
’80年代――あの頃のバイク文化は、レースの文脈と切っても切り離せないものだった。本記事では、当時のライダーを熱狂させたレーサーレプリカモデルから、ヤマハの5バルブエンジン搭載車両、FZ750を紹介する。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
「GENESIS」でゼロからのスタート〈ヤマハ FZ750〉
いかにもヤマハらしい、曲線を多用したフォルムと美しいデザイン。’84年秋のケルンショーでデビューしたFZ750は、レーサーレプリカ全盛の時代に大人しすぎる印象さえ与えたが、実はレース志向の強い、勝利へのこだわりが凝縮した一台だった。
FZ750の源流は、そもそもレーサーだった。’80年代に入ると、ホンダの楕円ピストン8バルブエンジンに対抗すべく、500ccV型4気筒7バルブの研究がスタート。その後TT-F1レースに準じた750cc並列4気筒5バルブの開発プロジェクトに引き継がれ、FZ750という市販モデルに姿を変えて結実する。
世界初の5バルブエンジン。さらに大胆な車体レイアウト「GENESIS」(ジェネシス)を初めて採用した。35度前傾シリンダーの水冷直4をさらに10度寝かせて搭載し、通常のタンク位置にダウンドラフトキャブとエアクリーナーを設置することでストレートな吸気を実現。燃料タンクは前傾エンジンによって生まれたシリンダー背面の空間に収めた。これによりハイパワーやマスの集中化など、様々なメリットが生まれた。現代のヤマハに通じる「人機一体」の先駆けである。
デビュー翌年の’86年、デイトナで優勝し、国内でもTT-F1や8耐で高い性能を見せつけた。ヤマハ4スト新時代はこのFZから始まったのである。
【’85 YAMAHA FZ750】■水冷4スト並列4気筒DOHC5バルブ 749cc 77ps/9500rpm 7.0kg-m/6500rpm ■車重209kg ■タイヤサイズF=120/80R16 R=130/80R18 ●当時価格:79万8000円
【前傾45度+ダウンドラフト】専用設計の水冷直4を、鋼管フレームに搭載。45度前傾したエンジンで前輪荷重を稼ぎ、重い燃料タンクを車体中心に近付けた。放熱効果の高いベンチレーテッドディスクや、ラジアルタイヤも採用。
【IN×3+OUT×2=5VALVE】吸気3+排気2バルブの5バルブ。理想的な燃焼室を実現し、欧州仕様は102psを発生した。
【#21 Kenny Roberts & Tadahiko Taira】’85鈴鹿8耐は、K・ロバーツと平忠彦という夢のタッグが実現。FZベースの#21 FZR750でトップを快走するもラスト30分で無念のリタイヤ。勝利はガードナー+徳野とRVFの手に。
【#4 Eddie Lawson】’86デイトナではE・ローソン+FZ750がレイニーとシュワンツを抑え、激勝。
ヤマハ FZ750
’85 ヤマハ FZ750:初期型
【’85 YAMAHA FZ750】黒フレームとバイアスタイヤの輸出仕様。アンチダイブ機構は非装備。
’87 ヤマハ FZ750:フルカウル化
【’87 YAMAHA FZ750】フルカウルと集合マフラーを装備。前後ディスクは穴空きタイプに。
’89 ヤマハ FZ750:足まわりを強化
【’89 YAMAHA FZ750】欧州専用となり、中空3本ホイールや4ポットキャリパーで武装した。
’89 ヤマハ FZ750P:白バイにも供給
【’91 YAMAHA FZ750P】白バイ仕様も存在。ハーフやフルカウルのほか、ネイキッド版もあった。
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