
2025年10月31日、与野党6党はガソリン税に上乗せされている1L当たり25.1円の暫定税率を12月31日に廃止することで合意したとの報道があった。経由についでも2026年4月1日に廃止するという。これが国民の生活に好影響を与えることになるはずだが、一方で影響はまだ限定的だとの見方もある。
●文: Nom(埜邑博道)
補助金を段階的に上げて暫定税率廃止へと繋ぐというが、年末までに無理なく実施できる?
このコラムでも何度も取り上げてきたガソリンの暫定税率が、ついに廃止される見通しとなりました。
自民、日本維新の会、立憲民主、公明、国民民主、共産の6党が国会内で協議して、今年の12月31日に暫定税率を廃止することで合意し、各党の党内手続きを経て、週明けにも正式に合意するということです。
1974年に道路整備のための財源として導入されたガソリン・25.1円、軽油・17.1円を本来の税金に上乗せする暫定税率が50年のときを経て、ついにというか、やっとなくなるのです。
また、廃止までのつなぎ処置として、1Lあたり10円安くなるように出している補助金を5円ずつ段階的に増やしていき、11月13日から15円に、11月27日から20円、11月22日からは暫定税率と同じ25.1円にし、それから3週間後の12月31日に補助金を止めて暫定税率の廃止に切り替えるといいます。
この廃止によって、ガソリン代は現状よりも1Lあたり15円程度(すでに10円の補助金が出ているので25.1円ではない)安くなる見込みだそうですが、果たしてそんなに簡単に下がるものなのでしょうか。ガソリン販売店からは、高い価格で仕入れたガソリンの在庫はどうしたらいいんだという苦悩の声も聞こえています。もちろん、早いに越したことはありませんが、石油元売りに支払われる補助金で段階的に下がっていく仕入れ価格と小売店の在庫期間、販売価格のバランスは2か月で無理なく着地できるのでしょうか。年内の廃止ありきで進行してしまっている感もあります。
また、軽油にかかっている暫定税率も廃止される(こちらは4月1日と報道)ことで、高止まりしている宅配便などもろもろの運送費の値下げなども期待されていますが、こちらもそううまくいくのかはなはだ疑問です。
というのも、今日現在、1ドル150円を超えている円安の影響がガソリン/軽油価格の高止まりの大きな要因だからです。
原油価格自体は1バレル60ドル前後で落ち着いた推移をしているようですが、このまま円安に歯止めがかからず、さらに進行するようだと、暫定税率廃止によって安くなる25.1円を食い潰してしまうかもしれません。
また、軽油代の下落で期待される運送費の値下げも、多くの運送業者からは人手不足の解消のために従業員の待遇改善に充てたいという声が聞かれますから、運送代への直接的影響は少なそうです。
暫定税率廃止は当然、喫緊の課題は円安の改善だ
バイク、クルマのユーザーにとって悲願だった暫定税率の廃止ですが、現在はそれを手放しで喜べるような経済環境にはありません。
女性初の総理大臣である高市政権が誕生して、多くの国民が期待感を持ってその政策を見つめている現在、まだまだ国民の期待に応えるような経済対策案は十分とは言えません。国民民主が強く訴えてきた暫定税率廃止は実現するようですが、もうひとつの大きな命題であった年収の壁の問題はどうなるのでしょうか。
また、自民党はこれまでの公明党との連立を破棄して、新たに日本維新の会との連立を決めましたが、維新の吉村代表が唱える「議員定数の削減」は必要だとは思いますが、それがたちまち我々国民の生活改善に結びつくようには思えません。
日本の基幹産業である自動車の輸出は、円安効果で大きな利益を得ているなど、円安がすべての面で悪影響を及ぼしているわけではありません。とはいえ、1ドル150円を上回る円安は、一般消費者が日々購入する生活物資に幅広く大きな影響を与えてしまっています。
そう考えると、円安の是正による経済対策こそが、いま多くの、というかほとんどの国民から求められている政府の施策ではないでしょうか。
ではどうすれば円高傾向に振れるのか。
筆者には専門的なことは分かりませんが、円安を招いているひとつの要因は日米の金利差とのこと。先日も、アメリカFRBは利下げによって景気を下支えするのが妥当だと判断して、政策金利を0.25%引き下げ、3・75~4%とすることを決めました。 利下げは前回の9月に続くものですが、日銀は10月30日の金融政策決定会合で、政策金利である短期金利の誘導目標を0.5%程度で据え置くことを賛成多数で決めており、さらに日米の金利差は開いています。
住宅などのローンを抱えている方々は、現在の超低金利が続くことを望んでいるでしょうけれど、円高が緩和されることによる物価の下落による日々の出費の削減と天秤にかけたらどちらがいいのでしょうか。
また、暫定税率廃止による税収減を補う代替財源についても諸説出ていますが、国民民主の榛葉幹事長が安定財源の確保策として自動車関係諸税を増税することに反対の姿勢を示したそうです。これ以上バイク/クルマユーザーから税金をむしり取ろうというのはさすがに看過できません。
榛葉幹事長は「ガソリン減税をしておいて、自動車ユーザーから違う税金を取るのは駄目だ。本末転倒だ」と強調し、「年末の抜本的な税制改正でしっかり議論すればいい」と述べたそうですが、その方針でブレずに突き進んでいってほしいものです。
