
BMWは、新しい自動シフトアシスト機構「オートメイテッド シフト アシスタント=ASA」を発表した。ライディングをよりシンプルかつ快適にする技術とし、クラッチとギヤシフトの自動化によって新たなライディング体験をもたらすという。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:BMW
発進→変速→停止まで全てオートマ化しつつマニュアルモードも備える
BMWは、新しい自動シフトアシスト機構「オートメイテッド シフト アシスタント=Automated Shift Assistant (ASA)」を発表した。“走りをよりシンプルにする”ことがコンセプトで、ギヤシフトを駆使する楽しみはそのままに、自動シフト&自動クラッチでライディング体験を向上するというもの。
ASAはマニュアルトランスミッションをベースに、2つのアクチュエーターで6速トランスミッションとクラッチをそれぞれ自動化する機構。従来のシフトアシスタントは機構的にクイックシフターそのものだったが、新しいASAはクラッチレバーを必要とせず、自動シフトによって発進から停止に至るまで変速操作も不要。ライディングがよいりイージーなものになるという。
クラッチレバーがない! これにより、日本で発売されればAT限定免許でも運転できるようになるはず。
ASAは、2つのモードを備えるのも特徴だ。まずオートマチックの「D」モードでは、シフトタイミングはECUによって自動的に選択される。各種ライディングモードに応じてシフト特性も変化し、回転数と負荷を参考にしながら、正確かつ状況に合わせた高速ギヤチェンジが行われるという。また、アクティブクルーズコントロールや前面衝突警告とも統合制御される。
もうひとつの「M]モードでは、シフトペダルによる任意の操作が可能。このモードでもクラッチは自動制御になるため、走行中はいわゆるクイックシフターと同じような振舞いに感じられるはず。
ただし、クラッチ制御が介入するためかシフトアップ時のショックは大幅に軽減されているといい、加速と走行安定性も向上。同様にシフトダウン時も車体の乱れは最小限になるという。
DモードとMモードを切り替えるボタン。とてもシンプルな造りだ。
タンデム時など、さまざまなことに意識を割かなければならない状況では、スムーズなシフト操作を自動で行ってくれることで、より安全かつ自由なライディングが可能になる。ライダーとパッセンジャーのヘルメットがコツンと当たる……なんて場面も大幅に減りそうだ。
このほか、坂道発進が簡単になったり、オフロードの難しい路面状況でも車体の安定性が向上するといったメリットがあるという。
EクラッチやDCT(デュアルクラッチトランスミッション)と何が違うの?
まずはEクラッチから比較していこう。いずれもマニュアルトランスミッション機構をベースとしているのは共通だが、クラッチレバーありで自動操作が可能なシステムなのがEクラッチ。マニュアルクラッチ操作はいつでも介入可能で、一定時間が経過すると自動制御に復帰する。ASAはクラッチレバーを持たず、完全に自動制御となっているのが大きな違いた。ただし、ASAの機構的にはクラッチレバーを追加することもできそうに見える、いや見えなくもない……?
DCTについては、奇数段と偶数段でそれぞれにクラッチユニットがあるデュアルクラッチ機構が特徴で、駆動力の断続は完全に自動制御となっている。トランスミッションもオートマチックを前提としたものであり、マニュアル操作であってもモーターでシフト機構が駆動される。スチールワイヤーを介したクラッチの手動操作は物理的に不可能だが、ホンダが特許を取得しているクラッチバイワイヤならアクチュエーターを介してマニュアル操作も可能になりそう。このあたりは未来に期待である。
ASAは前述のとおりマニュアルトランスミッションをベースとしながら、クラッチとギヤシフトを自動化したもの。クラッチは完全な自動化であり、ギヤシフトはマニュアル操作も選択可能。おそらくDモードでの走行中にもペダル操作で介入できるだろう。制御はECUと密接に連携するTSU(トランスミッションコントロールユニット)で行い、ライディングモードやエンジン回転数、スロットルポジション、車体のバンク角に応じてシフト特性が変化。クラッチについては必要なクラッチの滑り量を調整、かつ停止するときに切断することでエンジンストールを防いでいる。
ちなみに、マニュアル操作モードであっても、エンジン回転が一定以下になると自動的にシフトダウンが行われ、エンジンストールを防ぐ。これはDCTもASAも導入している制御だ。
マニュアルトランスミッションの機構を持ちながら、クラッチとシフトそれぞれにモーターを仕込んでいる。
初採用はR1300GSから?
