インディアン「チャレンジャー」 デザイン責任者インタビュー

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●文/まとめ: 河野正士 ●写真:インディアンモーターサイクル ●BRAND POST提供:インディアンモーターサイクル[ポラリスジャパン]

パフォーマンスを求めたクルーザー。それが「インディアン・チャレンジャー」だ

チャレンジャーは、インディアンモーターサイクル(以下インディアン)が’20年モデルとして発売を開始したモダンアメリカンクルーザーだ。チャレンジャーのために開発したインディアン初の水冷エンジン「PowerPlus(パワープラス)」は、排気量108キュービックインチ/1768cc、挟角60度のV型2気筒SOHC4バルブで最高出力122hp/最大トルク178Nmを発揮する。

このエンジンは潜在能力が高く、アメリカで行われ話題となった、大型フロントカウルとサイドバッグを持つアメリカンクルーザーモデルのカスタムスタイル=バガーマシンによって争われるロードレース選手権「キング・オブ・バガース」に、インディアンはこのチャレンジャーをベースに改造を施したレース用ファクトリーマシンで参戦。’20年の開催初年度には圧倒的速さでシリーズタイトルを獲得。2シーズン目となる’21年は、ハーレーダビッドソンのファクトリーマシンと首位争いを展開し、シリーズ2位を獲得した。そのエンジンはスタンダードのPowerPlusをベースに、レース仕様のカムと排気系、その特性に合わせてエンジンマッピングに変更した、まさにライトチューニングのエンジンだったのである。それでいながら、あの巨体をレーシングスピードで走らせることが可能なのだ。

そのエンジンをフレームメンバーとするシャーシは、アルミ製のバックボーンフレームを中心にいくつかのセクションに分かれたアルミ鋳造フレームで構成されている。そしてフロントにはSHOWA製のDVB(デュアルベンディングバルブ)倒立フォーク、リアにはFOX製の油圧プリロード調整機構付きモノショックを採用。フロントブレーキには、ラジアルマウントしたブレンボ製4ポットキャリパーと320mmブレーキディスクをダブルで装備。ボッシュ製6軸IMUを搭載し、ダイナミックトラクションコントロールとABSを組み合わせて制御する”Smart Lean Technology”を搭載している。最新のスーパースポーツモデルと同等とは言わないまでも、スポーツモデルに匹敵する車体造りと最新のテクノロジーを搭載しているマシンなのだ。

パフォーマンスを求めるアメリカンクルーザー。かつて我々日本人は「アメリカン」と呼び、広大な土地をゆったりと走る姿が刷り込まれているクルーザーに、なぜパフォーマンスが必要なのか? その疑問に、’18年にインディアンのデザイン部門の責任者に就任したオラ・ステネガルド氏が答えてくれた。

先進的で新しく可能性を秘めた市場。「チャレンジャー」でその市場に挑む

「チャレンジャーがターゲットにしたのは、アメリカンクルーザーカテゴリーのなかでも非常にプログレッシブ(先進的)な嗜好を持っている新しいユーザー層だ。長距離走行を好むのは他のクルーザーオーナーと同じだが、ハイウェイの巡航スピードはとても速く、またワインディングも好んで走る。とくにカリフォルニアには多くのワインディングがあり、そこに住むユーザーはワインディングでのスポーツ性を重視する。水冷エンジンやアルミフレーム、高いパフォーマンスを持つサスペンションや電子制御システムの採用、さらにはフレームにマウントしたフロントカウルも、すべてパフォーマンス向上のために開発し、採用したディテールだ。大型カウルやサイドバッグ、そしてトップケースを装備し、長距離を快適に走るため進化してきたアメリカンクルーザーをベースとして、カウルやバッグはそのままに、ショートスクリーンを採用してトップケースを取り除き、よりスポーティで軽快なスタイルを追求した”Bagger(バガー=バッグを持つモノ)”というカスタムスタイルは、アメリカンクルーザーカテゴリーのトレンドであり、成長を続けている新しいカテゴリーだ。そしてヨーロッパや日本においても、バガーは新しいスポーツツアラーとしての理解が進み、それに伴って市場も動き始めた。チャレンジャーを開発し発売した理由は、そのプログレッシブな嗜好を持つバガーカテゴリーで存在感を高めるためだった」

またチャレンジャーの発売は、すでにインディアンがラインナップする「チーフテン」や「ロードマスター」のように、OHV空冷V型2気筒のサンダーストローク116エンジンを搭載するクラシカルなスタイルのアメリカンクルーザーモデルとプラットフォームを分けることができ、チャレンジャーは存分に近代的な素材やスタイル、パフォーマンスを追求できたのだという。同時にクラシック路線のアメリカンクルーザーモデルもそのスタイルと品質を追求することができ、それがインディアンの新型車「チーフ」シリーズの開発と発売に繋がったのだという。

