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’21年分は完売!? なんて声も聞こえてくるほどの人気モデル、GB350。新世代のスタンダードネイキッドだ。STDに加えて、よりスポーティなSもラインナップに加わったのだが、気になるのはSTDとSがどう違うのか。そこでこの記事では大人気GB350シリーズのディテールを、丸山浩が比較しながら解説する。
●まとめ:ヤングマシン編集部(田宮徹) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ホンダ
【テスター:丸山浩】もはや説明不要なヤングマシンメインテスターで、現在はYouTube等でも大活躍。元全日本レーサーの肩書きも持つが、実は若い頃はバリバリの旅好きだった。
スタイリング
【’21 HONDA GB350】主要諸元■全長2180 全幅800 全高1105 軸距1440 シート高800(各mm) 車重180kg(装備) ■空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ 348cc ボア×ストローク70mm×90.5mm 圧縮比9.5 20ps/5500rpm 3.0kg-m/3000rpm 変速機5段 燃料タンク容量15L ■タイヤサイズF=100/90-19 R=130/70-18 ●価格:55万円
【’21 HONDA GB350S】主要諸元■全長2175 全幅800 全高1100 軸距1440 シート高800(各mm) 車重178kg(装備) ■タイヤサイズF=100/90-19 R=150/70R17 ●価格:59万4000円
【’21 HONDA GB350】
【’21 HONDA GB350S】
【’21 HONDA GB350】クラシカルなイメージをまず高める要素となっているのは、シリンダーが直立したバーチカルシングルエンジン。前後ホイールはスポークではなくキャストタイプだが、リヤサスはツインショックで昔らしさを演出。
【’21 HONDA GB350S】Sは、STDとほとんど同じ…ように見えて、比べると細かい部分までけっこう違うという印象。マフラーの跳ね上がる角度まで専用化しているところに、ホンダの(インド市場に対する)本気度を感じずにはいられない。
カラーバリエーション
STDはブルー/ブラック/レッドの3色展開
【STDカラーバリエーション】マットジーンズブルーメタリック(上左) マットパールモリオンブラック(上右) キャンディークロモスフィアレッド(左)
Sはグレーとブラックの2色
ライディングポジション&車格
STDとSではライディングポジションに大きな差があり、これが走りやイメージにも大きな違いを与える。STDについては、バイクにまたがるというよりは”座る”という感じで、ライダーが積極的に運転操作をするというよりは、バイクなりに走らせるという雰囲気。バイクをスポーツ性のある趣味の乗り物としてではなく、生活の一部とする場合には、むしろこのほうがマッチするだろう。
このSTDからSに乗り替えると、これまで慣れ親しんできたスポーツバイクとしての”普通”を感じられる。ステップはバック&アップされ、しっかりステップワークができるようになる。ハンドルはグリップ位置が低めかつ前になり、その結果としてライダーがステアリング操作をして積極的に操ろうという気持ちが湧いてくる。これは、フロントタイヤが向くままハンドルに手を添えるといったイメージのSTDとは大きな違い。趣味の乗り物としてのスポーツ性が、ライディングポジションで演出されているわけだ。
【STDライディングポジション】足を下ろしたときにステップやペダルはほとんど干渉しないが、サイドカバーの張り出しがなければもっと足着き性は高まるはず。とはいえ、両足の母趾球がしっかり接地する。ハンドルは非常に近く、上半身を起こしたまま手を伸ばしたところにグリップを配置した感じ。
【Sライディングポジション】ステップを避けるために、足をほんの少し前または後ろに下ろす感覚。シートやサイドカバーもSTDより少し張り出しているため、STDと比べてほんの少し足着き性は悪い。ただし、操るということに関してはSのほうが上。ステップワークやハンドル操作をする気になる。
ホンダが公表しているライディングポジションの比較図。具体的な数値は不明だが、ここからもステップの前後上下方向に対する差と、ハンドルの前後差がとくに大きいことが確認できる。
