カワサキMACHシリーズ【1969~1975】:鮮烈な印象を放った名2スト車の系譜

カワサキMACHシリーズ【1969~1975】:鮮烈な印象を放った名2スト車の系譜

ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。


●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU

過激な初代からフレンドリーな後継モデルへ

カワサキのビッグバイクと言えば、優れた資質を備える初期型をベースにして、2代目以降で徐々に動力性能を高めていくのが通例だ。だがマッハシリーズの場合は、初期型がもっともパワフルかつ過激で、2代目以降は扱いやすさを重視。

500SSはそれが顕著で、大幅刷新を受けた‘72年型以降は、かなりフレンドリーな特性になっていた。

KAWASAKI 500-SS MACH IIIの変遷

1969:H1

アップハンドル仕様しか存在しなかった750SSとは異なり、500SSは仕向け地によってフラットバーやセミアップハンドルを採用。

1970:H1

当初はホワイトのみだったH1のカラーリングだが、後にグレーとレッドが登場。’70年型は点火用ディストリビューターカバーの形状を変更し、防水用ゴムキャップを追加。

1971:H1A

’71年型として登場したH1Aでは、特徴的なガソリンタンク側面の凹みを廃止。同時にグラデーションのデカールを導入したが、日本ではH1と同様のストライプ仕様も併売された。

1972:H1B/C

H1Bから導入が始まった油圧式ディスクブレーキとφ36mmフォークは、兄貴分の750SSと共通の装備。日本仕様の点火システムは、欧州仕様と同じポイント式に改められた。

1973:H1D

主要諸元を刷新(最高出力:60→59ps、軸間距離:1400→1410mm、キャスター:29→27度、重量:174→185kg)したH1Dは外装も新作。点火は750SS譲りのマグネトーCDI。

1974:H1E

Z1/Z2を筆頭とする4スト4気筒に対するマイナス要素を減らすためか、H1Eは振動対策としてエンジンをラバーマウント化。その他にもオイルラインや足まわりの刷新を実施。

1976:H1F

潤滑系統の見直しを受けているものの、H1Fの基本構成はH1Eと共通。なおH1Fの後継として‘76年に登場したKH500は、最高出力が52psで、最高速は178km/hだった。

KAWASAKI 750-SS MACH IVの変遷

1972:H2

初期の750SSはリヤまわりが異様にスッキリしているが、実用性を重んじる欧州仕様はメッキ仕上げのリアフェンダーを装備。当初はオプションだったが後に標準化した。

1973:H2A

2年目の750SSはFフェンダーをメッキ化し、ポートタイミングやキャブセッティングの見直しで最高出力が74→71psに低下。ただしこの件については、初代の終盤から、H2Bからと諸説あり。

1974:H2B

新作のテールカウルとシートが印象的なH2Bは、軸間距離を1435 → 1448mmに延長。H2B以前は192kg(205kgと記載する資料もある)だった乾燥重量は、209kgに増加した。

1975:H2C

シリーズ最終型となったH2Cは燃料タンクとシートを刷新。クランクケースやクラッチも改良を受けている。なおH2BとH2Cは輸出専用車で、日本では販売されなかった。

KAWASAKI MACH III(1969)/IV(1972)主要諸元比較

主要諸元カワサキ 500-SS マッハⅢ(1969)カワサキ750-SS マッハⅣ (1972)
全長(㎜)20952080
全幅(㎜)840850
全高(㎜)10801145
軸間距離(㎜)14001410
シート高(㎜)
車両重量(㎏)174192
燃料タンク容量(ℓ)1517
エンジン種類空冷2サイクル並列3気筒ピストンバルブ空冷2サイクル並列3気筒ピストンバルブ
内径×行程(㎜)60× 58.871 × 63
圧縮費6.87.0
総排気量(㏄)498㏄748cc
最高出力60ps / 7500rpm74ps / 6800rpm
最大トルク5.85kg-m/ 7000rpm7.9kg-m/ 6500rpm
変速機形式5段リターン5段リターン
キャスター/トレール29°/ 110㎜28°/ 114mm
ブレーキ前/後ドラム/ドラムディスク/ドラム
タイヤサイズ前/後3.25-19 / 4.00-183.25-19 / 4.00-18
発売当時価格29万 8000円36万 5000円

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