
ジウジアーロデザインの独創的な意匠に身を包んだ、国産唯一の量産ロータリーエンジンマシン、スズキRE-5。497ccのシングルローターを採用し、全域でスムーズな回転とフラットなトルク特性を発揮。1974年からの2年間で約6000台程度が生産された。四輪ではマツダが有名だが、やはり採用車は少ないロータリーエンジン。そんな変わり種バイクについて、さっそく詳しく見ていこう! ※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
スズキRE-5 概要:”スズキの本気度”が伝わる高出力モデル
ドイツの発明家ヴァンケル氏が考案したロータリーエンジンは、ピストンの往復運動により動力を生み出す従来方式のエンジンに対して、ローターが回転することで動力を得る。
サイズをコンパクトに抑えることができ、ストローク型と比べると低振動で、さらに従来の4ストよりも高出力が得られるという特徴があった。
ヤマハが1972年の東京モーターショーで発表したロータリーエンジン搭載のプロトタイプモデル、RZ201が幻のマシンとして歴史の影に消えた一方で、スズキは翌年の同ショーにて日本発の量産ロータリーバイク「RE-5」を発表。
スズキは1970年にNSU/ヴァンケル社とロータリーエンジンの技術提携を行い、独自の開発改良を繰り返していたのだ。デザインはイタルデザインのジウジアーロとくれば、スズキの本気度がわかるはず。
こうして開発コンセプト通りの「レシプロ750ccに匹敵する性能を有するツーリングモデル」が完成した。
しかしオイルショックによる市場の冷え込み、またロータリー特有の燃費の悪さが要因となり、わずか6000台程度の生産で幕を閉じることになった。
【1974 SUZUKI RE-5】
スズキRE-5の主要諸元
- エンジン種類:USバンケル水冷1ローターペリフェラルポート式
- 総排気量:497cc
- 最高出力:62ps/6500rpm
- 最大トルク:7.6kg-m/3500rpm
- 車重:230kg
- タイヤ:F=3.25H19 R=4.00H18 ※輸出モデル
1973年の東京モーターショーに出展された、国産量産車初となるロータリーエンジン搭載RE-5。写真は1973年の東京モーターショーの様子。
スズキRE-5のエンジン
独自のメッキ処理や材質の工夫で、ロータリーエンジン特有のハウジング内部の異常磨耗に対応。
ローターを油冷、ハウジングを水冷にするなど、耐久性だけではなく熱対策も完璧に行われた。
排気温度の上昇に対しては、マフラーを二重構造とし、前方から空気を取り入れることで冷却するなどの工夫を採用。
排気に関しても冷却方式が徹底的に工夫された。
スズキRE-5の詳細
初期形は茶筒と呼ばれる円筒形のメーターを採用。メインキー操作で、カバーが電動で自動的に開閉した。
テールランプもメーターと合わせるように、茶筒型の円筒形デザイン。ロータリーを意識したジウジアーロならではのこだわり。
初期形のみに採用された円筒形のメーター。
テールランプも円筒形デザインを採用。
スズキRE-5の系譜
1975年の後期型(最終形)となるRE-5Aは、その特徴的だった茶筒と呼ばれる円筒型メーターハウジングやテールランプが、一般的なスタイルの2連メーターと角形テールランプへと変更されている。
【1976 SUZUKI RE-5A】
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
スズキ バンディット400:GSX-Rのエンジン流用ネイキッド 59psというクラス最強のパワーを持ち、1984年に華々しく登場したGSX-R。 レーシーに設定されたこのマシンの心臓部の実用域を強化し[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
スズキGSX-R250:過激さ控えめ“アールニーゴー” 1983年のGS250FWでクラス初の水冷DOHC4気筒を開発したスズキ。 しかし、4バルブエンジンの投入は遅れを取り、1987年のGSX-R2[…]
スズキGSX-R400R:ダブルクレードルにフルモデルチェンジ GSX-Rは、1990年に3度目のフルチェンジを敢行。新設計エンジンに加え、φ33mmダウンドラフトキャブや倒立フォークまで備えた。 フ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
未知の領域だった大型スポーツバイク市場 第二次大戦後の’48年に創立したにもかかわらず、’60年代初頭には欧米の古豪を抜き去り、販売台数で世界一の2輪メーカーになっていたホンダ。もっとも当時の主力機種[…]
2ストロークで大型フラッグシップの高級路線へ挑戦! ホンダが1968年にCB750フォアで世界の大型バイク・メーカーに挑戦を開始すると、スズキも高価格で利益の大きなビッグバイクへのチャレンジを急いだ。[…]
「世界初の量産250ccDOHC水冷4気筒エンジン」が生み出す最上の乗り味 1983年3月。デビューしたてのGS250FWに乗った印象といえば「速い!というよりすべてがスムーズ。鋭い加速感はないけど必[…]
人気記事ランキング(全体)
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
古いゴムは硬化するのが自然の節理、だが・・・ ゴム部品は古くなると硬くなります。これは熱・酸素・紫外線などによる化学変化(酸化劣化)で、柔軟性の元である分子の網目構造が変化したり、柔らかくする成分(可[…]
初の電動スクーターが「C evolution」 2017年、BMWモトラッドは初の電動スクーター「C evolution(Cエボリューション)」を発売。それまでのガソリンエンジンを搭載したC650に通[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
多くのカラーパターンを採用するCB350C、特別な2色のスペシャルエディション ホンダはインドでCB350C(日本名:GB350C)を発表した。これは前年に登場したCB350を名称変更したもので、従来[…]
最新の投稿記事(全体)
高機能ジャケットから防寒パンツまで多彩なラインナップ 朝晩の冷え込みに、本格的なツーリングシーズンの到来を感じるこの頃。バイクウェアの老舗ブランド「クシタニ」より、2025-26年秋冬モデルの新作テキ[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは、[…]
芦ノ湖スカイラインとは? バイク乗りに人気の理由 富士山の麓に点在する富士五湖のひとつ、芦ノ湖は箱根の人気観光地ですが、湖の西側の尾根に沿って通じているのが芦ノ湖スカイラインです。 全長約10.7km[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
- 1
- 2