、C105(55cc)/C65(63cc)に続くCM90を1964年にリリースします。

排気量を拡大することで過酷なビジネスシーンでも必要十分なトルクとパワーを発揮した、スーパーカブシリーズの長兄モデル・カブ90は、1968年にCM90からC90となり、モデルチェンジを繰り返しながら2000年代に入るまで製造され続けました。

排出ガス規制の強化などによって2009年に登場したスーパーカブ110は、吸気系にフューエルインジェクションを採用したため、キャブ仕様最大の90ccモデルは現在でも高い人気を持続しています。

キースターが開発している燃調キットは、純正キャブレターのセッティングやオーバーホールに必要なパーツをパッケージ化して、機種ごとに設定しているのが特長です。

一般的な手段でキャブレターの内部パーツを購入する際は、パーツリストからメインジェットやフロートチャンバーガスケットなど必要なパーツの部品番号をピックアップして注文しなくてはなりません。そのためには自分が乗っているバイクのパーツリストを入手して部品番号を調べなくてなりません。

それに対して燃調キットは、C90もしくはスーパーカブ90という機種名を頼りにキットを探し、購入すれば、そこにはメインジェット/パイロットジェット、ジェットニードル/ニードルジェット、ジェットホルダーやフロートチャンバーガスケットなど、分解整備やセッティングに必要な要素をすべて手に入れることができます。

なかでもキャブセッティングの必需品であるパイロットジェット/メインジェット/ジェットニードルのサイズ違いを揃えているのは、燃調キットならではのセールスポイントです。

バイクメーカーが新車開発時にキャブレターの仕様を決める際は、エンジンだけでなくエアクリーナーボックスからマフラーまですべて純正状態でセッティングを行います。しかし経年変化や吸排気系カスタムによって新車状態からバランスが変化すれば、本来ならキャブレターの再セッティングも必要です。

ただ、新車を開発するバイクメーカーでは使用過程で発生する変化まで想定していないため、交換用のジェット類は用意していません。

したがって、そうした場面でスパークプラグの焼け具合を確認しながら、混合比を調整できる燃調キットが役に立つのです。

5種類あるスーパーカブ90用燃調キットの中から、年式とキャブレター号機に合わせてキースター品番FH-5790Nキットを使用。これは型式HA02に対応する製品だが、HA02自体は新設計の85ccエンジンを搭載した1980年モデルから最終型まで継続して用いられた型式で、PB5KAというキャブレター号機から燃調キットを選択した。

キャブレターのフロートチャンバーにある燃料コックに差し込まれる2本のホースは、上がリザーブで下がオンとなる。つなぎ方を逆にすると、レバーONでリザーブ分のガソリンを使ってしまい、いざレバーをRESにした時にタンク内のガソリンが空になってしまうので要注意。外す際には目印をつけておこう。

コックを通過したガソリンは、コックカブのストレーナーでゴミを濾過した後、フロートバルブを通ってフロートチャンバーに入る。濾過されたゴミはコック下部のカップに溜まるので、オーバーホール時は外して洗浄する。

燃料コックに挿入されている白いカップ状のストレーナーを取り外して洗浄する。その先端には脱落防止用のOリングがあり、これは燃調キットにも含まれている。

燃料コックは2本のビスでフロートチャンバーに固定されており、合わせ面にはOリングが入っている。レバー部分はカシメで固定されており、分解できない。

年式やフレーム番号だけでなく、キャブレター号機の確認が重要

1968年に発売されたC90から、最後にマイナーチェンジされた2002年モデルまで、スーパーカブ90は時代によって数々の仕様変更を受けてきました。それに応じてキャブレターも細部が変わっています。

前述の通り、キースターの燃調キットは機種名で購入できるのが最大の特長ですが、それゆえにロングセラーモデルに関しては年式や型式を正しく把握することが重要です。

その手がかりになるのが、キャブレター本体に刻印された“キャブレター号機”です。スーパーカブのエンジンや車体は頑丈で、何度も整備されたり、カスタムベースとして使われることが多く、手軽に改造できるため、フレームとエンジンの年式が合っていない車両も存在します。またフレームとエンジンが合っていても、本来とは異なるキャブレターが装着されている場合もあります。

そうした事態に備えて、スーパーカブシリーズのような長寿モデルの燃調キットでは、型式に加えてキャブレター号機も併記しています。

具体的は、1968年に発売されたC90用/1976年のK3(キャブレター号機PB25A)用/キャブレター号機PB25D用/キャブレター号機PB48用/2001~2002年型(キャブレター号機PB5KA)用の5種類のスーパーカブ90用燃調キットを開発しました。

