
現在、国内4メーカーのラインナップでクルーザーと言えば、売れに売れているホンダのレブルシリーズと、このヤマハ ボルトRスペックのみ。今や稀少な空冷ビッグVツインを搭載するボルトは、発売から間もなく10年を迎える。あらためて魅力に迫ってみよう。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:柴田直行 ●外部リンク:ヤマハ
ヤマハ ボルト RスペックABS 概要
【YAMAHA BOLT R Spec ABS】■全長2290 全高1120 シート高690(各mm) 車重252kg ■空冷4ストV型2気筒SOHC4バルブ 941cc 54ps/5500rpm 8.2kg-m/3000rpm 変速機5段リターン 燃料タンク容量13L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=100/90R-19 R=150/80-16 ●色:青 黒 ●価格:104万5000円
【ライディングポジション】シート高は690mmと低く、しかも車体中央が絞り込まれているので足着き性は良好。ハンドル幅はかなり狭く感じる。[身長175cm/体重68kg]
[◯] 優秀なハンドリングと鼓動感がベストマッチ
このボルトシリーズ、カフェレーサー風のCスペックやレトロスクランブラーのSCR950など、派生モデルを次々と増やしたが、現在は上位機種のRスペックのみがラインナップに残る。ボバースタイルのシンプルな車体に、今や稀少となった941cc空冷V型2気筒を搭載しており、都市近郊のショートライドに的を絞ったというクルーザーだ。
まずはエンジンから。この狭角60度Vツインは、最高出力こそ54psと400cc並みながら、最大トルクは80Nmもあるので、クラッチをつないだ瞬間から突進する。とはいえ、それはスロットルを大きく開けた場合の話だ。基本的にレスポンスは右手に忠実で、低回転域からマナーよく調教されている。そして、リジッドマウントかつバランサーレスにもかかわらず、体に伝わる不快な振動はほとんどなく、二つのピストンと重いクランクが実直に力を生み出しているような、味わい深い鼓動感だけを伝えてくる。タコメーターがないので計算したところ、トップ5速・100km/hでの回転数はおよそ3300rpm。これは最大トルクの発生回転数に限りなく近く、街中ではその辺りまでを多用していた。
続いてはハンドリングだ。252kgという車重は、レブル1100TのDCT仕様より4kg重く、サイドスタンドからの引き起こしでそれを実感する。だが、走り出してしまえばそこまでの重さを感じさせず、スイスイと走れてしまう。低速域では舵角の付き方が早く、人によっては切れ込みやすいと感じるかもしれない。だが、慣れてしまえばこれを生かし、軽い入力でコーナリングできるようになる。リジッドマウントの効果かフレームの剛性は高く、高速コーナーも少ない揺れ幅で難なくクリアしていく。前後のサスセッティングもこの良好なハンドリングを助けており、タイヤのグリップ力も含めてシャーシに不満はなかった。
ブレーキは、この重い車体を難なく制動させるほど強力だ。リヤは低速域でのみ、初期タッチがやや唐突でUターンがしづらかったが、それを除けば基本的には扱いやすい。
[△] バンク角の少なさをうらめしく思うはず
自然で扱いやすいハンドリングに気を良くして車体を寝かし込んでいくと、あっという間にステップが接地してしまう。とはいえ、これだけ低いフォルムながらリヤからの突き上げは許容範囲内にあり、操安性と乗り心地とのバランスは良好だ。
[こんな人におすすめ] これでラストか。空冷Vツインを買うなら早めに
電子制御の進化によって快適性や安全性が向上した今だからこそ、ボルトの「素の味わい」にハッとさせられた。引き算の美学とでも言おうか、SR400に近い存在であり、できればこの先も新排ガス規制に適合させて残してほしい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
ライディングポジション変更のおかげで操縦性も大幅アップ! 私が参戦する全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスは、5月下旬にシーズン初戦を迎え、私自身も今季のさらなる走りの進化に期待しているのですが[…]
125ccスクーターよりも力強い発進加速、街中で光る静けさ ホンダがパーソナルユース向けに国内リリースした電動スクーターの第2弾「CUV e:」は、第1段の「EM1 e:」が50cc相当の原付一種だっ[…]
ヤマハNMAX155試乗レビュー この記事では、ヤマハの原付二種スクーターから、NMAX ABS(125)の2018年モデルについて紹介するぞ。 ※以下、2018年7月公開時の内容に基づく 【NMAX[…]
疲れない、頭痛知らずのフィッティング技術! SHOEIの「Personal Fitting System(以下P.F.S.)」は、十人十色で異なるライダーの頭部形状に合わせたフィッティングを行う同社の[…]
ホンダPCX/160(2020/2021)比較試乗レビュー この記事では、ユーロ5に対応するため全面的に刷新し、第4世代となった2021年モデルと前年にあたる2020年モデルについて比較して紹介するぞ[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたやまは「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
ヤマハNMAX155試乗レビュー この記事では、ヤマハの原付二種スクーターから、NMAX ABS(125)の2018年モデルについて紹介するぞ。 ※以下、2018年7月公開時の内容に基づく 【NMAX[…]
あの頃の中型 青春名車録「2ストの台頭」(昭和55年) 1970年代(昭和45年~)、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共[…]
人気記事ランキング(全体)
50年の眠りから覚めたBSA、復活のファーストモデルがゴールドスター 世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。輸入を手掛けるウイングフットが「BSA ゴールドスター」を取り扱い“ほぼ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
シリーズ累計で約3万台を生産したW1の系譜 約9年に及んだ販売期間の中で、W1シリーズの人気が最高潮に達したのは、ペダルの配置が左:シフト/右:リヤブレーキに改められたW1SA。それに次ぐのはツインキ[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたやまは「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
最新の投稿記事(全体)
日本でも人気、コンパクトな車体と味わい深いエンジンの軽二輪モデル カワサキは欧州において、日本でいう軽二輪のレトロバイク「W230」と「メグロS1」の2026年モデルを発表した。注目はW230のニュー[…]
ヤングマシン電子版2025年9月号[Vol.634] 【海外超速報】◆ついに本気のネオクラ来た!! スズキGSX-8T/TT◆待望のゴリラ125登場? ホンダGORILLA125(MONKEY125 […]
1位:直4ネオクラシックZ400RS最新情報/予測 最強400ccモデルであるニンジャZX-4Rをベースとした直列4気筒のヘリテイジネイキッド「Z400RS」(仮称)が開発されているという噂。77ps[…]
スズキ バンディット400:GSX-Rのエンジン流用ネイキッド 59psというクラス最強のパワーを持ち、1984年に華々しく登場したGSX-R。 レーシーに設定されたこのマシンの心臓部の実用域を強化し[…]
トリックスター初となるハーレー用マフラー トリックスター初となるハーレー用マフラーが、X350向けにリリースされた。今回、初の試みとして“ツインタイプ”のサイレンサーが採用されている。 X350の特徴[…]