とまあ、念願の暫定税率廃止ですが、まだまだ問題は山積み。来週の国会で、細部が分かってくるようですが、まだまだ予断は許さない状況が続きそうです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 多事走論 from Nom)
片山財務大臣が走行距離課税は検討していないと明言! この発言の持つ意味はとても大きい 11月12日の参議院・予算委員会で、国民民主党の榛葉幹事長の「走行距離課税はやりませんよね」という質問に対し、片山[…]
トランプ関税はバイクの世界にも影響があるのか、国内各メーカーに聞いてみました 世界中に吹き荒れている「トランプ関税」の深刻な影響。 特に、自動車に課されることになった15%の相互関税は日本の自動車メー[…]
暫定税率を廃止するなら代わりにって…… 与野党が合意して、11月からの廃止を目指すことになったガソリン税の暫定税率。 このコラムでも数回取り上げてきましたが、本来のガソリン税28.7円/Lに25.1円[…]
対策意識の希薄化に警鐘を鳴らしたい 24年前、当時、編集長をしていたBiG MACHINE誌で「盗難対策」の大特集をしました。 この特集号をきっかけに盗難対策が大きな課題に そして、この大盗難特集号は[…]
もっと早く登場するはずだったCB1000F 今日、鈴鹿サーキットをホンダが開発中のCB1000Fコンセプトというバイクが走ります。 大人気で、ロングセラーだったCB1300シリーズが生産終了になったい[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
きっかけは編集部内でのたわいのない会話から 「ところで、バイクってパーキングメーターに停めていいの?」 「バイクが停まっているところは見たことがないなぁ。ってことはダメなんじゃない?」 私用はもちろん[…]
原動機研究部が原付通学環境整備のため講習会を開催 2025年7月13日(日)、静岡県伊豆市修善寺虹の郷において、地域クラブ「原動機研究部」(略称:原研)主催による「高校生対象 原付バイク安全運転講習会[…]
片山財務大臣が走行距離課税は検討していないと明言! この発言の持つ意味はとても大きい 11月12日の参議院・予算委員会で、国民民主党の榛葉幹事長の「走行距離課税はやりませんよね」という質問に対し、片山[…]
白バイ隊員の主な装備 オートバイが好きな方であれば一度は、白バイの装備や白バイ隊員の制服ってどうなっているんだろうって思ったことがあるのではないかと思います。私も警察官になる前は興味津々で、走っている[…]
1.生徒にアンケート調査!<免許取得と車両の購入> 坂本先生は、本年7月に北杜高校の生徒を対象に安全意識に関するアンケート調査を行った。対象は原付免許を持つ2.3年生の生徒100名と、小学校時に自転車[…]
人気記事ランキング(全体)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
止められても切符処理されないことも。そこにはどんな弁明があったのか? 交通取り締まりをしている警察官に停止を求められて「違反ですよ」と告げられ、アレコレと説明をしたところ…、「まぁ今回は切符を切らない[…]
ライバル勢を圧倒する抜群のコーナリング性能 ’80年代初頭のヤングマシン紙面には何度もRZが登場しているが、デビュー当初のRZ250の実情を知る素材としてここで選択したのは、’80年11月号に掲載した[…]
寒暖差が大きくても着替えずに対応できる! ワークマンのヒーターウエア『WindCore(ウインドコア)』シリーズは、電熱ヒーターを内蔵する防寒アイテム。別売りのバッテリー(4900円)は必要だが、もの[…]
最新の投稿記事(全体)
戦闘力を高めるヘッドギア「ダインギア ヘッドアーマー」 クロスカブ110の個性をさらに際立たせ、カスタムの方向性を決定づけるほどの高いデザイン性を持つパーツが登場した。それがダイバディプロダクションが[…]
粘り強い100mmボアビッグシングルと23Lタンク KLR650の心臓部は、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンだ。排気量は652ccで、ボア径はなんと100mmにも達する超ビッグシングルと[…]
きっかけは編集部内でのたわいのない会話から 「ところで、バイクってパーキングメーターに停めていいの?」 「バイクが停まっているところは見たことがないなぁ。ってことはダメなんじゃない?」 私用はもちろん[…]
ワールド経験者と全日本ホープが加入! FIM世界耐久選手権(EWC)を戦っているTeam Étoile(チーム・エトワール)が2026年のライダーラインナップを12月12日(金)に発表しました。 2[…]
まさかのAMTをクラス初採用 BENDAやヒョースンなど海外メーカーがV型2気筒モデルを投入する一方、日本車ではホンダの単気筒・レブル250が孤高の地位を築く軽二輪(250cc)クルーザーカテゴリー。[…]






































