ラムエア加圧時で80psを発揮する史上最強ヨンヒャクが遂に降臨!基本設計を共通とするNinja ZX-25Rとは、どんな部分が違っているのか。袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたサーキットテストのファーストインプレッションを速攻でお伝えしよう。
●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン
やっぱりパワーは段違い、この速さは別次元だ!
ついにこの日がやって来た。カワサキ「Ninja ZX-4RR」の初インプレッション! ヤングマシンが初めてスクープしてからもうどれくらい経ったんだろう。開発者に聞いたところによれば、やっぱりニンジャZX-25Rの開発が始まった時から既に4Rも視野に入っていたとか。
さて、そのZX-4R。今回走行できたのはリヤサスペンションにZX-10R&6Rにも使われているSHOWAのBFRC-liteを装備した最上級仕様のRR。まずライディングポジションから報告しよう。車体はほぼ25Rと共通なので、ツーリング走りとスポーツ走りを高い次元で両立させるハンドル設定などポジション自体はほぼ同一。足着きもかかとがわずかに浮く程度と良好だ。
ただ引き起こしは若干重くなった印象で、400になったんだなと実感。SEにも跨ったが、足着きは変わらないものの、こちらの方がリヤサスは硬め。RRは高性能サスペンションらしくよく動いてくれる印象だ。
エンジンをかけてみると、図太くなかなか力強い排気音。ゼロ発進後のコンマ数秒ほどの一瞬だけ車重が増えたなりの重さを感じるが、すぐに圧倒的なエンジンパワーがそれを補って、25Rと遥かに異なる鋭い加速を見せる。そのエンジンたるや、ラム圧過給時でMAX80psというのは伊達ではなかった。特に高回転域はまったくの別次元だ。
25Rは1万2000rpmを超えて1万4000~1万7000rpmとかなり上まで回っていくんだけど、排気量的にどうしても回転に対して速度の伸びは鈍化していってしまう。それがレッドゾーン回転こそ低くなるものの、4Rでは1万2000rpmからも怒涛の加速が止むことなく、まったくもって格が違う。私がここ袖ヶ浦フォレストレースウェイで2~3コーナーにかけての緩いカーブを中型バイクで全開にできなかったのは初めてのことかもしれない。とにかく凄さに驚かされるこのパワー!
25Rも速いと思っていたけど、4Rと比べたら音の方がスピードより先行していると思われても仕方がないかなと感じてしまう。400レプリカがなくなって長い期間が過ぎていたため忘れていたが、昔の400と250もこんな風に排気量を隔てると決定的な違いがあった。そして、それはパワーだけでなく走らせ方にも違うものが求められていた。25Rとは似て非なるのだ。
ニンジャZX-25Rよりも難しいが、得られるタイムは段違い
「ZX-25Rとは似て非なるもの」。そう感じたのはパワーもさることながら、その“走らせ方”だった。端的に言うとサーキットでは25Rと同じ走りができず、難しい。コーナーでは25Rより曲がってくれないと思う人も出てくるだろう。
25Rではとにかくスロットルを開けてコーナリング速度を稼いでいく走りが基本で、その全開感を味わえるのが魅力だった。一方、4RRはパワーが強烈であるがゆえに、もっと上手く走りを組み立てる必要が出てくる。リヤサスはストリートに合わせた標準設定のままだったので、コーナーでサスが入りすぎてリヤ下がりな印象で、これも曲がりにくさを覚える要因にはなっていた。
だが、それよりもダブルディスクとなったフロントまわりが重くなった分、必然的に25Rより回頭性そのものが下がってしまう。こちらが何より大きい。だから上手く曲がるためにはイケイケではなく、ちゃんと進入ラインからブレーキタイミング、脱出速度まで見越して走りの組み立てをキチンと行わなくてはダメ。
そうやってもコーナリング速度自体は25Rの方が稼ぎやすいので、パワーによる直線での稼ぎ分と相殺してラップタイム全体としては25Rと大体同じところに収まるんじゃないかなというのが最初の印象だった。
ところがラップタイムを見てみるとビックリだ。袖ヶ浦フォレストでのノーマル25R標準ラップタイムはだいたい1分20秒前後。それが4RRは1本目の走行でいきなり驚きの1分17秒台。2本目を走ると1分16秒台まで入れることができた。MAX77ps(ラムエア加圧時80ps)だとこんなにも違うのかと走行データを確認してみると、やはり立ち上がりからのパワーで圧倒的に稼いでいる。
走行モードはトラクションコントロールシステムがレベル1でかかるSPORTモードを使用していたが、タイヤのグリップが追いつかず頻繁に介入を始めたので、最後はトラコンOFFにして走るほど。このパワーにはサーキット用のハイグリップタイヤが本気で欲しくなる。
