
1958年に誕生したホンダ「スーパーカブC100」から最新の「スーパーカブC125」に至るまで、基本的なスタイリングと操作方法は大きく変わっていない。ほかにもスーパーカブ110、スーパーカブ50などあるが、一般的なモーターサイクルと何か違いはあるのだろうか?
●文:ヤングマシン編集部
65年前に独自の車体構成で誕生したスーパーカブ
今から67年前の1958年に誕生したスーパーカブC100は、ホンダ創業者の本田宗一郎氏と専務の藤澤武夫氏が先頭に立って、欧州への視察などを通じて新機軸の二輪車を作るべし! と開発した、日本を代表するオートバイだ。ホンダの原点である大衆的な小型車としてモデルチェンジしながら長く愛され、2017年10月には世界生産累計1億台に達した。
そんなスーパーカブシリーズは、最新のスーパーカブC125やスーパーカブ110/50(およびPRO仕様)、クロスカブ110/50、CT125ハンターカブに至るまで、シリーズ一貫してハンドル左手側にレバーが装備されていない。また、一般的なバイクの燃料タンク位置に何もないのも特徴だ。
そんな独特のカタチをしているスーパーカブ、初めて乗るとどんなことを感じるのだろうか?
1)左手のところにレバーがない!
スーパーカブ系が採用する自動遠心クラッチは、クラッチレバー操作不要で発進~変速~停止までできるのが特徴だ。これが理由でクラッチレバーを装備しておらず、またリヤブレーキは右足のフットペダルで操作するため左手側にレバーがないのだ。
通常のモーターサイクルと同じ右足リヤブレーキを採用しているのは、初代スーパーカブが1958年に誕生した際、お蕎麦屋さんの出前が岡持ちを持ちながら片手で運転できるようにという配慮もあったと言われている。また、同様の理由から当時はウインカースイッチも右手側にあった(現在もビジネス用途モデルには継承)。
レバーを備えているのは右手側だけだ。 ※写真は海外向け仕様
2)じつは逆シフト!
一般的なモーターサイクルは、左足側のステップの前にシフトペダルがあるが、スーパーカブは前だけでなく後ろにも踏むところがあるシーソー型。シフトアップもシフトダウンも、前または後ろのペダルを上から踏むことで行う。
ここで一般的なバイクから乗り換えて戸惑うかもしれないのは、前側を踏み込むと1速に入り……というところまでは同じだが、シフトアップするにはさらに前側を踏み込む必要があるということ。シフトアップでペダルをかき上げる一般的なバイクとは逆の動きになるので、慣れるまでは間違えてしまうことも。
3)自動遠心クラッチだけどマニュアル操作もできる!?
1速に入れたらスロットルを開けるだけでクラッチが自動的につながり、発進加速でも変速でもクラッチ操作は不要なのがスーパーカブの特徴。でも、じつはチェンジペダルを踏んでいる間はクラッチが切れている状態になる構造。つまり、変速時にペダルを踏む操作がおのずとクラッチ操作にもなっている。
クイックシフターのように自動的にエンジン回転を合わせてくれる機構はないので、スーパーカブでの変速操作はこの“足の操作でクラッチが切れている”状態を利用するのだ。ここが、最初はちょっと難しく感じるかもしれない点なのである。
このシーソーペダルを駆使することでマニュアル操作っぽくできる。 ※写真は海外向け仕様
シフトアップで乱暴にペダルを踏んで離すだけだと変速ショックが大きくなるが、ペダルを少しの間だけ多めに踏んでおくことで回転を合わせる余裕が生まれる。また、シフトダウン時も同様に回転を合わせながらペダルを離すことによってシフトショックをなくすことができる。カブ系に慣れている人はこれを利用することで、ほぼ変速ショックなしにギヤチェンジをこなすことができるのだ。
また、停止時に1速に入れて意図的にクラッチを切りっぱなしにし、回転を上げてからクラッチを繋ぐことでウイリーも可能(安全な場所で自己責任で行ってください)。また、より練度が高くなれば、ダートなどグリップの低い路面ではシフトダウンとリヤブレーキの併用でハーフスライドの進入ドリフトもできるとかできないとか。
手元のレバーよりは難易度が上がるものの、チェンジペダルのそうした機構を利用することで、クラッチをマニュアルっぽく操作することができるってわけだ。
4)燃費よすぎ!
