
今や稀少な水冷Vツインを搭載するスズキのSV650シリーズが、新排ガス規制に対応した。最高出力/最大トルク/燃費がそれぞれ微減し、車重は+2kgの199kgへ。また、車両価格も1万7600円アップしている。カフェレーサー風のSV650Xで’22年型の実力をチェック!
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:スズキ
[◯] Vツインの味わい不変。Xはスタイリッシュだ
初出は’99年という非常に長い歴史を持つスズキのSV650。国内の新排ガス規制に対応した結果、最高出力は76.1→72psに、最大トルクは64→63Nmにそれぞれダウンしている。とはいえ、直接のライバルであるヤマハのMT-07が72ps、カワサキのZ650が68psなので、スペック的には全く見劣りしないのだ。
【SUZUKI SV650X】■全長2140 全高1090 軸距1450 シート高790(各mm)車重199kg ■水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ 645cc 72ps/8500rpm 6.4kg-m/6800rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●色:黒 ●価格:84万7000円
【現代に息づく水冷Vツインカフェレーサー】グラディウス(650)の後継として’16年に登場したSV650。その派生モデルとして’18年より販売されているのが、ビキニカウルやセパレートハンドル、タックロールシートなどを採用し、カフェレーサー風に仕立てたSV650Xだ。SV650との差額は4万4000円で、カウル付きながら車重199kgは共通だ。
Vツインゆえに車体は非常にスリムで、足着き性はご覧のとおり優秀。セパレートハンドルによる上半身の前傾により前輪荷重を稼ぎやすい。[身長175cm/体重68kg]
さて、今回試乗したのはビキニカウル&セパレートハンドルの派生車、SV650Xの方だが、エンジンについてはバーハンドルのSV650と共通である。今や稀少な645cc水冷90度V型2気筒は、厳しい排ガス規制をパスしてなお小太鼓のようなビート感は健在で、1万rpmから始まるレッドゾーンまで小気味良く吹け上がる。新旧を直接比較していないので断言はできないが、高回転域のパワーが無理に抑えられたような印象はほぼなし。また、上まで引っ張らなくても、早めにシフトアップしてコーナーを立ち上がった方が楽しいと感じられたのは、最大トルクの発生回転数が8100→6800rpmへとだいぶ下がった影響もあるだろう。スロットルレスポンスは右手の動きに忠実で、トラクションコントロールは採用されていないが、ウェット路面でも自信を持ってコントロールできる。
ハンドリングについては、’22年モデルでそれに関係しそうな変更点はなし。車重が2kg増えているが、これは直接乗り比べても分かるかどうかだろう。SV650Xは、セパレートハンドル化に伴いサスペンションのセッティングも見直しているとのことで、フォークにはプリロードアジャスターが与えられている。前傾姿勢によって自然と前輪荷重が増えているので、それを意識しつつセルフステアを妨げないようにコーナーへ進入すると、気持ち良く旋回姿勢へ移行できるのだ。
こうしたスポーティな操縦を影ながら支えているのが、フロントブレーキだ。SV650は’19年モデルからキャリパーが2→4ピストン化され、Xもこれを踏襲。2ピストン時代はペースを上げるとやや制動力が不足気味だったが、これが4ピストン化で解消された。またコントロール性も優秀で、安心感は非常に高い。
スズキ SV650X ディテール解説
【排ガス規制対応で最高出力、燃費ともダウン】ツインプラグやレジンコートのピストンなどを採用する645cc水冷90度V型2気筒エンジンは、新排ガス規制対応により最高出力は76.1→72psに、WMTCモード値は26.6→24.4km/Lへと微減している。外観上ではエキパイ集合部後方の触媒がやや大きくなった印象だ。
フロントキャリパーは’19年に片押し式2ピストンから異径対向4ピストンへ。ディスク径はフロントφ290mm、リヤφ240mmだ。リヤのプリロードは7段階に調整可能。標準装着タイヤはダンロップのロードスマートⅢで、指定空気圧は前225/後ろ250kPaとやや低め。
【Xだけの特別な装備。これぞカフェレーサー】Xのビキニカウルはフレームカバーとつながっているようなデザインであり、まるでロケットカウルのようにも見える。
6段階の輝度調整が可能なLCDモノクロメーター。瞬間&平均燃費/航続可能距離/ギヤポジションインジケーターなどを備えている。
SV650Xはフォーク上端にプリロードアジャスターを設ける。セルボタンを短押しするだけでエンジンが始動するスズキイージースタートシステムを採用する。
タンクは容量14Lで、前方2本のボルトを外すと後端を支点に前側が浮かせられるので整備性に優れる。
ステッププレートやバー、ペダルについては、SV650がシルバーなのに対し、Xはブラックとして差別化を図る。
[△] イージーさ優先ならバーハンのSTDを
SV650Xに試乗するのは今回が初めてなのだが、バーハンドルのSV650が持つイージーな操縦性が薄らいでおり、少々面食らった。ヤマハのMT-07とYZF-R7との関係にも似ており、ライディングポジションが操安に与える影響の大きさを再確認した。
[こんな人におすすめ] これが最後のミドルクラスVツインかも!?
ホンダのVTRなき今、国内4メーカーで最小排気量の水冷Vツインと言えばこのSV650/X(とVストローム650/XT)だ。内燃機関が淘汰されそうな昨今、ますますレアな存在になるのは確実。パワー微減など些細な問題と言えるだろう。
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