STDがデビューしたときにも触れたのだが、STD/Sのハードルを高めてしまっている唯一の要素を挙げるなら、それは”車格”。意外と大柄で、足着き性もそれほどよくない。もっと足が着きやすければ、これだけ乗りやすいバイクなら小柄な女性でも楽しくライディングできるはずだし、それによってもっとたくさんのバイク好きを生むきっかけになってくれるはずだ。
ただし、車格があるのは悪いことばかりではない。このバイクのユーザーとなるのは、初心者や女性ばかりではない。例えば、これまで長年バイクに乗ってきたベテランが、いわゆるダウンサイジングでGBに落ち着こうという場合、250ccクラス的なサイズ感では満足できないと思うのだ。ビッグバイクである必要はないけど、それなりの車格は必要。これは若い世代の初心者でもカラダが大きい男性には当てはまる。
ところで、STDとSではタンデムしたときの雰囲気もちょっと違う。STDは生活必需品的なデザインのグラブバーがあるおかげで、後ろの相手が(あるいは逆に前の相手が)誰であれあまり気にならない。言っちゃ悪いが、後ろに男を乗せるなら荷物扱いできる。対してSは、密着しているほうが乗りやすく、男同士よりはやっぱり…なんて考えてしまう。このあたりにも、生活の一部に存在するSTDと、趣味のスポーツバイクとして設計されたSの違いを感じてしまうのだ。
エンジン/足まわり
【エンジン】新開発のエンジンはSTD/S共通。振動を抑制するバランサーをクランクシャフト前方に加えてメインシャフトにも配置。オフセットシリンダーも採用。※写真S
【マフラー】STD[左]とS[右]ではマフラーの角度とカバーのデザイン処理などが異なる。Sのほうがわずかに跳ね上げられ、別体式カバー以外をブラックアウトして精悍なルックスに。
【フロントフォーク&ブレーキ】フロントフォークは正立。フロントブレーキは310mm径シングルディスクに片押し2ポットキャリパーの組み合わせ。もちろん現代のバイクなので前後ABSを搭載。※写真左STD/右S
【タイヤ】STDがダンロップ製GT601、Sがメッツラー製ツアランスネクスト。STDの130/70-18に対して、Sの後輪は150/70R17。タイヤ外径をほぼ変えずにリヤホイールを17インチ化し、ラジアルタイヤを履かせた。※写真Sリヤ
主要装備&その他ディテール
外装類については、Sは前後フェンダーとサイドカバーをSTDのスチール製から樹脂製に変更しつつ新たにデザインするなど、燃料タンク以外はほぼ専用化されている。FIカバーの処理やフロントフォークブーツの有無(Sのみ標準装備でSTDはオプション設定)など、実車を見比べると次々に相違点が発見される。
灯火類の変更にも、ホンダのこだわりを感じずにはいられない。一般的には、車名に”S”が付く程度の派生モデルならウインカーやテールランプなどは共通化されているものだが、GBは違う。まぁ、STDのテールランプはリヤフェンダーにボルトオンされているから、フェンダーを専用化するならついでに…という流れもわからなくないが、それにしてもずいぶん手が込んでいる。Sに細身のウインカーを採用して、細かいパーツからもスポーツ性を感じられるように仕立てているのは、もはやさすがとしか言いようがない。
シートについても、表皮変更だけだろう…と思いきや、こちらも内部形状から異なる。Sはタンデム側の下部にテールランプが入り込んだデザイン。前後一体型シートのうちリヤ側の違いはわかりやすいが、見比べると前側の幅まで専用化されている。つまり、完全なる別物が使われているのだ。
【フロントウインカー】フロントウインカーにはポジションランプ機能が与えられ、STD[左]は周囲がリング状に点灯。ウインカーやハザードにすると中央部が点滅する。※写真右S
【ちなみにサイドカバーを外すと…】左側サイドカバーはカギ付きで、「もしや小物入れ!?」と思いきや、中にはバッテリーが。整備性を向上させるためのカギだったりする。
【シート】シートは表皮だけでなくベース部から専用化され、前端部はS[右]のほうがややワイド。ちなみに丸山氏によれば「Sのほうが滑りにくくホールド性に優れる」とのこと。※写真左STD
【右ステップ】タンデムステップにつながるプレートとライダー側のステップを別体構造としたSTD[左]に対して、S[右]はプレートとステップを一体化。Sのほうが後方かつ上方に配置されている。
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