発表リリースには見逃せない文言も。上記のように“オフロードの路面でも云々”とあったほか、“パワフルなボクサーエンジンでは苦もなく坂道発進を……”とされているのだ。パワフルなボクサー=水平対向2気筒エンジンかつオフロードも考慮、となれば最高峰のR1300GSで最初に採用されると見るのが自然だろう。
また、配布された公式フォトの左グリップまわりは、クラッチレバーがないことに加え、そこそこの大きさのナックルガードも。こちらもR1300GSの登場を予感させるものだ。
登場は遅くとも今秋のインターモト、あるいはEICMA(ミラノショー)になるはずだが、早ければ今夏にも発表があるかもしれない。期待して続報を待ちたい!
※写真は現行モデルのR1300GS
スイッチ類は多いがコンパクトにまとまっている(写真はASA)。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
【冒頭解説】ECUをサスペンションに一体化、フロントフォークに自動車高調整を初採用 2021年1月に日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して誕生した日立Astemo(ア[…]
ヤマハ発動機と三菱重工業は、200kgの貨物を搭載可能な中型マルチコプター型無人機(以下、中型無人機)の開発に向けた共同研究を行っていることを発表した。 パワーユニットには、ヤマハが2023年にコンセ[…]
スズキは、5月から7月にかけて横浜・名古屋・オンラインで開催される「人とくるまのテクノロジー展 2025」(主催:公益社団法人自動車技術会)に出展する概要を発表した。 今回のスズキブースでは、2025[…]
ヤマハ発動機は、5月21日(水)~23日(金)にパシフィコ横浜で開催される国内最大級の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会)に出展し、同[…]
そもそも「過給機」とは 世界最大規模の2輪車ショーといわれるEICMA(ミラノショー)。2024年11月に開催された同ショーにおいて最大級の注目を集めたのは、ホンダが初公開した電動過給機付きV型3気筒[…]
最新の関連記事(BMWモトラッド)
バイクを愛するすべての人へ 去る6月7日(土)、東京のお台場に位置するBMW GROUP Tokyo Bayにて、BMWモトラッドが主催する『NIGHT RIDER MEETING TOKYO 202[…]
Barcelona(バルセロナ)GTXジャケット 耐摩耗性に優れた表面素材と、GORE-TEX(R) Proによる高い防水透湿性を備えたジャケット。シンプルなデザインでふだん着の上に着用でき、雨の日の[…]
意外な従順さを見せるBMWのスーパーマシン サーキットでのパフォーマンスを第一に考えられたマシンではあるものの、意外と一般公道を転がすような速度域でも扱いにくさは感じない。 エンジン特性がしっかり調教[…]
Paceプロジャケット 豊富な安全装備と快適な着心地を高次元でバランスした、ワインディングやロングツーリングに最適なライディングジャケット。腕と肩のトリムには、スチールとプラスチックを組み合わせたコン[…]
朝6時台には伊豆に到着? バイクならではの伊豆巡りを 週末の伊豆半島といえば“渋滞”。そんなイメージだろう。実際、東名高速下り線は朝の6時台には渋滞が始まり、伊豆に入っても沼津市街/東伊豆/下田といっ[…]
人気記事ランキング(全体)
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
スズキが鈴鹿8時間耐久ロードレースの参戦体制を発表! スズキは2025年8月1日(金)から3日(日)に鈴鹿サーキットで開催される「2025 FIM 世界耐久選手権 鈴鹿8 時間耐久ロードレース」に「チ[…]
高評価の2気筒エンジンや電子制御はそのままにスタイリングを大胆チェンジ! スズキは、新世代ネオクラシックモデル「GSX-8T」および「GSX-8TT」を発表。2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
最新の投稿記事(全体)
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
モリワキイズムを変えずに継承していく モリワキの面白さは、ライダーが主役のもの作りだと思っています。サーキットを速く走るにはどうしたらいいのか、ライダーの意見を聞いて解決策をプロダクトとライダーの両方[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]
【モリワキエンジニアリング取締役名誉会長・森脇護氏】1944年、高知県生まれ。愛車だったホンダCB72のチューニングをヨシムラに依頼し、それをきっかけにPOPこと吉村秀雄氏に師事し、チューニングを学ぶ[…]
北海道という「ハードルの高さ」 ライダーにとってのひとつのあこがれ、北海道ツーリング。しかしフェリーの予約が面倒だったり、北海道までの移動で疲れてしまったり。 そういったライダーの悩みを解決し、「手ぶ[…]
- 1
- 2