日常の危険を知ろう

避けては通れない横断歩道の白線。滑りやすいのはなぜ? 滑りにくくする対策は進んでる?

避けては通れない横断歩道の白線。滑りやすいのはなぜ? 滑りにくくする対策は進んでる?

横断歩道をはじめとする路面標示の白線。雨の日ともなれば、「白線の上でタイヤが滑った」という経験を持つライダーも少なくないだろう。果たして白線は本当に滑りやすいのか、そしてなぜ滑るのか、さらにその対策は進んでいるのか。その疑問を紐解いていこう。


●文:ヤングマシン編集部

 白線が滑りやすいのは事実。その原因は?

まず、道路の白線が滑りやすいのは紛れもない事実だ。路面標示用塗料メーカー10社で構成される路面標示材協会によると、白線の滑り抵抗性は湿潤時で40〜50BPNとされている。一方で、アスファルト舗装の湿潤時滑り抵抗性は40〜70BPN。両者を比較すれば、路面標示部分が明らかに滑りやすいということがわかる。

そのうえを路面接地面積が名刺1枚分しかないといわれるバイクが通れば、当然影響はうけやすい。急ハンドルや急制動時をしようものなら、スリップだってしかねないのだ。

そもそも、なぜ白線は滑りやすいのかといえば、白線に使用されている「トラフィックペイント」と呼ばれる特殊な塗料、そしてその塗料に求められる性能に起因している。

横断歩道など一般道路の白線には、JIS(日本産業規格)で定められた「JIS K 5665」という種類の粉体塗料を用いることが規定されている。このトラフィックペイントに最も求められる性能は、どんな時でも「見える」という「視認性」と「耐久性」だ。

日夜、数十トンものトラックに踏まれ、エンジンオイルなどの化学製品にさらされても簡単に消えない耐久性。そして夜間や雨天時でもドライバーがはっきりと白線を認識できるよう、光を反射する「ガラスビーズ」というガラスの粉末が塗料に含まれている。

このガラスビース自体は摩擦係数を高めるものの、白線の上をクルマやバイクが通り続けることで徐々に磨かれて劣化。摩擦係数が下がっていき、さらに雨天時ともなれば、塗膜とタイヤの間に水の膜ができてハイドロプレーニング現象を発生しやすくしてしまうのだ。

白線は進化し続けている

この白線の滑りやすさは塗料メーカー各社にとっても大きな課題。改善に向けた研究・開発は日夜進められている。

例えば、2010年代には表面形状を工夫した「ハイスペック白線」が登場している。これは、不規則な凹凸を設けたり、規則的なスジ(グルービング)を入れたりすることで、表面に水が溜まりにくくし、排水性を向上させたもの。

これにより、凸部が水面から出て光を反射しやすくなり、視認性も高まるというメリットを実現した。実際に、アトミクス社の「レインフラッシュグルービー」のような製品では、従来の滑り抵抗値41BPNに対し、縦方向で57BPN、横方向で54BPNへと大幅な向上が報告されている。

他にも大粒のガラスビーズを混ぜることで表面をボコボコさせる方法や、ガラスビーズに加え塗料の上に特殊な表面処理を施すことで夜間の反射輝度を高める技術なども実用化されている。

これらの改良されたトラフィックペイントは、1989年の建設省告示「雨天(夜間)時に視認できる区画線の開発」で評価され、様々なタイプが実用化されてきた。

しかしながら、これらの「ハイスペック白線」がまだ広く全国に普及しているわけではないのが現状だ。その理由としては、視認性、耐久性、コストパフォーマンス、そして環境性能といった多岐にわたる性能との兼ね合いがあり、滑りにくさだけを優先できないといった背景がある。

そのため、現在普及しているのは重大事故の発生率が高かったり、交通の要所であったりする場所がほとんど。滑りにくい以前に、危険な場所ばかりなので気を付けて走るに越したことはないのだ。

ライダーができる対策は基本を徹底すること

だからこそ、我々ライダーが白線でのスリップ事故を避けるために最も重要なのは、まず「路面標示の白線は滑りやすいものである」という認識を常に持つことだ。当たり前のことだが、下記のような基本を徹底することが安全なライディングにつながる。

「急」のつく操作を避ける

白線の上では、急ハンドル、急アクセル、急ブレーキといった「急」のつく操作は、スリップのリスクを劇的に高める。特に横断歩道では、歩行者や他の車両との兼ね合いで急操作が必要になる場面もゼロではない。日頃から常に余裕を持った速度と車間距離を保ち、丁寧な操作を心がけよう。

タイヤの溝をきちんと確認する

バイクの命ともいえるタイヤの溝がしっかり残っているか、そして路面状況や季節に適したタイヤを装着しているかを確認することも、安全走行の基本中の基本だ。

技術だけでは改善できないのが、世知辛い現実。現状を知って、安全安心なバイクライフを送ろう。

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