
“4ストロークこそ上級”。そんな時代にRZが待ったをかけた。軽量な車体にピーキーな2ストロークユニットを抱き、大排気量車を追い回す快感。’80年代はレーサーレプリカ熱が沸騰した時代だ。本記事では、HRC開発のRS250Rと各部を共通化し、レーサーモデルへの憧れを煽ったホンダ NS250Rを取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
- 1 決定版はやっぱりロスマンズ‼〈ホンダ NS250R〉
- 2 ホンダ NS250Rの系譜
- 3 ホンダ NS250R 兄弟モデル
- 4 [連載]青春名車オールスターズに関連する記事
- 5 「2スト全盛期を代表する傑作」1986ホンダNSR250R:レーサーに保安部品を付けただけ!【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 6 「ハンドリングのヤマハ」誕生:起死回生のTZレプリカ、1985ヤマハTZR250/R【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 7 「2ストV3の咆哮」1985ホンダNS400R:『バリバリ伝説』でも話題を呼んだマシン【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 8 「2スト最強の500レプリカ」1985スズキRG500Γ(ガンマ):炸裂パワーのスクエア4【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 9 「究極のレーサーレプリカ!」1984ヤマハRZV500R:気分はケニーのYZRだった【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 10 「唯一のタンデムツイン(前後2気筒)」栄光のチャンピオンレプリカも:1984カワサキKR250/S【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 11 「レーサー“RS”と同時開発」WGPの興奮がそのままに:1984ホンダNS250R【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 12 「カウル&セパハンの先駆け! 」2ストレーサーレプリカの代名詞:1983スズキRG250Γ(ガンマ)【あの素晴らしい名車をもう一度】
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決定版はやっぱりロスマンズ‼〈ホンダ NS250R〉
’83年、ホンダは初の2スト250ccロードスポーツ、MVX250Fを送り出したが、不振に終わった。意地のホンダは早くも1年後、威信を賭けたマシンをリリースする。
NS250Rは、クラス自主規制上限の45psを発生する新開発のV型2気筒を搭載。空力を意識した滑らかな形状のフルカウルに加え、ホンダ初のアルミフレームも採用した。そして車名はワークスレーサーと同じ「NS」を襲名する。
この車名は伊達ではない。開発はHRCの市販レーサーRS250Rと並行して行われ、エンジンやフレーム、サスペンション、ブレーキなどの基本設計を共通化。これを公道向けに手直しして搭載した。エンジンはボア&ストローク、シリンダーレイアウト、吸排気系の取り回しなどがRSと同一。シリンダーは、WGPマシンNS500の技術をフィードバックしたNSシリンダーを採用した。内壁のニッケル素地にシリコン・カーバイトメッキを用いることで、軽量なアルミ製一体成型シリンダーを実現。高い耐久性と安定したパワーの持続に成功した。
ATACと呼ばれる排気デバイスもNS500譲りのメカニズムである。電気的にエンジン回転数を検知し、自動的に排気容積を変化。弾ける高回転パワーはそのままに低中回転のトルク不足を補うシステムだった。しかし、2スト特有のピーキーさは変わらず。ホンダに限らず、2スト車の過渡特性が完成の域に達するのはまだ少し先の話である。
なお11万円安価なノンカウルのFも用意。ただし鉄フレームを採用する。
