
日本各地には、走行すると音楽が鳴る「メロディーロード」と呼ばれる道路が存在します。観光地/ツーリングスポットなど全国に30か所以上設置されており、実際にツーリングなどで走行したことがある人も多いかもしれません。スピーカーなどを使わずとも音楽が流れるメロディーロードですが、バイクで走行してもちゃんと音楽は聞こえるのでしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
バイクでも聞こえる? メロディーロードから音楽が流れる仕組みとは?
そもそも、メロディーロードから音楽が流れる秘密は、路面に掘られた溝にあります。
路面に設けられた溝はグルービング工法と呼ばれ、排水を促して雨天時のグリップ低下を抑えるとともに、溝の方向によってもさらなる効果を付随させることができます。
進行方向に対する縦溝は、乾燥路面でのグリップ力を引き上げてくれる反面、ハンドル操作に違和感を生じさせるため、バイク乗りには嫌われがちです。
一方、横溝はタイヤとの接触によって音と振動を発生させることで、居眠り運転防止や速度超過抑制などの効果が期待できるといいます。
横溝タイプのグルービング工法の一種となるメロディーロードは、溝間隔を狭くするほど高音が発生し、広くすると低音が発生する特性を利用しています。路面に楽譜を書くように、溝を掘ることで音楽を流しているというわけです。
メロディーロードから音楽が流れる仕組みは、アナログレコードの再生原理によく似ており、たとえば溝が掘られた路面はレコード盤面に相当し、レコード芯とスピーカーの役割を担うのがタイヤといえます。
ただし、走行する車両の速度によって再生速度も変わるため、適切な速度で走行しなければ音楽としては聞こえません。そのためメロディーロードは、通過する車両の速度を自然な形で抑制する効果があるうえ、その土地に根ざした楽曲選定により地域振興にも貢献しています。
もちろん、バイクに乗ってメロディーロードを通過する場合も、音楽自体は鳴ります。
しかしながら残念なことに、バイクの場合はヘルメットを被っていることに加え、風切り音やエンジンの音にかき消されてしまい、実際のところメロディーロードの音はほとんど聞こえない場合が多いようです。
走行中のバイクからメロディーロードの音楽を聞き取るには、エンジンの回転数や排気音を抑えつつ速度調整をしたうえで、注意深く耳を澄ませる必要があります。
ちなみに、高感度マイクを搭載したカメラ等なら音を拾うことができるようです。また、歩道などで待っていれば、クルマやバイクが通過する際に鳴る音楽を聞くこともできます。
聞き取るのが難しいぶん、バイクでの走行中に音楽が聞こえたときの喜びは、クルマ以上といえます。
メロディーロードは全国にたくさんあるので、ツーリングの楽しみの一つとして探してみるのも面白いかもしれませんね。
全国の代表的なメロディーロードと楽曲一覧
メロディーロードは、観光地のPR目的や、山岳道路での速度抑制のために設置され、土地にちなんだ楽曲が選定されています。
奥会津シンフォニーロード[福島県]:カントリーロード(ジョン・デンバー)
日本ではジブリ映画『耳をすませば』で、本名陽子が歌った楽曲が有名です。会津のどかな風景に『カントリーロード』はよく合います。
第一いろは坂[栃木県]:モンキー・マジック(ゴダイゴ)
第一いろは坂では、付近に生息する日本猿や日光東照宮の三猿にちなんで、国内外で認知度の高いゴダイゴの『モンキー・マジック』が選曲されたとのことです。
国道353号線[群馬県]:いつも何度でも(木村弓)
国道353号線にある四万温泉は、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に登場する旅館のモデルになったことから、映画の主題歌である『いつも何度でも』が選ばれました。ちなみに、群馬県はメロディーラインの設置数日本一を誇ります。
芦ノ湖スカイライン[静岡県]: 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
箱根は人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の舞台。芦ノ湖スカイラインの下りに選ばれたのは、オープニングテーマ曲である『残酷な天使のテーゼ』です。
琵琶湖大橋[滋賀県] :琵琶湖周航の歌(小口太郎 作曲)
琵琶湖の東と西を結ぶ長さ1350mの琵琶湖大橋では、滋賀県民にはおなじみの『琵琶湖周航の歌』が流れます。
佐田岬メロディーライン[愛媛県]:みかんの花咲く丘(海沼實 作曲)
佐田岬メロディーラインは、四国で唯一のメロディーロード。楽曲は柑橘王国の愛媛を象徴する『みかんの花咲く丘』です。
県道47号 米子境港線 メロディー道路[鳥取県]:ゲゲゲの鬼太郎(いずみたく 作曲)
鳥取県境港から米子鬼太郎空港へ続く県道47号線では、鳥取県出身の漫画家水木しげる氏の代表作『ゲゲゲの鬼太郎』の特徴的なメロディーが流れます。
安田賀茂線 フルーツロード[広島県]:さんぽ(井上あずみ)
付近の世羅町には観光農園が多数あり、“誰もが知っており、季節とは関係なく気軽に車内で口ずさむことができる曲”を基準として、ジブリ映画『となりのトトロ』の『さんぽ』が選ばれたとのことです。
県道17号 指宿スカイライン[鹿児島県]:乾杯(長渕剛)
指宿スカイラインでは、鹿児島県出身シンガーソングライターである長渕剛の名曲『乾杯』のサビが流れます。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが…… 市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。 その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほ[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
最新の関連記事(ツーリング)
北海道という「ハードルの高さ」 ライダーにとってのひとつのあこがれ、北海道ツーリング。しかしフェリーの予約が面倒だったり、北海道までの移動で疲れてしまったり。 そういったライダーの悩みを解決し、「手ぶ[…]
美味しい空気とコーヒー みなさま、初めまして〜︕ 女優/バイク/サウナ/SUP/⽔上バイク/ヨガなどなど…アクティブライフを送っている指出瑞貴と申します^_^ 皆様から「さっしー」と呼ばれることが多い[…]
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
夏の避暑地としても人気の山中湖エリア 山梨県南都留郡山中湖村に位置する山中湖は、東京からもっとも近い森と湖のリゾート地として人気だ。富士五湖の中でもっとも富士山に近く、湖越しに望む雄大な富士山の姿は圧[…]
人気記事ランキング(全体)
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]
高評価の2気筒エンジンや電子制御はそのままにスタイリングを大胆チェンジ! スズキは、新世代ネオクラシックモデル「GSX-8T」および「GSX-8TT」を発表。2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界[…]
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
最新の投稿記事(全体)
脇を冷やすことで全身を効率的にクールダウン 男性の健康をサポートするために世界各地でライダーが集い、パレードランをしながら募金を呼びかけるチャリティイベント、DGR(The Distinguished[…]
1位:ワークマン「ペルチェベストPRO2」使用レビュー ワークマンの「ペルチェベストPRO2」を猛暑日で徹底検証。最新モデルはペルチェデバイスの数が昨年モデルの3個から合計5個に増加し、バッテリーもコ[…]
2022年モデル概要:赤フレームに白ボディが新鮮! 並列4気筒エンジンを搭載し、アグレッシブな「Sugomi」デザインと「エキサイティング&イージー」な走りがウリのZ900。KTRC(カワサキトラクシ[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]