キースター C90(スーパーカブ90)の燃調キットラインナップ

これらはユーザーの皆さんからのリクエストや市場に存在する台数を想定するなどして製品化したものです。したがって、愛用しているスーパーカブ90のキャブレターのオーバーホールやセッティングをしようと思った時は、必ずキャブレター本体に刻印されているキャブレター号機を確認してください。

車体の年式と合っていなくても、過去に純正パーツの流用で交換されている可能性もありますし、キット内容はキャブレター号機によって異なりますので、フレーム番号やエンジン番号よりキャブレター号機を優先して選択してください。

フロートピンを抜いてフロートとその中央にぶら下がるニードルバルブをセットで取り外す。フロート側に油面調整板がないので、フロートゲージで測定する油面が規定値から外れている場合、フロートとニードルバルブをセットで交換する。

7mmのメガネレンチでメインジェットホルダーを固定しながら、メインジェットをマイナスドライバーで取り外す。ジェットの頭をなめないように、キャブレター用のマイナスドライバーの使用をお勧めする。次にメインジェットホルダー自体とパイロットジェットも取り外す。セッティングを行う場合はメインジェットとパイロットジェットを交換するが、清掃やオーバーホールの際はメインジェットホルダーやその奥にあるニードルジェットも取り外す。

オーバーフローを引き起こすバルブシートはボディと一体式なので要注意

オーバーホールでもセッティングでも、キャブレターにとって“油面”がもっとも重要であることは繰り返し説明してきました。

フロートチャンバー内でガソリンがどの程度貯まっているかによって、ジェットセッティングとは別に混合比の濃い薄いが変わってくるからです。

そこで重要な役割を果たすのが、フロートニードルバルブとバルブシートです。ガソリンタンクからフロートチャンバー内に流れ込むガソリンは、ニードルバルブがフロートと連動して正しく動き、バルブシートと接触したり離れたりすることで断続され、油面が安定します。

フロートが十分に浮いてもバルブが閉じなければ、ガソリンは流れ続けて油面が上昇し、オーバーフローにつながります。ニードルバルブは経年劣化によって摩耗することがあるため、燃調キットにはキースターが開発した耐アルコール性ゴムを使用したAAニードルをセットしています。

しかし、ニードルの相手となるバルブシートは、スーパーカブ90に装着されているPBキャブレターはボディ一体式で交換できないため、注意が必要です。

バルブシートが取り外せるキャブレターの場合、燃調キットにバルブシートが含まれており、バルブシートが圧入されて一般的には交換できないとされているケーヒン製キャブレター用にもバルブシート蘇生キットを用意しています。ただし現在ラインナップを拡充中のため、すべてを網羅しているわけではありません。

しかし、このキャブレターはボディ本体に直接加工をしており、バルブシートという部品自体が存在しません。そのため、取り扱いの誤りや長期放置による腐食などでニードルバルブと接するバルブシート面にダメージがあると、最悪の場合はキャブレター自体が使えなくなる場合もあります。

分解前からオーバーフロー症状がある、オーバーホールしてニードルバルブを交換してもオーバーフローが改善しない場合には、バルブシートの状態を確認してみてください。

なおこのキャブレターは、スーパーカブ50やホンダモンキーAB27用などと同様に、フロート自体に調整板がないため、油面の調整ができないことも覚えておきましょう。

このキャブレターのバルブシートは、着脱タイプでも圧入タイプでもなく、ボディに直接加工してある。そのため、ニードルバルブとの当たり面に傷やダメージがあると交換や修正が難しいため、再使用できないこともある。ニードルバルブの当たり面の清掃は、粒度の細かい金属磨きを塗った綿棒で優しく擦る。

綿棒先端の丸い筋がバルブシート周辺の汚れ。清掃後にバルブシートをのぞき込んで、打痕や傷がないことを確認しておこう。

ジェット類を取り外した状態で、泡タイプのキャブレタークリーナーをスプレーして全体を洗浄。外側からスプレーするだけでなく、ジェット類を外した小さな穴からも吹き付けて、ボディ内部の汚れを溶かしながら落とす。クリーナー使用後はパーツクリーナーでよくすすいでエアを通して、詰まりがないことを確認する。筆者はワイズギアのヤマルーブ スーパーキャブクリーナーを愛用している。泡状で汚れに密着し続けてくれるので、汚れが落ちやすい。

燃調キットのメインジェットホルダー(奥)とニードルジェット。ニードルジェットはジェットホルダーに押されてキャブレターボディに固定されていて、ホルダーを外すと簡単に抜ける。長期放置車両ではワニスが接着剤代わりになって張り付いている場合もあるので、その際はスロットルバルブを引き抜いたキャブ上部から、ピンポンチを挿入して押し出す。

