
東京湾アクアラインは通行時間帯によって交通量が大きく変化し、特に土日祝日の混雑時間帯はかなりの長時間を渋滞の中で過ごすことも。IC周辺の道路も渋滞が激しく、地元の方の悩みの種にもなっているという。そんなアクアラインの上り線についてはETC料金を時間帯によって最大2倍、最小半額に、下り線も時間帯によって小幅な割増/割引を適用する新料金制度が導入されることになった。
●文:Nom(埜邑博道) ●外部リンク:県土整備部道路計画課(千葉県)
アクアライン上り線の混雑時間帯の料金が1600円に! 2025年4月から新料金制を導入
12月3日に開催された「第4回東京湾アクアライン交通円滑化対策検討会」において、令和7(2025)年4月からアクアラインの交通需要の平準化を図るため、アクアライン割引を前提とした新たな時間帯別料金を導入に向けて調整を行うことが決定しました。
令和5年7月22日からアクアラインは渋滞緩和のためにETC時間帯別割引料金の社会実験を行っていて、土日祝日の上り線(木更津から川崎方面)の13時から20時の混雑時間帯の普通車の料金を1200円にする変動料金制となっています(通常時の料金は800円、二輪は通常640円、混雑時は960円)。
これを令和7年4月からの土日休日は、上り線の混雑時間帯の料金を通常のETC料金の倍の1600円に引き上げるとともに、新たに下り線(川崎から木更津方面)の5時から7時を800円から1000円に引き上げる案となっています。(詳しい時間帯別料金は下の表を参照)
上り線の料金は、混雑時を1200円から1600円に引き上げるとともに、20時から翌朝4時までは400円に、1200円だった19時から20時を800円に引き下げるほか、現在は終日800円(普通車・二輪は640円)の下り線の料金も5時から7時を1000円(二輪は800円)に引き上げるほか、0時から4時までを400円に引き下げるとしている。
社会実験を行っている現在よりも、さらに混雑時間帯の料金を引き上げ、その緩和策として通常料金の半額の時間帯を新設することで、さらなる交通量の分散を図る考えとのことです。
また、下り線についても交通が集中する5時から7時の混雑時間帯からの交通転換を図るため、時間帯別料金を新たに施行するとしています。
実際、首都高からアクアライン下り線の浮島IC合流部までのその時間帯の渋滞はどんどんひどくなっていて、早朝の交通集中に拍車がかかっていると筆者も感じています。
令和5年から始まった社会実験の効果について、千葉県の県土整備部道路計画課に聞いたところ、一定の効果は上がっていて、混雑時間帯からの交通転換は起きているとのこと。ただ、令和6年、つまり社会実験2年目になるとその分散効果は減っていて、所要時間も増加中とのことで、分散効果をさらに改善するために今回の新たな案を設定したとのことでした。
社会実験1年目の上り線海ほたるPAから川崎浮島JCT間の19時台の交通量は減少して、所要時間も減少したそうだが、2年目はその減少量が減ってきている。社会実験開始前に比べると、全体の交通量は増加傾向にあるため、さらなる渋滞対策を講じようとしているのだろう。
現状は案となっていますが、県土整備部道路計画課の担当者は年内には正式決定して、できるだけ早く新料金の周知を図りたいとおっしゃっていました。
というのも、下のグラフにあるように、現在のアクアライン料金の社会実験の認知度はまだまだ不十分と感じているようで、通行料金など具体的な内容まで認知してもらって通行時間の変容を起こしてもらうためには従来以上の周知活動を行う必要性を感じているようです。
アクアラインを利用して南房総地域を訪れた千葉県外在住者の社会実験の認知度は69%で、具体的な実験内容まで認知している方は35%。認知している方のうち、通行時間帯やルートの変更を行った方は42%、目的地に長く滞在するなどして通行時間帯を遅くした方は19%にとどまっている。
確かに、複数のツーリングスポットや袖ヶ浦フォレストレースウェイなどに行くため、1年に何度も通行する方も多いライダーにとってはとても身近な存在のアクアラインですが、一般の方はごくたまに使うのが一般的でしょうから、時間帯別料金制度があることまでご存じの方は少なくても当然かもしれません。
さらに、南房総地域に行く目的の大半は観光・遊びやアウトレットでのショッピングでしょうから、1日遊んだ後に料金が安くなるからと言って20時(案では適用時間帯を19時に1時間繰り上げられました)まで現地にとどまろうと思う方も少なくて当然。だからこそ、さらに料金を上げて分散を図ろうとしているのでしょうが、分散効果が上がるよりも、我々利用者のお財布を直撃することになる可能性が高いようにも思います。
また、下り線の5時から7時を1000円(二輪は800円)に変更するとのことですが、ツーリングでもサーキット走行でもゴルフでも、スタート時間を考えるとその時間帯にアクアラインを通らざるを得ないケースが多く、こちらも費用負担が増えそうです。
千葉県はアクアラインの3車線化とトンネルの追加を要望
そもそも論ですが、アクアラインの渋滞にはまるたびに思うのが「この道路は設計ミスじゃないの」ということです。ここまでアクアラインの交通量が多くなって渋滞が激しくなるのを想定していなかったのか、夕方の木更津金田料金所に至るまでの導入部と、前述の首都高から川崎浮島ICの合流の大渋滞は起こるべくして起こっていると思わざるを得ません。
令和5年にアクアライン通行料金の社会実験が始まるタイミングで、「アクアラインの3車線化とトンネルの追加を千葉県が要望」という報道をこのコラムでご紹介したのは覚えていらっしゃるでしょうか。
実際に、その年の8月に千葉県の熊谷知事から「地方創生と国土強靭化を実現するための道路予算の確保に関する要望書」が提出されて、その中にアクアラインの橋梁部分の6車線化や、アクアライン着岸地周辺の国道409号については国道16号との交差点から木更津金田インターチェンジ間の2車線区間の4車線化が必要と、道路の拡幅という物理的な方法での渋滞緩和策が記載されています。
ただ、その後、この要望に関する進展に関しては発表や報道はありません。
千葉県にとっても、アクアラインは南房総地域の観光振興のための重要な道路だと思います。であれば、変動料金制などという利用者が利用を控える、あるいは利用者にとって使いにくくなるような施策を行うことは本意ではないのかもしれません。
渋滞で迷惑するアクアライン周辺の住民も、そしてアクアライン利用者にも負担をかけないような解決策が早期に実現することを願うばかりです。
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