メーカー公称値では、実際の燃費に近いとされるWMTCモード燃費でスーパーカブ50が69.4km/L、スーパーカブ110が67.9km/L、そしてスーパーカブC125が67.8km/Lとなっている。
これだけでも凄いが、たとえば北海道ツーリングなど、淡々と同じ速度で平地を走り続ける環境においてはこれを超えることも珍しくない。さらに、低燃費アタックで(周囲の交通の迷惑にならない範囲で)極限まで頑張ると、100km/Lに迫ることもあるほど。じっさい、WEBヤングマシンでも『DIY道楽テツ』さんがスーパーカブ110で96.5km/Lを達成している。
ちなみにだが、ホンダが主催する「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」では、空力や転がり抵抗低減を極限まで追求した専用設計の車体とクローズドコースという特殊な環境ではあるものの、スーパーカブ系の50ccエンジンを使用して燃費性能を競い、2011年の全国大会で3644.869km/Lというとてつもない記録を達成している。言い換えれば、100km走行で消費するガソリンはたったの27.43ccということ。いやはや、とんでもない……。
5)2人乗りした感じがちょっと特殊
スーパーカブシリーズの乗車定員は2名。国内で正規販売されるスーパーカブシリーズはパッセンジャーが掴まるためのグリップが付いたスチール製リヤキャリアを標準装備しており、いちおうこのままでもタンデムは可能。ただし乗り心地はある程度の覚悟が必要だ。よりよい乗り心地を求めるなら純正アクセサリーやカスタムパーツメーカーから出ているタンデム用シートを装着するといい。
そしてちょっと面白いのが、スイングアームにタンデムステップが直付けされていること。昔のバイクでは珍しくない構造だったが、現在はスーパーカブ系など少数が採用しているのみ。これでタンデムすると、路面のうねりなどに合わせてタンデムステップが一緒に上下し、パッセンジャーの足も動く。慣れの範疇であり、別にそれで危険といったこともないが、最初はちょっと物珍しさを感じることだろう。
スーパーカブC125に純正アクセサリーのピリオンシートを装着したの図。 ※写真は海外向け仕様
なお、バイクの2人乗りは免許を取得してから1年以上が経過している必要があるなど、条件を満たしていないと違反になることは言うまでもない(民明書房刊『大江戸内燃機関大全』より)。
6)ニーグリップできない?!
スーパーカブ系は燃料タンクがシート下にあり、一般的なバイクでいう燃料タンクの場所には何もない。低い位置をフレームが通り、その下にエンジンが吊り下げられている。そんな構造のため、普通にニーグリップ(両膝でタンクを挟んで車体をホールドすること)はできない。
とはいうものの、シートの後ろのほうに座れば腿の内側でシート側面を軽くホールドすることは可能。また、両足のカカトで車体をホールドするヒールグリップは普通にできるので、最初は心もとなく感じることもあるかもしれないが、実際のところ不都合なく運転できるはずだ。
足を大きく上げることなく跨れるようにと、こうした構造になったと言われている。 ※写真は海外向け仕様
まとめ
ホンダの代表的なバイクであるスーパーカブは、1958年の初代登場から2017年10月には累計生産台数1億台に到達する、日本を代表するオートバイと言っていいだろう。その姿は街中を中心に多く見かけられ、目にしたことがないという方はかなり少数のはずだ。
ちなみに今回の5選で挙げた特徴は、スーパーカブの派生としてオフロードテイストに仕立てられたクロスカブ110/50やCT125ハンターカブにも同様のことが言える。また、同系エンジンで自動遠心クラッチを採用するダックス125についても、2人乗りの部分を除けばほぼ同様である。
なお、1958年当時は存在しなかったバイクのAT限定免許についてだが、『クラッチレバーがない=クラッチ操作が不要』ということからカブ系の自動遠心クラッチもAT限定免許で運転できる。また、同じホンダでいえばDCTを採用する大型バイクもAT限定免許に対応する。AT限定といえばスクーター……だけじゃないのである。
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