ただ、そのチャレンジャーの開発は困難を極めたとステネガルド氏は言う。

「スーパースポーツやアドベンチャーバイクのパフォーマンスを高め、それを速く走らせるのはそれほど難しくない。しかし車体が大きく、そして重いクルーザーを速く走らせるのは簡単じゃない。それに我々がチャレンジャーに求めた速さは、スーパースポーツとは根本的に違う。それはF1とNASCARの違い、MotoGPとドラッグレースの違いなどと表現した方が分かりやすいかもしれない。どちらも速いが、速さの種類が違うのだ。それとクルーザーを速く走らせるのは簡単じゃないがゆえに、その目的を達成するための過程はとても楽しい。大きくて重いバイクを速く走らせるためには、独自のノウハウを用いたチューニングが必要であり、カスタムには独自のセンスが必要であり、また独自のライディングテクニックも必要だからだ」

ショートストロークのVツインエンジンで、クルーザーに求められる高トルクを発揮する

その大きな車体のチャレンジャーを速く走らせるために、もっとも重要だったのはエンジンのトルクだったという。ワインディングで大きな車体を切り返すときも、助走区間が極端に短い高速道路での合流で一気に加速して安全に他車の流れに乗るときも、また大きく重い荷物とパッセンジャーを乗せて長距離を淡々と走りきるときも、パワーではなくトルクが必要だからだ。それはアメリカ的なパフォーマンスだが、それこそがアメリカンクルーザーの特徴であり、その分厚いトルクを実現したPowerPlusエンジンこそチャレンジャーの魅力だ、とステネガルド氏は語る。

「とても興味深いのは、これまでロングストロークが大きなトルクを発生する大きな要因だと言われていた。しかしそれはおとぎ話のようなものだ。近年、V8エンジンを積むアメリカンマッスルカーを見ても分かるとおり、そのビッグボア/ショートストロークエンジンは今や常識であり、大きなトルクを発生することで知られている。PowerPlusエンジンもビッグボア/ショートストロークだ。また排気量は108キュービックインチ/1768ccだ。発表当時、バガーとしては排気量が小さいとう意見が多数あった。ライバルたちは1800ccを越える排気量のエンジンを搭載していると。しかしPowerPlusエンジンは、我々が求めた高いパフォーマンスを十分に発揮している。水冷エンジンは、空冷エンジンに比べ、同じ排気量でも多くの出力を得ることができる。要するに、大きな排気量を必要としなかったのだ。チャレンジャーに乗ると分かると思うが、PowerPlusエンジンはフィーリングも出力特性も空冷エンジンとはまるで違う。アクセル操作に対するエンジン回転上昇のレスポンスが速いし、トルクの起ち上がりも速い。それにあのエンジンは、まだまだポテンシャルを秘めている。『キング・オブ・バガース』レースでのパフォーマンスを見れば、それは明らかだ」

ライダーの気持ちを上げるプラスα。「チャレンジャー」はそれを追求した

スタイリングにおいても、モダンが追求されている。フレームにフロントカウルをマウントする車両をCMF(シャシーマウントフェアリング)と呼び、フロントカウルとボディラインとの一体感がスタイリングの最重要課題であると同時に、ハイスピードでの高速走行やワインディング走行を実現させるための空力やウインドプロテクションも盛り込む必要がある。その開発には最新の解析機器を用いて机上計算を繰り返し、同時に実走行でカウル形状を決定。ヘッドライト周りにもテクノロジーを盛り込み、デイタイムランニングライトによってモダンな顔付きを造り上げるとともに、ライダーやパッセンジャー居住空間に適度に走行風を取り込み、快適性を高めるエアインテークがライトまわりにデザインされている。

またボッシュ製6軸IMU(慣性測定装置)も搭載し、そこで計測したデータを基にトラクションコントロールやABSなどを制御。安全性の向上も図られている。ツアラーたちの旅の目的地は遠く、そこまでの道程には悪天候や悪路もある。そのときに、すでに実績を上げているシステムを積極的に活用することは当然だとステネガルド氏は言う。だからいま現在も、新しいシステムを試し、ライダーに提供するベネフィットを検討し続けているという。

しかし同時に、バイクの開発には、魂を揺さぶるような、特別な何かをバイクに込めなければならないと言う。

「私は古いアメ車・プリムスロードランナーを長く所有している。各部はだいぶくたびれてきて、走るとあちこちからガタガタと音が聞こえるほどだ。しかしアクセルを踏み込めば、いまでもワクワクするような加速をする。そのワクワク感は、他の何物にも代えがたい。しかしそれをチャレンジャーに乗った誰もが味わうことができるよう、チーム全員で一丸となって開発に没頭した。魂を揺さぶるその感覚は、とても重要だ。最新鋭のバイクの開発では、出力やコストや納期などなどさまざまな数値目標が示され、その魂を忘れてしまいがちだ。そして数値をクリアするのは簡単だ。でも魂を揺さぶるような感覚は数字では表せないし、それを具現化するのはとても難しい。チャレンジャーには、その魂を揺さぶるプラスαを込めることができた。あらゆる製品やサービス、そして文化に対して深い造詣を持つ日本のライダーの皆さんとなら、その魂を共有できると信じている。そのためにもぜひ、チャレンジャーに乗る機会を造ってほしい。そう願っている」


※本記事はインディアンモーターサイクル[ポラリスジャパン]が提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。