トライアンフ ボンネビルT100の派生車である「ストリートスクランブラー」に試乗した。ボンネビルT100は’21年にユーロ5に対応しつつ55→65psとなったが、こちらは’19年にひと足早く同様のメニューを実施しており、’21年モデルは小変更のみ。ボンネビルT100とは異なるフロント19インチの走りやいかに?
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:トライアンフ
’21 トライアンフ ストリートスクランブラー
[◯] 大きなピッチングからバンク主体で旋回する
エンジンや車体など主要部分は共通のまま、構成パーツを変えることで多機種を展開するトライアンフのモダンクラシックシリーズ。以前試乗したボンネビルT100と今回のストリートスクランブラーとの違いは、主にフロントホイール径とマフラーのレイアウト、そしてライディングポジションの3点に集約される。いずれも往年のオフ車の外観に近付けるための大切な要素だが、実は走りまでスクランブラー的に変化していた。
ボンネビルT100の18インチから19インチへと1サイズ大径化されたフロントホイールと右2本出しアップマフラーによる高重心化、そしてハンドルとステップ位置の変更でアップライトになったライディングポジションにより、発生するピッチングはボンネビルT100よりも大きめだ。さらに舵角の付き方も穏やかなので、バンク角主体で大らかに向きを変えるハンドリングとなっている。これに対してボンネビルT100は素直に旋回するオンロードモデル的な特性であり、見た目だけでなく走りまで差別化を図っているのだ。
エンジンは900ccの水冷並列2気筒で、最高出力と最大トルクの発生回転数がわずかに異なるが、ほぼ共通と言っていい。ミドルクラス以上のパラツインの多くが270度位相クランクを採用し、このエンジンもその例に漏れないのだが、特にスムーズな回転上昇の中に混じる味わい深い鼓動感は、唯一無二と断言できる。ライディングモードはロード/レイン/オフロードがあり、オフロードにするとABSとトラクションコントロールがカットされる。ロードモードでもレスポンスは鋭すぎず、市街地から高速道路まで特に不満なく扱えた。
ブレーキは、’19年モデルでフロントキャリパーがニッシンからブレンボに変更されており、’21年型もこれを継続する。入力初期からコントローラブルで、シングルディスクながら十分な絶対制動力を発揮する。リヤキャリパーは初出の’17年型からニッシン製で、これも微速域から扱いやすく、ABSの介入も適切だ。
個人的に空冷時代から好きだったスクランブラー。その最新モデルはさらに味わい深く進化していた。
[△] シリーズ共通の熱さ。特に暑い日は気になる
ダウンマフラーのT100でも感じる足の熱さ。ストリートスクランブラーはアップマフラーなのでそれがより顕著に。暑い日ほど覚悟は必要だろう。それと、タコメーターがないのも気になるところ。純正アクセサリー群の中にも見当たらず。
[こんな人におすすめ] 全身コーデでカッコよく乗ってほしい
ネオクラシックの中でも確立された感のある”スクランブラー”というジャンル。トライアンフはスタイリングだけでなく走りでも差別化を図っており、そこに感心した次第。クラシカルなコーディネートでこの世界観に没頭してほしい。
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