現在、国内4メーカーのラインナップでクルーザーと言えば、売れに売れているホンダのレブルシリーズと、このヤマハ ボルトRスペックのみ。今や稀少な空冷ビッグVツインを搭載するボルトは、発売から間もなく10年を迎える。あらためて魅力に迫ってみよう。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:柴田直行 ●外部リンク:ヤマハ
ヤマハ ボルト RスペックABS 概要
[◯] 優秀なハンドリングと鼓動感がベストマッチ
このボルトシリーズ、カフェレーサー風のCスペックやレトロスクランブラーのSCR950など、派生モデルを次々と増やしたが、現在は上位機種のRスペックのみがラインナップに残る。ボバースタイルのシンプルな車体に、今や稀少となった941cc空冷V型2気筒を搭載しており、都市近郊のショートライドに的を絞ったというクルーザーだ。
まずはエンジンから。この狭角60度Vツインは、最高出力こそ54psと400cc並みながら、最大トルクは80Nmもあるので、クラッチをつないだ瞬間から突進する。とはいえ、それはスロットルを大きく開けた場合の話だ。基本的にレスポンスは右手に忠実で、低回転域からマナーよく調教されている。そして、リジッドマウントかつバランサーレスにもかかわらず、体に伝わる不快な振動はほとんどなく、二つのピストンと重いクランクが実直に力を生み出しているような、味わい深い鼓動感だけを伝えてくる。タコメーターがないので計算したところ、トップ5速・100km/hでの回転数はおよそ3300rpm。これは最大トルクの発生回転数に限りなく近く、街中ではその辺りまでを多用していた。
続いてはハンドリングだ。252kgという車重は、レブル1100TのDCT仕様より4kg重く、サイドスタンドからの引き起こしでそれを実感する。だが、走り出してしまえばそこまでの重さを感じさせず、スイスイと走れてしまう。低速域では舵角の付き方が早く、人によっては切れ込みやすいと感じるかもしれない。だが、慣れてしまえばこれを生かし、軽い入力でコーナリングできるようになる。リジッドマウントの効果かフレームの剛性は高く、高速コーナーも少ない揺れ幅で難なくクリアしていく。前後のサスセッティングもこの良好なハンドリングを助けており、タイヤのグリップ力も含めてシャーシに不満はなかった。
ブレーキは、この重い車体を難なく制動させるほど強力だ。リヤは低速域でのみ、初期タッチがやや唐突でUターンがしづらかったが、それを除けば基本的には扱いやすい。
[△] バンク角の少なさをうらめしく思うはず
自然で扱いやすいハンドリングに気を良くして車体を寝かし込んでいくと、あっという間にステップが接地してしまう。とはいえ、これだけ低いフォルムながらリヤからの突き上げは許容範囲内にあり、操安性と乗り心地とのバランスは良好だ。
[こんな人におすすめ] これでラストか。空冷Vツインを買うなら早めに
電子制御の進化によって快適性や安全性が向上した今だからこそ、ボルトの「素の味わい」にハッとさせられた。引き算の美学とでも言おうか、SR400に近い存在であり、できればこの先も新排ガス規制に適合させて残してほしい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
クルーザーベースなのに意外にスポーツ性高し! ロイヤルエンフィールドの日本国内ラインナップには、このショットガン650のほかに648ccの空冷パラレルツインエンジンを搭載するモデルが3機種ある。カフェ[…]
シリーズの中心的な存在、語り継がれる名車の予感 昨年3月に発売されたVストローム800DEと、その7か月後に登場した同800は、ともにミドルネイキッドのGSX-8Sとプラットフォームを共有している。 […]
最高出力350psを誇るエンジンはV型8気筒4952cc! まずは今回、ホンダから発売された新型船外機”BF350”の搭載エンジンについて解説しよう。 まずエンジン自体の種類はV型8気筒だ。ホンダマリ[…]
XLCRとはあらゆる点で違う ブラックに統一された精悍な車体の中で、フューエルタンクに貼られたバー&シールドのエンブレムがゴールドで彩られ、誇らしげに煌めいている。 クォーターサイズのコンパクトなフェ[…]
グロムとは違うのだよ、このモンキー125は! 2018年7月、オールドウイングシリーズ第1弾として、スーパーカブC125よりも2か月だけ早く発表&発売されたモンキー125。思えばこのモンキー125とス[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
ヤマハの最先端技術の結晶、それがYZF-R1だ 今からちょうど10年前の2014年11月。イタリアはミラノで開催されたEICMAにおいて、7代目となるヤマハのフラッグシップ“YZF-R1”が華々しくデ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc 400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。 そんな400cc[…]
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
高いポテンシャルを持ちながら肩の力を抜いて乗れる二面性で大ヒット セローが登場した1985年は、オンロードでは本格的なレーサーレプリカブームが到来する頃でした。オフロードも同様で、パンチのある2ストロ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
人気記事ランキング(全体)
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
一定以上のスピードの車両を自動的に撮影する「オービス」 結論から言うと、基本的にバイクはオービスに撮影されても捕まらない。そもそもオービスはバイクを取り締まるつもりがない。ただし警察にもメンツがあるか[…]
第1位:JW-145 タッチパネル対応 蓄熱インナーグローブ [おたふく手袋] 2024年11月現在、インナーウェアの売れ筋1位に輝いたのは、おたふく手袋が販売する「JW-145 蓄熱インナーグローブ[…]
新色×2に加え、継続色も一部変更 ホンダは、水冷4バルブの「eSP+」エンジンを搭載するアドベンチャースタイルの軽二輪スクーター「ADV160」に、スポーティ感のある「ミレニアムレッド」と上質感のある[…]
寒い時期のツーリング 冬はライダーにとって、本当に過酷な季節です。急激に気温が下がったりしてきましたが、オートバイに乗られているみなさんは、どういった寒さ対策をしていますか。 とにかく着込む、重ね着す[…]
最新の投稿記事(全体)
今シーズンに続き富樫虎太郎選手を起用、新加入は木村隆之介 元MotoGPライダーの中野真矢さんが率いるレーシングチーム「56RACING(56レーシング)」が、2025年のレース活動概要を発表した。 […]
全日本ST1000とASB1000の両カテゴリーを制す! 開幕2連勝を飾り、常にポイントリードし最終戦を待たずにチャンピオンを決めた全日本ST1000クラスに比べ、ARRC ASB1000クラスは、ポ[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
ヤマハの最先端技術の結晶、それがYZF-R1だ 今からちょうど10年前の2014年11月。イタリアはミラノで開催されたEICMAにおいて、7代目となるヤマハのフラッグシップ“YZF-R1”が華々しくデ[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]