【HONDA NS250R】’86年には、スペンサーのWタイトルを記念した限定モデルが4000台で登場。チャンピオンマシンがまとっていた英国の煙草メーカー「ロスマンズ」のカラーにファン垂涎。400のロスマンズと違い、白ベースとなる。■水冷2ストV型2気筒 ピストンリードバルブ 249cc 45ps/9500rpm 3.6kg-m/8500rpm ■144kg ■タイヤサイズF=100/90-16 R=110/90-17 ※写真は’86年モデル
アルミ一体成型のNSシリンダーほか数々の最新技術を投入し、一気に進化した水冷90度Vツイン。クランケースはレーサーのRSと全くの同一。ミッションはギヤレシオのみ変更されている。排気デバイスのATACは1気筒にのみ採用。
アルミ一体成型のNSシリンダーほか数々の最新技術を投入し、一気に進化した水冷90度Vツイン。クランケースはレーサーのRSと全くの同一。ミッションはギヤレシオのみ変更されている。排気デバイスのATACは1気筒にのみ採用。
サイレンサーは2本出しで右側がアップ、左側がダウンタイプとなる。
サイレンサーは2本出しで右側がアップ、左側がダウンタイプとなる。
GPマシン譲りのNSコムスターホイール。前方からの風を整流するFフォークスポイラーに、ノーズダイブを抑えるTRACも採用する。
GPマシン譲りのNSコムスターホイール。前方からの風を整流するFフォークスポイラーに、ノーズダイブを抑えるTRACも採用する。
MVXとは全く異なる、レーシーな分割式3連メーター。マウントステーには軽量化のために穴が設けられている。セパハンも採用。
MVXとは全く異なる、レーシーな分割式3連メーター。マウントステーには軽量化のために穴が設けられている。セパハンも採用。
高性能を保証する「レーサーと同時開発」という言葉に当時の少年は熱狂。以降、この手法が大流行することになる。白ボディに1本の赤いラインのルックスも衝撃的だった。黄色ゼッケンとスポンサーステッカーはオプションで販売。
MVX250F:先代もWGPレプリカだったが…
RZの出現により250クラスの勢力図は4ストから2ストへ移行。ホンダは4ストのVTで対抗していたが、ついに’83年、同社初の本格2ストスポーツMVX250Fを投入する。WGPでタイトルを獲得したNS500と同じV型3気筒という挑戦的なエンジンを採用(ただしMVXは前2後1気筒でNSとは逆のレイアウト)。意欲作だったが、VTに似たビキニカウルの外観が不評。スズキΓの登場もあり、わずか1年でNS250Rにバトンタッチすることになった。
【’83 HONDA MVX250F】主要諸元■水冷2ストV型3気筒ピストンリードバルブ249cc 40ps/9000rpm 3.2kg-m/8500rpm ■138kg ■タイヤサイズ F=100/90-16 R=110/80-18 ●価格:42万8000円
【’83 HONDA MVX250F】主要諸元■水冷2ストV型3気筒ピストンリードバルブ249cc 40ps/9000rpm 3.2kg-m/8500rpm ■138kg ■タイヤサイズ F=100/90-16 R=110/80-18 ●価格:42万8000円
ホンダ NS250Rの系譜
’84 ホンダ NS250R
【’84 HONDA NS250R】初代は’84年5月に発売。性能はもちろん、レーサー風の白フルカウルも話題に。
【’84 HONDA NS250R】初代は’84年5月に発売。性能はもちろん、レーサー風の白フルカウルも話題に。
【’84 HONDA NS250R】白と同時に、珍しいシルバーの車体色もラインナップ。ラインとフォークカバーが黒になる。
【’84 HONDA NS250R】白と同時に、珍しいシルバーの車体色もラインナップ。ラインとフォークカバーが黒になる。
’86 ホンダ NS250R
【’86 HONDA NS250R】限定カラーを発売。白ロスマンズで、ワークスマシンと若干カラーが異なる。諸元は変わらず。
【’86 HONDA NS250R】限定カラーを発売。白ロスマンズで、ワークスマシンと若干カラーが異なる。諸元は変わらず。
ホンダ NS250R 兄弟モデル
’84 ホンダ NS250F
【’84 HONDA NS250F】カウルレスのFも同時発売。Rと違い、鉄製のフレームとスイングアームを採用した。
【’84 HONDA NS250F】カウルレスのFも同時発売。Rと違い、鉄製のフレームとスイングアームを採用した。
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