カワサキスーパーチャージドH2エンジン搭載

ビモータ テージH2試乗インプレッション前編【30年前のハブセンターステアリング革命復活】

ビモータ テージH2試乗インプレッション前編【30年前のハブセンターステアリング革命復活】

●文/翻訳:ヤングマシン編集部(Alan Cathcart) ●写真:Bimota – Avenidas/Loretta Dell’Ospedale & Davide Bianchi

ついに生産が開始された、スーパーチャージドエンジンとハブセンターステアの車体を掛け合わせたスーパーマシン・ビモータ テージH2に、ヤングマシン初登場となる英国人バイクジャーナリスト、アラン・カスカートが試乗した。

アラン・カスカート
[写真タップで拡大]

【テスター:アラン・カスカート】 英国人バイクジャーナリスト。オールドレーサーやGPワークスマシン、各種市販車など試乗経験の豊富さは世界でも随一だ。

231ps過給エンジン&乾燥重量207kg

「テージH2」の高さ840mmのシートにまたがり、身長180cmの私が信号待ちで両足を地面に接地させた時、最初に気付いたのはカーボン製ウイングの広がりだった。バイクの全幅770mmは、270km/hで18kgのダウンフォースをもたらす、この翼によるものだ。

私はビモータ本社があるリミニからほど近い丘陵道路でシリアルナンバー”0000002″のテージH2に乗って過ごした後、ビモータが30年前に発売した「テージ1D」などが並べられたミュージアムに立ち寄り、その翌日にはミザノGPサーキットを走ることになった。両日とも途中で雷雨に見舞われたが、テージH2のフルポテンシャルを試す前でなかったのは幸運だった。

ビモータ テージH2

【BIMOTA TESI H2】主要諸元 ■全長2074 全幅770 全高1155 軸距1445 シート高840±10(各mm) 車重207kg(乾) ■水冷4ストローク スーパーチャージド並列4気筒DOHC4バルブ 998cc 231ps/11500rpm(ラムエア加圧時242ps) 14.4kg-m/11000rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L ■キャスター21.3°/トレール117mm ブレーキ形式F=φ330mmWディスク+4ポットキャリパー R=φ220mmディスク+2ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/55ZR17 ●色:トリコローレ 黒 ●予想価格:850万円前後(欧州価格6万4000ユーロ) ●発売時期:未発表(欧州は’20年10月発売) [写真タップで拡大]

ビモータは’19年のミラノショーで劇的な復活を遂げ、その際にカワサキがイタリアンメーカーの株式を49.9%取得し、新しいコラボによる最初のモデルが過給エンジンを搭載する「テージH2」になることも発表した。

テージH2はこの’20年10月から生産が始まり、最終的には250台がリリースされる。月産20台のこのマシンは、カワサキ独自の遠心式スーパーチャージャーを搭載した998ccの4気筒を選択し、1.41barのブースト圧によって231ps(ラムエア加圧時242ps)を得た。ちなみに、このエンジンはユーロ4準拠であり、将来的にはユーロ5に適合する必要があるため、後継モデルは同程度のパワーが得られなくなる可能性もある。

H2エンジンの膨大なパフォーマンスをフレンドリーにするために、3つのライディングモード、双方向クイックシフター、9段階のトラクションコントロール、ボッシュの6軸IMU、ローンチコントロール、インテリジェントブレーキシステムがカワサキのマシンから引き継がれた。オーリンズ製の電子制御ステアリングダンパーを装備する。

そしてこの馬力を活かすために、バイクの前後鏡合わせのようなスイングアームとハブセンターステアリングのデザインを完全に最適化。フレームは廃止され、エンジンは背後に前後両方のショックユニットを取り付けた剛性メンバーとして活用される。

前後サスペンションはオーリンズ製フルアジャスタブルTTXで、前100mm/後130mmのホイールトラベルを持つ。207kgの乾燥重量は静止状態で53対47の前後配分となっているが、80kgのライダーが乗車すると50対50になるという。ステアリングジオメトリーはテレスコピックフォークの基準ではかなり極端な、キャスター21.3度/トレール117mm。

さて、私がかつてドゥカティの2気筒エンジンを搭載した「テージ1D」でレースをしたとき、最大の課題は高速安定性だった。直線でさえ路面の凹凸にぶつかった際にキックバックを受けることがあったのだ。フロントのホイールトラベル不足が主な理由だろうが、リヤから始まることもあり、その場合はさらにリカバリーが難しかった。当時のショックユニットが現在のものよりもはるかに性能が低かったことも影響しているだろう。その代わりに、他の誰よりも遅いハードブレーキングでさえサスペンションの動きは止まることなく、すべてが正常に機能し続けた。

