
ホンダは、中国で開催中の重慶モーターサイクルショーで、ミドルクラスの新型4気筒エンジン搭載モデル「CB500 SUPER FOUR」を発表した。既報の通り商標が出願されていた車名での登場だが、こちらもお伝えしてきたように日本では「CB400 SUPER FOUR」の商標が出願されている……!
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
新設計の4気筒・502ccエンジンにEクラッチを搭載!
ホンダは、中国で開催中の重慶モーターサイクルショーにて新型モデル「CB500スーパーフォア(CB500 SUPER FOUR)」を世界初公開した。その姿は、先行してコンセプトモデルが公開されている「CB1000Fコンセプト」と同イメージのフレディ・スペンサーカラーをまとっているが、ボディラインは2022年10月に生産終了となったCB400スーパーフォアのDNAを色濃く感じさせるものだ。
詳細なスペックなどは未発表なので、入手できた情報と写真素材からわかるものについて解説していこう。
Honda CB500 SUPER FOUR[China model]エンジンがコンパクトになったことで旧CB400SFよりもスイングアームはだいぶ長くなっているが、ホイールベースは目測で1400~1420mm程度。シート高は755mmの旧CB400SFよりもやや高く見えるが、足着きを考慮したシート高の数値やシートまわり形状になると見てよさそうだ。
まず車名は前述のとおり「CB500 SUPER FOUR(以下CB500SF)」で、エンジンは並列4気筒DOHCだ。排気量については502ccとの情報だが、出力については未発表。トランスミッションは6速を採用していることが確実なほか、Eクラッチ(Honda E-Clutch)を標準採用しているとの情報を得た。
面白いのは、これまでのCB650R/CBR650Rやレブル250がクラッチユニットのあるエンジン右側にEクラッチの駆動ユニットを搭載していたのに対し、CB500SFはエンジンの左側にEクラッチ駆動ユニットを搭載していること。
新設計の502cc・並列4気筒DOHCエンジン。
シリンダーの前傾角は旧CB400SFとほとんど同じに見える。3軸の配置はCB650Rに似て見えるがシリンダーはCB650R比でやや起きており、別のエンジンだろう。バランサーを搭載しているのかも注目だ。
前者はクラッチカバー側にレリーズ機構があり、これを同軸で駆動するべくクラッチカバーにEクラッチユニットが融合するような形になっているのだが、CB500SFはドライブスプロケットの上あたりにEクラッチユニットが搭載されている。
クラッチカバー側にレリーズ機構を持たせるのはシンプル化によるコストダウンやメンテナンスの容易さといったメリットが考えられるが、これにEクラッチを搭載するとなるとクラッチカバーの外側に弁当箱のようなEクラッチユニットが鎮座することになる。
そこで、おそらくCB500SFはレリーズを車体中心側か、あるいは車体の左側にレリーズ機構を配置することで(プッシュロッド機構は必要になるかもしれないが)、Eクラッチユニットをよりコンパクトかつ目立たない位置に配置できるようにしているのだろう。
まるで油圧クラッチのレリーズのような位置にEクラッチユニットを配置。ただしCB500SFのクラッチはワイヤー式だ。
つまり、これまでのEクラッチ仕様車は既存の完成されたエンジンにEクラッチを搭載してきたのに対し、CB500SFのエンジンははじめからEクラッチ搭載を前提に設計されたのではないか、ということになる。
また、Eクラッチの制御もこれまでより一段レベルアップしているはず。というのも、CB500SFは電子制御スロットル(スロットルバイワイヤ=TBW)を採用しているからだ。
これによりシフトダウン時にブリッピングすることが可能になり、従来は短い半クラッチで制御していたのに対し、より短い時間かつスムーズなシフトダウンが可能になるはずだ。シフトアップに関しては大きく変わらないものと思われるが、より進化した走りを提供してくれそうだ。
