約15万円の価格上昇にも納得?!

電サス&6軸IMUでよりスポーティに駆け抜けろ! ホンダ「NT1100」2025年モデル試乗インプレッション

電サス&6軸IMUでよりスポーティに駆け抜けろ! ホンダ「NT1100」2025年モデル試乗インプレッション

2022年にアフリカツインのエンジン&メインフレームを使う高速ツアラーとして登場したNT1100。2025モデルはスタイリング変更とともに電子制御サスと6 軸IMUを新装備。走りがよりスポーティに進化したぞ!


●文:谷田貝 洋暁 ●写真:富樫秀明 ●外部リンク:ホンダ

“快適”と“スポーツ”を電サスで無理なく両立!!

超絶的な防風性にAT機構のDCT、グリップヒーターやコンフォートシートなどの快適装備。長距離を走るツアラーとして“疲れにくさ”にトコトンこだわったNT1100。国内モデルで断トツの楽さ加減は新型もなんら変わりない。その上で話を進めさせてもらいたい。

従来モデルで感じた不満は唯一、“スポーツ”できなかったこと。というのも車両重量は250kg近いのだが、アフリカツイン由来のフレーム&エンジンを持つNT1100は走ると軽快さが際立ち、ついついスロットルをワイドオープンしたくなる。

Showa EERAをゲット!!

新たに搭載された電子制御サスペンションは、アフリカツインなどですでに実績のあるSHOWA EERA(イーラ)。ダンピングに関しては各モードに「TOUR(H/ハード)」、「URBAN(M/ミディアム)」、「RAIN(S/ソフト)」が固定で振り分けられている。「USER 1/2」では、このダンピングのパラメーター変更に加え、前後それぞれのダンピング調整、リヤショックのプリロード調整が24段階で行える。

【リヤサスはもうグリグリしなくていい!】旧型はダイヤル式のプリロード調整機構だったが電サス化したことで、ボタン操作(停止中はタッチパネル)で「1人」、「1人+荷物」、「2人」、「2人+荷物」の変更が走行中も可能になった。

【アウター色がブロンズに】電サス化に伴いアウターチューブはブロンズカラーに変更。また前輪後部のマットガードは150㎜もの延長を行なってハネ防止を強化。ホイールトラベル量はF/Rともに150mmで変更はない。

即応性の高いセミアクティブサスペンションなので、ソフトなダンピングモードでも、急激なサスの沈み込みがあった場合には一時的に減衰力を強めて底突きを防ぐ。

USERモード1/2では、これまでどおり「パワー(P)」、「エンジンブレーキ(EB)」、「トルクコントロール(T)」のパラメーターが変更可能。加えてサスペンションの前後個別の減衰力調整やプリロード量の詳細設定もできるようになった。

ただそうすると“快適性のためのソフトサス”や“タル目なDCTのシフトスケジュール”が気になり出し、「ああ、そうだよね。君はツアラーだったね。ゴメンゴメン」なんて気分になり、実際、これだけ走りが軽快なのにスポーティに走れないのはもったいない……そんな試乗記をどこかの二輪雑誌に書いた。

ところがである。新型は電サスを装備したことで“快適”と“スポーツ”の矛盾が一挙解決。走行モードを変えるだけでサスのキャラも激変。さらにはプリロードまでピピっとタッチパネルで変更できるのだからたまらない。旅先の峠道で思う存分スポーツできるようになっている。

さらに6軸IMUを獲得したことで、これらの電子制御装備が全てコーナリングや加減速の変化に対応できるようになった。このIMUの恩恵で最も感心したのはDCTのシフトスケジュール、特にアップ制御だ。最もスポーティな設定で走ると、コーナー進入時のシフトダウンで2速一度に落とす場合にはパドルスイッチでの操作が必要になるものの、立ち上がりでは“マシンが直立するかしないかの絶妙なタイミング”でDCTがシフトアップを入れてくる。これが実に気分爽快!!

