
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
動力性能を高めるためエンジンを大幅刷新
カフェレーサー然としたスタイルばかりに注目が集まりがちだが、CB400フォアの魅力はそれだけではない。前任に当たるCB350フォアの不振を払拭するべく、動力性能の向上を目指した改革も行われているのだ。もっとも、その改革のほとんどはパワーユニットに集中しており、シャシー関連部品の大半はCB350フォアからの流用、あるいは小改良仕様だった。
開発ベースとなったCB350フォアに対して、CB400フォアのエンジンは、ボアをφ47→51mmに拡大し、408ccの排気量を得ている。
ただしそれ以外にも、吸気バルブの拡大(φ22→23mm)、圧縮比の向上(9.3→9.4:1)、シリンダーの刷新(大型化されたフィンが7→8枚となり、同時にピッチを9→8mmに短縮)、ミッションの5→6速化、クラッチ容量の拡大、キャブレターボディの変更など、改良点は多岐に及んでいた。
なお日本の中型免許対策として’76年に登場した398ccモデルは、排気量を400cc未満に抑えるにあたり、51mmのボア径はそのままに、1.2mmショートな48・8mmストロークのクランクを新作している(CB350フォアと408ccモデルのクランクは基本的に共通で、ストロークは50mm)。
こういった対策は、普通はボアダウン=ピストン径の縮小で行うものだが、理想のフィーリングを追究して408ccモデルを生み出した開発陣は、何としてもショートストロークのボア×ストローク比を維持したかったのだろう。
ENIGINE:ホンダならではの400cc並列4気筒
CB400フォアのエンジンはCB350フォアがベースで、CB350フォアの設計に影響を及ぼしたのが’71年に登場したCB500フォア。そしてその流れを遡ると’69年型CB750フォアに行きつくのだが、ウェットサンプの潤滑やハイボチェーン式の1次減速、シリンダーヘッドカバーに固定されるロッカーアームなどは、長兄とは異なるミドルCBフォアならではの特徴。
いずれのエンジンも4軸構成だが、長兄とミドルCBフォアでは、ミッション軸の回転方向が逆になる。
【メインボアを楕円から真円に変更】キャブレターはケーヒンPW20。型式はCB350フォアと同じだが、ベンチュリーは楕円の22×20 →真円の20㎜に変更。エアボックスにはブローバイガス還元装置を新規採用。
【革新的な手法を導入した量産車初の集合マフラー】三恵技研が製造を担当した排気系の内部には、2つの膨張室と3枚のセパレーターが設置されている。この頃までのマフラーは上下分割のモナカ合わせが一般的だったが、CB400フォアは1 枚の鉄板をロールで巻いて製作。
FRAME&CHASSIS:シャーシは先代の基本を踏襲
セミダブルクレードルフレームや丸パイプのスイングアームなど、シャーシの基本はCB350フォアと共通。
集合マフラーやショートリヤフェンダーの採用、前後ショックカバーの廃止、グラブバーの簡素化などを考えれば、CB400フォアの車重は劇的に軽くなっていそうだが、当時ホンダが公表した装備重量は、CB350フォアからプラス1kgの185kgだった。
フロントフェンダーもCB350フォアと共通だが、開発時にはステーなしの樹脂製も検討されている。
バックボーンパイプが1本なので、シリンダーヘッドやキャブの整備は気軽に行える。
【プレス素材の背骨は’70年代ホンダ車の定番】’70年代のホンダ車のフレームは、背骨となる部分にプレス素材を用いるケースが多く、CB500/550フォアやCB250/350も同様の構成を採用していた。逆Y字型のダウンチューブは、エキゾーストパイプの取り回しの自由度に大いに貢献。
【足まわりはオーソドックス】ブレーキは当時の250 ~ 400ccスポーツの一般的な構成で、F:φ260mmディスク+片押し式1ピストンキャリパー、R:φ160mmドラム。専用設計されたφ33mmフォークは、減衰力発生機構にフリーバルブを導入。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ENGINE:世界最速を目指してたどり着いた型式 ヤマハやスズキのような“専業メーカー”ではなかったけれど、’54年から2輪事業への参入を開始したカワサキは、基本的に2ストロークを得意とするメーカーだ[…]
初の2ストGPマシンNS500を応援するホンダファンは3気筒のエンジンのMVX250Fに目が釘づけ! 1979年、ホンダは世界GP復帰宣言で500ccの4ストロークV型4気筒(当初はオーバルピストン3[…]
多岐にわたる仕様変更が行われた9年間 9年に及んだ生産期間中の仕様変更は多岐に及んでいる。ただしそのおもな目的は、最高出力や最高速の向上ではなく、扱いやすさや安全性に磨きをかけることだった。 1969[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
まめなオイル管理が、良コンディションを維持できる秘訣 新型スーパーカブが発表されて以降、新型のシリーズモデルは、週末に限らず、毎日のように街中で見かけるようになった。軽く気ままに走ることができるモデル[…]
初の2ストGPマシンNS500を応援するホンダファンは3気筒のエンジンのMVX250Fに目が釘づけ! 1979年、ホンダは世界GP復帰宣言で500ccの4ストロークV型4気筒(当初はオーバルピストン3[…]
デザイン刷新&Eクラッチ採用の2024年モデルからカラーバリエーションを変更 ホンダは欧州で、2024年モデルのマイナーチェンジでデザイン変更とEクラッチ(Honda E-Clutch)搭載仕様の追加[…]
多岐にわたる仕様変更が行われた9年間 9年に及んだ生産期間中の仕様変更は多岐に及んでいる。ただしそのおもな目的は、最高出力や最高速の向上ではなく、扱いやすさや安全性に磨きをかけることだった。 1969[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
人気記事ランキング(全体)
デザイン刷新&Eクラッチ採用の2024年モデルからカラーバリエーションを変更 ホンダは欧州で、2024年モデルのマイナーチェンジでデザイン変更とEクラッチ(Honda E-Clutch)搭載仕様の追加[…]
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
電子制御CVTにより街乗りもスポーティ走りも思いのまま! ヤマハは、インドネシアや日本に続いて新型スクーター「NMAX155」を欧州市場に投入する。これまでNMAX125のみラインナップ(一部地域では[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
最新の投稿記事(全体)
重点的な交通取締り場所は決まっている 安全運転を心がけていても、パトカーや白バイの姿を目にすると、必要以上にドキッとしたり、速度メーターを確認したりするといった経験がある、ドライバーやライダーは少なく[…]
ENGINE:世界最速を目指してたどり着いた型式 ヤマハやスズキのような“専業メーカー”ではなかったけれど、’54年から2輪事業への参入を開始したカワサキは、基本的に2ストロークを得意とするメーカーだ[…]
ハンドルまわりだけでも用語はたくさん 「いつかは旧車に乗り、自分専用のカスタムをしたい」と、憧れを抱いている筆者。その夢を叶えるためには、ひとつの大きなハードルがあったりする。そもそも、各部の名称や役[…]
まめなオイル管理が、良コンディションを維持できる秘訣 新型スーパーカブが発表されて以降、新型のシリーズモデルは、週末に限らず、毎日のように街中で見かけるようになった。軽く気ままに走ることができるモデル[…]
電子制御CVTにより街乗りもスポーティ走りも思いのまま! ヤマハは、インドネシアや日本に続いて新型スクーター「NMAX155」を欧州市場に投入する。これまでNMAX125のみラインナップ(一部地域では[…]
- 1
- 2