取り付け時は、先にニードルジェットを入れておいて、メインジェットホルダーのネジを締めながらベンチュリー内に押し出す。ニードルジェットは取り付け方向が決まっており、先端が凹状の端部がベンチュリー内に出るようにする。

ジェットセッティングとともにゴムパーツの交換も。オーバーホールにも重宝する燃調キット

キースターの燃調キットは純正パーツでは入手が困難な仕様が異なるジェットやニードルが揃うのが特長ですが、それと同時にパイロットスクリューやOリングなどオーバーホールの必需パーツが揃っているのも見逃せないポイントです。

スーパーカブ90のキャブレターは、フロートチャンバーはもちろん、燃料コック/ストレーナー/インシュレーターなど多くの部分にガスケットやOリングを使用しています。

それらは経年変化によって硬化し、一度外した部品を再使用すると気密性が確保できず不調の原因になることもあるため、燃調キットで新品に交換するメリットは大きいです。

また作業を行った2001~2002年型は、当時の国内の排出ガス規制に適合させる際に、頂部がD型になった独特なパイロットスクリューを採用しています。

パイロットスクリューはアイドリングからスロットル低開度領域のフィーリングを左右する重要なパーツですが、調整するには専用工具が必要です。

そこでキースターでは、燃調キット内のパイロットスクリューの頭部をマイナス溝とすることで、一般的なドライバーで容易に調整できるようにしています。

世界中で半世紀以上親しまれてきたスーパーカブは、これからも多くのユーザーに愛用されていくことでしょう。そのスーパーカブのコンディションを維持するため、キースターの燃調キットを活用いただければ幸いです。

アイドリングとスロットル低開度領域のセッティングに重要なパイロットスクリュー。多くの場合、スクリューの緩み防止用スプリングの先にはワッシャーとOリングが入っているが、中には純正でそれらの部品を使っていない機種もある。何度か分解された形跡があるこのキャブには、ワッシャーもOリングもなかった。

パイロットスクリュー調整は、キャブセッティングにとって重要であるとともに、排気ガス中のCO/HC値への影響も大きいため、高年式モデルではユーザーがむやみにいじらないよう、通常のドライバーが使えない頭部形状を採用した例もあった(左)。キースターでは一般的なマイナス溝のパイロットスクリューにすることで(右)、必要に応じたセッティングを可能にしている。

燃調キットのパイロットスクリューにはワッシャーとOリングが付いているので、それらを組み込んだ上でスクリューを取り付ける。スロットルバルブ全閉のアイドリング時は、エンジンの吸入負圧が最大になる。パイロットスクリューは吸入負圧の影響を受ける場所にあり、ネジ部分を通じて外気を吸う二次空気吸い込みの原因となることもある。そのため、スクリューの先端部分のOリングでシールするのだ。

先端のテーパー部分がロックするまで軽く締め付け、そこから戻して調整する。戻し回転数は1・1/2~2回転の間で設定されていることが多い。それより締めるとアイドリング時の混合気が減少し、緩めると増加する。もし3回転戻さないとアイドリングしないようなら、現状のパイロットスクリューのサイズが小さすぎる可能性があるので、番数を大きくする。

バルブシートを綿棒で清掃して、燃調キットのニードルバルブを使用すれば、オーバーフローを起こすことはないはず。ただしフロートに調整機能がないため、油面がズレている場合はフロート自体を交換するしかない。

フロートチャンバーとキャブレターボディの合わせ面からのガソリン滲みや漏れは、旧車や絶版車でありがちなトラブルだ。その理由は経年変化によるガスケットの痩せ。燃調キットには弾力十分のガスケットやOリングが付属しているので、各部のガソリン漏れやエアの吸い込みをシャットアウトできる。

キャブレターボディのトップキャップからピストンバルブを外すと、ジェットニードルを取り外すことができる。画像にはないが、スロットルスプリングでニードル右側のM字型の金具を押さえることで、ニードル抜けを防いでいる。

ジェットニードルは、スロットル開度1/4~3/4あたりの混合気に影響する。スロットル開度1/2あたりで走行した際にカブリ症状があれば、ストレート系の太いニードル(SからLに)に変更し、パンチ感がない場合は細いニードル(SからRまたはRR)に変更する。

エンジンや吸排気系がノーマルなら、まずはスタンダードサイズのジェットやニードルを装着してテストしてみよう。パワーフィルター装着やマフラー交換をしていても、セッティング変更が必要か否かはエンジンを含めた全体のバランスで決まるので、スタンダードセッティングで始動/走行して、スパークプラグの焼け具合を確認してからジェット類の交換を行う。


※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。