新型は、ツアラーとしての極上の快適性に加え、スポーツ性まで手に入れたというわけだ。確かに約15万円プラスは大きな価格アップだが、1台で快適ツアラーとスポーツバイクが手に入ると思えば納得である。

【DCTがIMUとリンク!】DCTの制御が6軸IMUとリンクしたことによって、ブレーキや車体の傾きを加味してシフトスケジュールを組むように進化。「TOURモード」でDCT制御を「S3」にすると、コーナー脱出時のシフトアップが気持ちよくキマる。

車両重量249kg。分類で言えば大型ツアラーに入るNT1100だが、820mmのシートのおかげで踵が数cm浮く程度の良足着き性。しかもシフト操作がなく、足の踏み替えが必要ないDCTは足着きのアドバンテージがとても大きい。【●身長172cm ●体重75kg】

2025年モデルは+15万4000円

2022年3月の発売以来、大きなモデルチェンジは初。海外では電サス&DCT仕様の他、MTモデル、電サス非搭載モデルなどもラインナップするが国内では電サス&DCT 仕様のみ。価格は2023モデルからは+15万4000円。

主要諸元■全長2240 全幅860 全高1340~1510 軸距1535 シート高820(各mm) 車重249kg(装備) ■水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 1082cc 102ps/7500rpm 11.3kgm/5500rpm 変速機形式6段(DCT ) 燃料タンク容量20L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:184万8000円 ●色:灰、黒

ガンメタルブラックメタリック

マットウォームアッシュメタリック

ウインカーをビルトイン!

DRLを含むヘッドライトまわりのデザインを一新。より小顔化してシュッとしたデザインになっているが、一番の変更点は、ウインカー(オートキャンセル)がヘッドライトユニットにビルトインされたことだ。またスクリーンやディフレクターの形状も旧型とは異なる。

従来型はウインカーがヘッドライト横にマウントされるが、新型は一体型に。

ヘッドライトをハイビームにして全点灯し、ハザードを光らせた状態。DRLへの切り替えは自動と手動が選べる。

前が見やすくなった!

最大13°、5段階調整が可能なスクリーンの形状及び取り付け方法が変更され、高さの調整幅が+3mmの167mmに。また、これまでの両手でスクリーンを持って変更する調整方式から、メーター左サイドにあるノブを使う方式に変更された。つまりバイクに跨ったまま片手で高さを調整できるようになったのだ。走った印象ではスクリーンを一番上まで上げた場合の視界が旧型よりよくなった。

スクリーン形状が変わるとともに、調整幅や調整のしやすさも向上。

シート座面が20%増

ライダーシートの座面後部の形状を変更したことによりクッションを減らさずに座面が20%増えている。写真ではわかりにくいが、お尻に当たる面の凹みがより大きく取られたようだ。…が、記憶にある旧シートの感触と違いがあるか?と問われても正直不明。ただ新旧どちらも快適であることは間違いない。

電子制御サスペンションなどの新装備で重量増となるものの、軽量なリチウムイオンバッテリーを採用することで車量重量は+1kg増の249kgに留めた。しかも搭載するバッテリーはアフリカツインやCBR1000RR-Rで実績のあるエリーパワー製ではなく、スカイリッチ製を積んでいてビックリ!

’24アフリカツインと同様の変更を受け圧縮比が10.5に。数値的には102psの最高出力は変わらず、最大トルクの発生回転数が750rpm下がり、数値も10.6kg-mから11.3kg-mへとアップ。またDCTに関しては発進、Uターンなど低速域の制御を見直している。ただ走らせて旧型との一番の違いを感じたのは、DCTのシフトスケジュールだ。ブレーキなどの加速度やコーナリングアングルを加味したシフトチェンジを行うようになり、特にアップ側はより自然なフィーリングになっている。

クルコン、グリップヒーター、避風性の高いスクリーンに快適なシートなどなど。長距離を楽に移動したいならコイツで決まり!! タンデム時の操安性もよかった!

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。