それこそがサスペンション/ブレーキ/ステアリングの機能を分離して処理することができる「ハブセンターステアリング」のメリットだったのだ。

ビモータ テージH2

4気筒エンジンとフレームレス構造にハブセンターステアリング機構を組み合わせる。軸距はニンジャH2より5mm短い1445mm。フロントサスペンションは、車体下に沿った大きなリンクロッドでエンジン背後のショックユニットを伸縮させる仕組みだ。 [写真タップで拡大]

超高速からでも安定したブレーキングが可能

アドリア海に面したGPサーキットで、私は最初にH2エンジンのパフォーマンスを最大限に活用するというスリリングな体験をした。このパワーをテージH2のコンセプトに融合することにより、ストレートの反対側では遅く、ハードに、そして完全に安定したブレーキングを行うことができる。

そして私は、テージ1Dのトレードマークだったフラットなブレーキングが、テージH2ではわずかなフロントダイブを生じるようになったことに気付いた。これはブレーキのフィーリングを得るのに重要で、古い1Dでは必ずしも明瞭ではなかった部分だ。

これは1Dでもっとも慣れるのが難しいことのひとつだったが、テージH2では制動している感覚とフロントタイヤからのフィードバックがはるかに優れている。実は前日の公道走行でも、1Dのフロントホイールトラベルが80mmだったのに対し、100mmを確保したテージH2はより柔軟なフロントサスペンションになったことがわかっていた。これにより、驚くほど路面の悪いイタリアの田舎道でも優れた乗り心地が実現しただけでなく、バンプによるキックバックという最大の問題も解消されたのだ。

テージH2は他のどのバイクと比べても、遅くハードなブレーキングを可能とするだけでなく、路面のバンプを通過した際にもイメージした走行ラインからズレることはない。ミザノの高速コーナーでも何度かトライしたが、不安定な兆候を示すことはなかった。

気になったのは、カワサキH2に比べてスロットル全閉からのピックアップが激しすぎること。これは試作車ゆえだろうから、すでに予約された42台については解決してから出荷されるはずだ。

また、低速コーナーでは不安定な感じもしたが、これはフロントのジオメトリーとBSタイヤの相性かもしれないので、タイヤ次第で解決する可能性もある。ただ、いずれにしてもこのバイクは60km/hで走るようには設計されていないことを指摘しておく必要があるだろう。

その代わり、このバイクは300km/hからのブレーキングを遅らせることに恐れを感じなくていい。このスリリングなパフォーマンスを30年待つ価値はあったのか? 賭けてみるがいい。

ビモータ テージH2

上から見てもフレームが見当たらない。ステアリングヘッドはエンジンにマウントされた左右プレートから金属製のパイプフレームで支持。シートフレームもカーボン製で、各種電装部品が収まる。エンジンはエアボックスを含めてニンジャH2から流用か。 [写真タップで拡大]

ビモータ テージH2
[写真タップで拡大]

アルミ削り出しフロントスイングアームの左側。上のリンクロッドはキャスター角固定用、下側を通るロッドがハブセンターステアリング機構を司る。

ビモータ テージH2
[写真タップで拡大]

エンジン背後にマウントされた2本のオーリンズ製TTXショックユニットは、右側がリヤサスペンション、左側がフロントサスペンションを担当。車高調整も容易だという。

ビモータ テージH2
[写真タップで拡大]

ハンドルバーよりも広い左右一対のカーボンファイバー製ウイング。カウルも複雑なレイヤー形状だ。

ビモータ テージH2
[写真タップで拡大]

ボリュームのあるタンクカバーはカーボン製。ウインカー内蔵ミラーはニンジャH2と同じもののようだ。

ビモータ テージH2
[写真タップで拡大]

【電子制御はニンジャH2譲り】メーターユニットはカワサキのニンジャH2から引き継ぎ、電制もクイックシフター、9段階トラクションコントロール、6軸IMU、ローンチコントロール、KIBSなどすべて継承。電制ステアリングダンパーが追加された。

ビモータ テージH2試乗テスト、後編ではテージH2の生みの親、ピエルルイジ・マルコーニ氏を中心にビモータ復活までの歩みを振り返る。


※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

マシン・オブ・ザ・イヤー2021
マシン・オブ・ザ・イヤー2021

最新の記事

WEBヤングマシン|最新バイク情報