注目の水冷4気筒エンジンは、以前のCB400SFのようなシリンダーフィンは設けておらずソリッドな形状に。写真を見る限りでは吸気ポートのストレート化を促進するダウンドラフト気味のスロットルを採用しているようだ。燃料タンク容量は不明だが、タンク下側の後半部分にエアボックスを配置しているように見える。
右側から見た写真だと向こう側にEクラッチユニットが見える。クラッチバスケットの裏側というかエンジン中心型にクラッチケーブルが伸びているようだ。TBWはダウンドラフトでマウントされている模様。
エンジンの主要3軸は三角形配置とされ、さすがに1980年代の基本設計に源流を持つ従来のCB400SFとは隔世の感だ。オイルパンもバンク角による油面の変化を避けることができ、オイルポンプへの安定したオイル供給に有利な、下側に向かって尖った形状に。これを避けるように取りまわされたステンレス製と思われるエキゾーストパイプは、往年のドリームCB400FOUR(いわゆるヨンフォア)を彷彿とさせる流麗なラインを描く。
おそらくは、これにトラクションコントロール(ホンダセレクタブルトルクコントロール)などを統合したライディングモードも実装されるだろう。
スチール製ダイヤモンドフレームを採用
新作エンジンを搭載するフレームは、シートレールまで一体になったスチール製ダイヤモンドタイプだ。
旧CB400SFがダブルクレードルフレームを採用し、エンジン下部までパイプが回っていたのに対し、新作はエンジンを剛性メンバーとして使いながらフレームをコンパクト化。上から吊り下げるような取りまわしになっているのが特徴だ。シートレールはボルトオンタイプではなく溶接で組み上げられており、部品点数や溶接工数を減らすことでコストダウンや軽量化に貢献している。
ちょっと気になるのは前側のエンジンマウント部分。入手した写真を見る限り、フレームに直マウントではなく、ラジエターよりもハミ出した形状のガセットをひとつ噛ます構造のようなのだ。これは部品点数の増加という意味でやや不利であり、剛性コントロールという点でもメリットがあるのかどうか……。
ここから考えられるのは、まずメンテナンス性を向上するためにエンジンを取り外しやすくしたということ。あるいは、このメインフレームを使用した別のバリエーションモデル展開(同時発表のCBR500R FOUR以外にという意味)や、シリンダー高の異なるエンジン(排気量違い、あるいは気筒数違い??)を搭載できるように調整シロを設けているのでは、ということだ。
ボルトを片側で3本要している前側のエンジンマウント。
もちろん、このCB500SFを日本向けに仕立て直した新CB400SFの登場はもはや既定路線と見ていいはずだが、それ以外にも何かがあるのか、野次馬根性が旺盛なヤングマシンとしては勘繰らずにはいられない。
もうひとつフレームで気になるのは、ステップのマウントプレートが写真ではそこそこ出っ張っているように見えることだ。ヒールグリップのしやすさを考えると、このあたりはフレームとフラットになるような形状にしたいところだが、これはフレーム製造時の加工のしやすさなどとバランスを取ったのだろうか。
このほか、ピボットの下にはセンタースタンド用のボスも備えている(ちょっと小さいか……?)ようなので、オプションで用意される可能性がある。
シートレールは溶接されているタイプ。タンデムステップやステッププレートはアルミ製だ。
アルミ製のステップにスチール製と思われるペダルを組み合わせている。立ちゴケなどで曲がったときに戻しやすいメリットがある。センタースタンド用のボスらしきものやリヤサスペンションのリンクも見える。
車両左側もエンジンハンガーは同様の構造だ。これまでのEクラッチに比べるとエンジンの一部として無理なく収まっているのもわかる。クラッチレバーはワイヤー式で、レバー自体にアジャスターはないがワイヤの遊び調整はできるので手の小さいユーザーでも問題ないだろう。エキゾーストパイプの取りまわしやオイルパンの形状にも注目。
プロリンク式リヤサスペンションと倒立フロントフォーク!
