日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では斬新なフォルムと極太トルクで人気を博したヤマハVMAXと、そのライバル・カワサキエリミネーターについてレポートする。
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。
ヤマハ VMAX:何十年経っても色褪せない、凄さと気持ちよさ
ドロドロとアメ車を思わせるV4の鼓動感に、体がのけぞるほどの極太トルク。そして”力”を凝縮した斬新なフォルムで、長年高い人気を誇った1台がヤマハ VMAXだ。現代の目から見ても唯一無二の個性は輝きを放ち、まさしく名車と呼ぶに相応しい。
デビューは’85年。北米市場をターゲットに、ハーレーと競合しない独自の「ゼロヨン最速ドラッガー」をコンセプトに掲げた。旗艦ツアラーであるベンチャーロイヤルの1198ccV4に、吸気効率を高める新機構=Vブーストシステムを融合。ベンチャーの97psに対し、145psと超絶パワーアップを果たした。動力性能もトップクラスで、当時のヤマハ社内のデータによると、最高速度240km/h、ゼロヨン10.3秒を叩き出している。
北米のみならず世界的にファンを獲得したVMAXは、基本設計をほぼ変えずに’07年まで生産され、2代目に後を譲った。ニンジャ並みに在位期間が長く、中古車のタマ数は’80年代モデルとしては異例なほど豊富。年式/距離に応じた健全な相場で、価格もこなれている。97psの国内仕様とフルパワー逆車が存在し、引き合いが強いのはやはり後者だ。いずれ相場は上昇しそうだが、今ならまだジックリ選べるだろう。
VMAX:各年式のポイント
初期型 ’85~’86:5本スポーク
当時最強の145psを誇るマッシブアメリカンとして北米市場に投入。フロントが5本スポークで、リヤシートが薄いのが特徴だ。
2型 ’87~’89:ディッシュホイール
フラットなディッシュホイールを採用。エアダクトカバーの上半分をブラック仕上げとし、シリンダーの中央を銀に変更した。
3型 ’90~’92:日本仕様登場
’90年に国内仕様を追加。97psでVブーストは非装備となるが、日本では逆に扱いやすいとの声も。車名は「VMAX1200」を名乗る。
4型 ’93~’94:足まわり強化
フロントディスク径をφ282→298mmにアップ。異型4ポットキャリパーを獲得し、ブレーキを強化。フロントフォークも大径タイプとした。
5型 ’95~’02:カナダ140psへ
’95でクランクケースなどを変更。翌年ドライブシャフトの見直しでカナダは140ps、アメリカは135psに。国内は’98で絶版。
最終型 ’03~’07:デジタル点火
排ガス規制の強化で消滅かと思いきや、’03で対応。点火方式をCDI→デジタル制御とした。’07年型のファイナル仕様がラスト。
実例物件サンプリング〈VMAX〉タマ数豊富でまだまだお買い得
- 相場:50万円前後(約25万~90万円)
- タマ数:多い
累計生産9万台超と売れており、タマ数は潤沢。低年式で距離のかさんだ20万円台から、最終仕様の80万円前後まで選べる。’00年代の高年式車でも50万円台がボリュームゾーンと買いやすく、’80年代マシンとしてはトップ級に恵まれた状況だ。人気があり高額なのは、フルノーマルか気合いの入ったカスタム車のいずれか。この状態を維持して後世に伝えてほしい。
サンプル1:国内/逆車で差はない?
ブーストを持たない国内仕様。同価格帯に同年式の逆車が流通していることから、国内仕様と逆輸入車に極端な相場の差はない模様。
サンプル2:中心は高年式車
修復歴なしのフルパワー逆車で、しっかり整備した状態で販売。’00年前後の高年式車でも50万~60万円が相場なので手が出しやすい。
サンプル3:最終仕様は高値
プレストから国内に逆輸入された最終型は、タンクの赤いフレアパターンが特徴。やはり人気で、走行距離が少ない美車は高値がつく。
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