
ヤマハは欧州で、次世代シフトテクノロジー「Y-AMT(ヤマハ オートメイテッド マニュアルトランスミッション」を発表した。クラッチレバーとシフトペダルは省略され、手元スイッチでAT/MTの切り替え、そして指の操作でギヤチェンジが可能になる。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
完全なオートマチックとして走ることができ、マニュアル操作も可能
ヤマハは欧州で次世代シフトテクノロジー「Y-AMT(ヤマハ オートメイテッド マニュアルトランスミッション)」を発表。最大の特徴はクラッチレバーとシフトペダルを排除していることで、完全オートマチックで走らせることと、手元の操作でギヤチェンジを行うことができる。
これまでにもヤマハは、約20年前にスポーツツアラー「FJR1300」向けにYCC-S(ヤマハ チップ コントロール シフト)を開発しており、それは油圧クラッチを自動制御しつつ、ライダーは左足のシフトペダルまたは手元のコンパクトなレバースイッチを操作することでマニュアルシフトをしていた。
今回のY-AMTは、指で操作するマニュアルシフト、または2モードのフルオートマチック制御を可能とする電子制御技術だ。つまり、クラッチ制御だけでなくシフト操作もオートで行われ、モードを切り替えることでライダーによるマニュアル操作も可能になるというもの。クラッチと同時に制御されるということは、クイックシフターよりもスムーズかつ素早いギヤシフトが可能になるのは間違いないだろう。
Y-AMTは、油圧作動のYCC-Sシステムと異なり、2つの電動アクチュエータによってクラッチユニットとシフト機構を制御。また、ライドバイワイヤの電子制御スロットル(YCC-T)と併用することで、よりスムーズなギヤチェンジやクルーズコントロール機構、切り替え可能なライディングモードなども統合制御することが可能になっている。
システムの重量はわずが2.8kgだといい、“コンパクトな車体設計フィロソフィーはそのままに、エンジン幅をいたずらに広げることなく、マシンのハンドリングやパフォーマンスを維持できる”と明言しているのもヤマハらしい。
オートマチックシフトモードは2つ。街乗りやツーリングといったノーマルな使い方に馴染む『D』と、よりスポーティなギヤシフトに制御される『D+』、これに(搭載する車種によるだろうが)パワーモードやトラコンなどの各種電子制御、場合によっては電子制御サスペンションなどが統合制御されるはずだ。
シフト操作は左手側のシーソー型スイッチで行う。『+』ボタンを人差し指で引くように操作してシフトアップ、親指で『-』ボタンを押してシフトダウンできる。ATモードでの走行中も操作で介入が可能だ。
ホンダはDCT、Eクラッチを実用化済み、BMWは「自動シフトアシスト=ASA」を発表し、それを搭載した機種(おそらくR1300GS)を2024年中に発表する見込みだ。いずれもY-AMTと重なる領域があり、今後の技術発展が楽しみになりそう。以下、参考までに比較表を作ってみた。Y-AMTにオプションでシフトペダルが装着可能になるのかなどは不明なので、現状の情報からひとまず“なし”と分類した。
Y-AMT | DCT | Eクラッチ | ASA | |
クラッチレバー | なし | なし | あり | なし |
シフトペダル | なし | オプション | あり | あり |
自動変速 | 可能 | 可能 | 不可 | 可能 |
マニュアル変速 | 可能 | 可能 | 可能 | 可能 |
AT限定免許 | OK | OK | NG | OK |
メカニズム | MTベース | DCT専用 | MTベース | MTベース |
Y-AMTを搭載するであろう機種はまだ謎に包まれているが、『複数のモデルに投入する』とされている。公開された動画ではテーパードハンドルバーやラジアルマスターシリンダーなどが見えることから、3気筒シリーズのアドベンチャーあたりが怪しいだろうか。というかサウンドも3気筒のそれである。あるいは、全く新しい車種が登場することもありうる?? この時期の発表ということは、11月のEICMA(ミラノショー)までには明らかになると見るのが自然だろう。待て、続報!!
ヤマハ最新のスイッチボックスと大きく変わらず、システムのシンプルさとコンパクトさがうかがえる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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