リヤサスペンションは、旧CB400SFのツインショックに対しシングルショック化され、プロリンク式に。デザイン性や掃除のしやすさなどではツインショックに軍配が上がるものの、走行性能においてはリンク式モノショックのほうが圧倒的に有利なことから、順当な採用といえるだろう。
フロントフォークは写真では見えないもののKYB製との情報もあり、中国生産における調達のしやすさなど総合的な判断からの採用か。こちらも走行性能においては旧CB400SFの正立フロントフォークとは比べるべくもなく、カチッとした剛性感と足元の軽やかなハンドリングを夢想させる。
アルミ製と思われるロングスイングアームは鋳造タイプだろう。前後ホイールの形状はCB750ホーネットやCBR400Rのものとよく似ている。
スイングアームはアルミ製のようで、これにショートタイプのインナーフェンダーを組み合わせることで見た目のガッシリ感も演出している。
前後ホイールはCB750ホーネットのものと同形状のようで、フロントブレーキディスクのマウントもスポークに直付けの同じタイプに見える。一方でディスクは前後とも真円タイプを採用しており、これにABSを組み合わせている。フロントのラジアルマウントキャリパーはニッシン製だ。
そしてタイヤは台湾のCST製で、サイズはCB750ホーネットと共通の前120/70ZR17、後160/60ZR17を履く。
フルLEDの灯火類に5インチTFTディスプレイ採用
メーターは旧CB400SFのようなアナログ砲弾型ではなく、CB1000Fコンセプトとマウントが共通と思われる5インチTFTディスプレイを採用。もちろんスマートフォン連携機能も搭載するはずだ。どうしても砲弾型メーターが欲しいという向きには、CB1000F向けにパーツメーカーが開発しているという砲弾型カバーもいずれ登場するはず。
電子制御スロットル=TBWを採用。APSはけっこうコンパクトに見える。マスターシリンダーは水平タイプでブレーキレバーはアジャスター付き、ハンドルバーはアルミ製テーパード形状。メーターは太陽光の反射も考慮した取り付け角度だ。ダブルホーンはフラッグシップCBの血統。
灯火類はフルLEDと見られ、ウインカーは細身のものでボディはCB1000Fコンセプトらと共通のものだろう。ヘッドライト形状は新設計のように見え、また海外SNSなどでシェアされている写真などを見ると丸型2灯のテールランプ(NSR250Rを思わせる?)も新設計だろう。
燃料タンクはマッチョな雰囲気も併せ持った、旧CB400SFの息吹を感じさせる形状に、往年のフレディ・スペンサーカラーを組み合わせ、そのラインの中に“SF”のロゴが描かれる。サイドカバーにはCB500 SUPER FOURの車名ロゴも。
シートカウルはシュッとした形状だがイキ過ぎてもない絶妙なライン。ツインショックではなくなっても違和感がないように適度な厚みを持たされている。また、大型のグラブバーなどを取り付けられるようにするためか、タンデムシート左右の上面には取り外せそうなキャップがある。
新CB400スーパーフォアも御願いします!
前述のように、日本国内向けには「CB400 SUPER FOUR」の商標が出願されており、排気量を日本市場に合わせ込んだ新型CB400スーパーフォアの登場は必至。スタイリングなどはほとんどこのままで登場することになるだろう。
中国発表モデルでは、このほかにブラックおよびレッドもラインナップされる。
日本における登場時期は、2026年春のモーターサイクルショーで初お披露目、夏以降に正式発表という流れが予想できる。
CB500SFの詳細スペックを含め、続報が入り次第お伝えしたい。震えて待て!
