実はメリットありすぎ!? 原付バイクの「ミニカー登録」化

実はメリットありすぎ!? 原付バイクの「ミニカー登録」化

クルマの免許で乗れる原付一種は手軽さが魅力だが、時にその制約に歯がゆい思いをすることもある。じつは原付でも、特定の規定を満たせば、さまざまな恩恵を受けられる「ミニカー」として登録することができるのだ。一体どんなメリットをもたらしてくれるのか、該当する法令も交えながら詳しく見ていこう。


●文:ヤングマシン編集部

ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる

まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱い。ところが一方で、道路運送車両法では「原動機付自転車」扱いだ。この違いを踏まえると、ミニカーは下記のような定義となる。

  • 総排気量: 20ccを超え50cc以下。
  • 定格出力: 0.25kWを超え0.6kW以下。
  • 輪距: 左右のタイヤの接地面の中心と中心の距離が0.5m(500mm)を超える三輪以上の車両であること。ただし、車室を有する場合は、輪距が0.5m以下でもミニカーに該当する場合がある。

つまり一般的な原付一種の場合、三輪化という高いハードルがあるものの、ホンダのジャイロシリーズ(ジャイロXやジャイロキャノピーなど)であれば話は別。ノーマル状態では原付扱いだが、ワイドホイールやワイドタイヤを装着してトレッド(輪距)を500mm以上に広げる改造を施すだけで、ミニカーとして登録変更できるのだ。

【HONDA GYRO-X】後2輪がスイングするスリーターは荷物積載力に優れ、配達や駐車に便利なワンタッチパーキングレバーを装備。「X」はフロント5kg/リヤ10kg積載可。基本の「ベーシック」と風防/リヤキャリア装備の「スタンダード」があり、カラーは赤/白の2種。雨の日も快適な屋根付きの「キャノピー」は、30kg積載でカラーは白。現在では電動版のジャイロe/キャノピーeも展開されている。

ミニカー登録がもたらすさまざまなメリット

原付バイクがミニカーとして登録されることで、その使い勝手は劇的に向上する。とくに下記の5点は、ライダーにとって大きな魅力となるだろう。

法定速度が最大60km/hに向上!

原付バイクの法定速度は30km/hと定められているが、ミニカーは道路交通法上「普通自動車」扱いとなるため、一般公道での最高速度は60km/hまで許容される。これにより、他の自動車の流れに乗ってスムーズに走行できるのだ。

二段階右折が不要!

原付バイクには、片側3車線以上の交差点などでの二段階右折義務があるが、ミニカーは普通自動車扱いのため、この二段階右折の義務から解放されるのだ。

第一通行帯(左側車線)通行義務が不要!

片側2車線以上ある道路では、原付バイクは原則として一番左の車線(第一通行帯)を走行しなければならないが、ミニカーは中央の車線でも走行できるため、車線選択の自由度が格段に上がるのだ。法定速度の向上もあり、交通の流れに合わせた走行が可能というわけだ。

ヘルメットの着用義務がなし!

これもミニカーの大きな利点のひとつ。道路交通法上、ミニカーは普通自動車扱いのため、ヘルメットの着用義務がないのだ。

これらに加えて、ミニカーは原動機付自転車扱いであるため、車検を受ける必要がなく、重量税も不要という原付一種のメリットも引き継いでいる。軽自動車税は年間約2000円程度(地域により異なる)で、自賠責保険も原付と同様の扱いでとても安価なのだ。さらに、車庫証明も不要なため、手軽に所有できる。

さらに原付より多少大きくなっているとはいえ、ミニカーは長さ2.5m以下、幅1.3m以下、高さ2.0m以下ととてもコンパクトなサイズ。都市部の移動において取り回しがとても良い。駐車スペースも小さくて済むのも魅力だ。

もっとも運転には普通自動車免許(AT限定でも可)が必要になるという点だけは注意。クルマを持っていて、とりあえずバイクも乗ってみたいと思って原付一種を所有していた人であれば、ミニカー化してもそのまま乗れるので心配は不要だ。

ミニカー登録、4つのデメリットと注意点

もちろん、メリットばかりではない。原付一種からの登録変更ということを考えば当たり前のことばかりだが、一応押さえておこう。

高速道路・自動車専用道路は走行不可

排気量から考えれば当たり前だが、高速道路や自動車専用道路は走行不可だ。あくまで近距離の移動手段と割り切るべきだろう。

航続距離や居住性に制限あり

コンパクトなボディゆえに燃料タンク容量も小さく、長距離移動には不向き。積載量も必要十分ではあるが、90kg以下と制限が設けられている。

衝突安全性は高くない

シートベルトの装備義務がなく、先進安全装備も備えていないため、軽自動車などと比較すると衝突時の安全性能は劣る。着用義務がないとはいえ、安全のためにはヘルメットを着用しておいたほうが無難だ。スピードの出しすぎにも注意しよう。

登録時の解釈が自治体によって異なる場合あり

ミニカーへの改造申請は市区町村で行うが、自治体によって解釈が異なり、必要な書類や条件が異なる場合がある。改造前後の写真添付を求められることもあるため、事前に各役所に確認しておこう。

いいとこ取りのミニカーは新たな選択肢

ミニカーは、原付バイクの経済性と普通自動車の利便性を併せ持つ、まさに「いいとこ取り」の存在。都市部での通勤や近距離の移動手段としては、とても魅力的な選択肢となるだろう。とくに、ノーヘルの自由や二段階右折からの解放は、原付ライダーにとっては夢のような話だ。

ただし、どんなに便利な乗り物でも、安全運転は大切。法定速度が上がったからといって無謀な運転をしないように。ミニカーの特性を理解し、賢く活用することで、楽しいバイクライフもといモビリティライフを送ろう。

カワサキが展開する「noslisu e」のように最初からミニカー登録になる車種もある。個性的なモデルが多いので、そちらを選ぶのも手だ。

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