全体的な印象として、難しさは25Rよりあるが、その先にある速さの世界を体験させる4RRは、10Rや6Rなど超本格スーパースポーツの世界の入口に到達したライダーを対象としている感じだ。ライダーを育てるマシンとも言える。
このようにサーキットでは25Rより上のライディングスキルが要求される4RRだったが、その一方で公道では難しさよりもメリットが光る部分が多いのではとも感じさせられた。排気量が多いとエンジンを回さなくても楽にスピードが取り出せるし、峠道ではギヤチェンジを頻繁に行わなくとも1つのギヤで済む場面が多くなって楽になる。坂道発進も25Rより断然楽だろう。このことは中型バイクから大型に乗り換えた人ならよくご存じのはず。
それに車格自体は25Rと同じコンパクトさ。パワーはひと頃の600に近いのに、手軽さ感では25Rとそんなに変わらない。ライディングモードも25Rでは「SPORT」と「ROAD」の差をあまり感じなかったけど、4RRではもっとそれを感じさせてくれそうな雰囲だった。このあたりヤングマシン10月号以降では公道に持ち込んでじっくりとテストしていってみたい。まだまだ新しい発見がありそうだ。
【袖ヶ浦フォレストレースウェイ 走行データ比較】“走らせ方”が全然違う!
上のグラフは今回走ったZX-4RR(青)と、以前にデータを採ったZX-25R SEノーマル(緑)および、ハイグリップタイヤなどを装着したZX-25Rレーサー改(赤)との比較を行ったもの。4RRはダブルディスクの能力で高い速度から強力に減速。そして立ち上がりからはパワーで一気に差をつける。この走りは大型SSのそれに近くなっているようなもの。それだけスキルも要求される。
また、コーナリングが難しいと感じつつも速度自体は25Rノーマルと同等なのは4RRの凄いところと言えるだろう。25Rレーサー改は武器である旋回速度を徹底的に高めている。250と400の走り方は突き詰めていくと、こういった所で違いを出すのだ。
ライディングポジション
タイプは2種類、カラーは全部で3色
ニンジャZX-4R SE / 4RR ディテール
史上最強80psの400直4エンジン
RRにはZX-10R譲りのリヤサスを装備
メーター表示はサーキットモードあり。スマホ連携機能付きだ!
SEは充実装備
スペック比較【4RR vs 25R】
車名 | Ninja ZX-4R SE / Ninja ZX-4RR KRT EDITION | Ninja ZX-25R SE/KRT |
全長×全幅×全高 | 1990×765×1110mm | 1980×750×1110mm |
軸距 | 1380mm | ← |
最低地上高 | 135mm | 145mm |
シート高 | 800mm | 785mm |
キャスター/トレール | 23.5°/97mm | 24.2°/ 99mm |
装備重量 | SE=190kg/RR=189kg | 184kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ | ← |
総排気量 | 399cc | 249cc |
内径×行程 | 57.0×39.1mm | 50.0×31.8mm |
圧縮比 | 12.3:1 | 12.5:1 |
最高出力 | 77ps/14500rpm(ラムエア加圧時80ps/14500rpm) | 48ps/15500rpm(ラムエア加圧時49ps/15500rpm) |
最大トルク | 4.0kg-m/13000rpm | 2.2kg-m/12500rpm |
変速機 | 常時噛合式6段リターン | ← |
燃料タンク容量 | 15L | ← |
WMTC燃費 | 20.4km/L(クラス3-2、1名乗車時) | 18.7km/L(クラス3-2、1名乗車時) |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 | 110/70R17 |
タイヤサイズ後 | 160/60ZR17 | 150/60R17 |
ブレーキ前 | φ290mmダブルディスク+4ポットキャリパー | φ310mmディスク+4ポットキャリパー |
ブレーキ後 | φ220mmディスク+2ポットキャリパー | φ220mmディスク+2ポットキャリパー |
乗車定員 | 2名 | 2名 |
価格 | SE=112万2000円/RR=115万5000円 | 96万2500円 |
色 | SE=黒×灰、青×黒/RR=ライムグリーン×黒 | SE=赤×黒、灰×黒/SE KRT=ライムグリーン×黒 |
発売日 | 2023年7月15日 | 2023年4月15日 |
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