日本仕様の新型CB400スーパーフォアが登場した暁には、このスペンサーカラーもラインナップ必至か。
ショー会場には歴代CB400スーパーフォアを並べ、ホンダCBの正統後継車であることをアピールしていた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | 新型ヘリテイジ/ネオクラシック)
これぞCBだ! そう直感的に思えるライダーの視界 跨った瞬間に「CBだ!」と思えた。視界に入る燃料タンクの大きな面積や両腿の内側に感じる存在感、そして昔で言う“殿様乗り”が似合う大きくアップライトなラ[…]
デザイン刷新&Eクラッチ採用の2024年モデルからカラーバリエーションを変更 ホンダは欧州で、2024年モデルのマイナーチェンジでデザイン変更とEクラッチ(Honda E-Clutch)搭載仕様の追加[…]
スーパースポーツ譲りのエンジンと幅広いシーンに対応する車体 CB1000Fは、ホンダの代表的なプロダクトブランド「CB」のフラッグシップモデルと位置づけられている。 スーパースポーツモデルのエンジンを[…]
多くのカラーパターンを採用するCB350C、特別な2色のスペシャルエディション ホンダはインドでCB350C(日本名:GB350C)を発表した。これは前年に登場したCB350を名称変更したもので、従来[…]
CBで戦うことにロマンがあった ’91年の東京モーターショーに参考出品されたCB1000SFのプロトタイプを見たときは、純粋に「カッコイイ!」と衝撃を受けた。そして’92年に市販版が出るや早速手に入れ[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | 新型ネイキッド)
2025年3月の東京モーターサイクルショー以降、何かと話題のCB1000F!! いよいよかと色んな噂が飛び交っているなか、某日、各パーツメーカーのカスタマイズコンセプトがひっそり発表されました。カスタ[…]
1000に負けない元気のよさ 1月発売の1000に続いて750にも新しいホーネットが登場した。1000の方は乗ってみて、まあ元気のいい走りが印象的だったんだけど、この750もそれに負けず元気がいい。エ[…]
車重217kgに600ccクラスの動力性能 2週間前の9月2日に、欧州で「EV FUN Concept」の走行テスト映像を公開したばかりのホンダが、その量産バージョンのブランニューモデルを発表した。ホ[…]
気負うことなくスポーツできる! 国内モデルの125ccスポーツは、新車だと安くても40万円前後。物価高が続く昨今、とくに若者にはなかなか手が出しにくい。そんな中、23万8千円という価格で登場したのが「[…]
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
人気記事ランキング(全体)
火の玉「SE」と「ブラックボールエディション」、ビキニカウルの「カフェ」が登場 ジャパンモビリティショー2025でカワサキが新型「Z900RS」シリーズを世界初公開した。主軸となる変更はエンジンまわり[…]
KATANAというバイク 一昨年のこと、キリンと同じ年齢になったことをキッカケにKATANA乗りになったYです。 ノーマルでも十分乗り易いKATANAですが、各部をカスタムすることで、よりカタナ(GS[…]
外観をスタイリッシュにリニューアルしたトリシティ125 前回のトリシティ300に続き、今回試乗を行うのも前2輪を持つLMWシリーズのトリシティ125。ちなみにLMWとは、リーニング・マルチ・ホイールの[…]
グランプリレースの黄金時代が甦る! 1970年代~80年代にかけて伝説的なアメリカンライダーのケニー・ロバーツ氏が走らせたYZR500は、イエローのストロボライン(ヤマハは現在スピードブロックと呼称)[…]
最新の投稿記事(全体)
入れないとどうなる?フロントフォークのオイル はいどうも、みなさんこんにちは。本日は愛車DT50のフロントフォーク定期メンテナンスをやっております。 トップのキャップボルトを外してカラーを取り出して、[…]
水素燃焼エンジンとは? ヤマハ発動機がJMS2025で世界初公開した「H2 Buddy Porter Concept(エイチツー バディ ポーター コンセプト)」は、気体水素を燃焼して走行する水素エン[…]
電動車ならではのレイアウトの自由度の高さを活かした新設計の二輪駆動EVバイク「EV OUTLIER Concept」世界初公開 10月30日(木)から11月9日(金)まで東京ビッグサイトにて開催されて[…]
JMS2025のダンロップブースに出現 世界中で人気のアドベンチャーバイクだが、地域によって走行シチュエーションは異なり、日本国内ではほとんどオンロード専用ツアラーのように振る舞っているのに対し、欧米[…]
グランプリレースの黄金時代が甦る! 1970年代~80年代にかけて伝説的なアメリカンライダーのケニー・ロバーツ氏が走らせたYZR500は、イエローのストロボライン(ヤマハは現在スピードブロックと呼称)[…]
- 1
- 2























































