
スマートキーは、キー本体(キーフォブ)とバイクが相互通信をすることで、ライダーが車両に近づくだけでキーオンの状態にできる非接触型キーシステム。近年はバイクでも装着車種が増えている装備ですが、どのようなメリット/デメリットがあるのでしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
スマートキーって?メリットだけじゃなくデメリットもある
メリット1:乗り出しから停車までが楽になる
バイクの乗り降りの際に、キーの出し入れ/キーシリンダーへの抜き差しといった一連の動作を省けるのが、スマートキーのもっとも大きなメリットです。
市街地走行での短距離移動のように、頻繁にバイクを乗り降りする機会が多いほど、スマートキーの恩恵を受けられるでしょう。また、ポケットやバッグからキーを取り出す必要がないため、キーを紛失する可能性が低くなるというメリットもあります。
メリット2:キー&キーシリンダーのメンテナンスが不要
バイクのキーシリンダーは露出しているため、異物の混入やキーシリンダーの劣化によるトラブルが起こりがち。また、キー自体の摩耗や曲がりが原因の始動トラブルも少なくありません。
それに対してスマートキーは、システムの一切がメンテナンスフリー。やるべきことといえば、1〜2年間隔での電池交換ぐらいです。
メリット3:駐めた位置を知らせるアンサーバックシステム
一部車種には、キーフォブを操作すると車体に備わったウインカーなどを動作させて位置を知らせるアンサーバック機能も搭載されています。
動作範囲はバイクの周囲100m程度ですが、広い駐車場で愛車をどこに駐めたかわからなくなった際に役立つ便利な機能といえるでしょう。
デメリット1:電池が切れるとエンジンの始動困難に
スマートキーのもっとも大きなデメリットとして、キーフォブの電池が切れてしまうとシステムが使えなくなってしまう点が挙げられます。
もちろん、電池が切れた場合でも所定の方法でエンジンが始動できる仕組みにはなっていますが、メーカーや車種によってエンジン始動方法が大きく異なる点には注意が必要です。
デメリット2:高額なキーフォブは紛失/故障させると大変
また、キーフォブが高価である点もスマートキーのデメリットのひとつ。それにより車両価格が引き上がるうえ、キーフォブを紛失/故障させた場合の新調費用も高額になりやすい傾向があります。
とくに注意したいのは、衣類のポケットに入れたまま洗濯してキーを故障させてしまうこと。キーフォブの本体価格は3万円ほどで、セットアップ費用などを含めるとそれ以上の費用がかかる場合があるので、扱い方には十分に気をつけたいところです。
デメリット3:キーフォブとバイクの管理に意外と気を遣う
キーとバイクの扱いを誤ると盗難の危険が増す点も、スマートキーのデメリットです。壁などに隔たれていても、キーフォブとバイクが近い距離にある場合はエンジン始動ができる状態になっている場合があり、そのまま盗難される恐れがあります。
中でも、以下のような状況に注意しましょう。
- 自宅のキーフォブ保管場所とバイクの駐車場所が近い場合
- 飲食店の席とバイクの駐車場所が近い場合
- キャンプサイトのすぐ側にバイクを駐めている場合
こういった事態を防止するために、キーフォブには発信電波を停止させるオフスイッチが備わっていますが、過信しないことが大切です。
スマートキーの特性を利用した盗難が多発!? 正しい保管方法とは?
扱い方さえ誤らなければ、スマートキーは衝動的/短絡的なバイク盗難に対する高い防犯性を発揮します。しかし計画的な犯行を行うプロ窃盗団相手には、かえって盗難されやすい場合も。
たとえば自動車盗難では“リレーアタック/コードグラバー”など、スマートキーの特性を利用した盗難方法が横行しています。これはスマートキーシステムを搭載したバイクも無関係ではありません。
リレーアタックの概要と対策法
リレーアタックとは、キーフォブの解錠コード信号を増幅させて、離れた位置にあるバイクまで送信し、近くにキーフォブがあるとシステムに誤認させてエンジンを始動する方法です。
対策としては、オフスイッチを使用するか、電波遮断ポーチ/密閉された金属製の空き缶などにキーフォブを入れて、必要なとき以外は電波信号を発さないように管理することが有効です。
コードグラバーの概要と対策法
コードグラバーは、スマートキーのスペアをつくる際に用いる機器を使って、キーフォブから発せられる解錠コード信号をコピーする方法であり、一度コピーされてしまえば解錠コードを入手した窃盗犯はいつでもバイクのエンジンを始動できます。
コードグラバーに対しては、解錠コードを読み取られないようにすることがもっとも肝心です。
しかし、解錠コードはある程度離れた位置からでも気づかないうちに盗み取られてしまうため、コードグラバーを使う窃盗団に目を付けられたら対処のしようがないのが実情です。
便利だけど防犯対策はしっかりと
このように、スマートキーは乗り降りの手順を省ける便利な装備ですが、適切に扱うためにはスマートキー特有の注意点やトラブルの対処法を知っておくことが大切です。
とくにキーフォブの紛失/電池切れ時のエンジン始動方法は、メーカー/車種によって手順がまったく異なるため、必ず取扱説明書を確認しておくようにしましょう。
防犯性に関しても、プロの窃盗団相手には万全と言えないため、徹底したキーフォブ管理に加え、これまで通りチェーンロックなどの物理的なロック装置による盗難対策は必須です。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
【冒頭解説】ECUをサスペンションに一体化、フロントフォークに自動車高調整を初採用 2021年1月に日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して誕生した日立Astemo(ア[…]
ヤマハ発動機と三菱重工業は、200kgの貨物を搭載可能な中型マルチコプター型無人機(以下、中型無人機)の開発に向けた共同研究を行っていることを発表した。 パワーユニットには、ヤマハが2023年にコンセ[…]
スズキは、5月から7月にかけて横浜・名古屋・オンラインで開催される「人とくるまのテクノロジー展 2025」(主催:公益社団法人自動車技術会)に出展する概要を発表した。 今回のスズキブースでは、2025[…]
ヤマハ発動機は、5月21日(水)~23日(金)にパシフィコ横浜で開催される国内最大級の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会)に出展し、同[…]
そもそも「過給機」とは 世界最大規模の2輪車ショーといわれるEICMA(ミラノショー)。2024年11月に開催された同ショーにおいて最大級の注目を集めたのは、ホンダが初公開した電動過給機付きV型3気筒[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
シート後部、リヤ両サイドにある白バイの計3つのボックス 白バイのボックスは3つあります。荷物を入れるためのサイドボックス、無線機を入れる無線機ボックスがあり、サイドボックスは車両後部の左右に1つずつ、[…]
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
白バイがガス欠することはあるの!? 今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。 私も10[…]
免許制度は基本、ヨーロッパで共通 イタリアのバイク事情を現地からお届けするコラム「Vento Italiano」(イタリアの風)第2回。今回はイタリアの自動車運転免許制度について紹介していきます。 と[…]
人気記事ランキング(全体)
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]
高評価の2気筒エンジンや電子制御はそのままにスタイリングを大胆チェンジ! スズキは、新世代ネオクラシックモデル「GSX-8T」および「GSX-8TT」を発表。2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界[…]
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
最新の投稿記事(全体)
2022年モデル概要:赤フレームに白ボディが新鮮! 並列4気筒エンジンを搭載し、アグレッシブな「Sugomi」デザインと「エキサイティング&イージー」な走りがウリのZ900。KTRC(カワサキトラクシ[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]