日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では4スト時代の幕開けを飾った記念碑モデル・ヤマハFZ750を中心にレポートする。
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。
FZ750:英雄と共にレースで活躍。ヒストリーも申し分なし
「PURE SPORTS」。テールに描かれた文字が、その素姓の全てを物語る。大型4ストスポーツを持たなかったヤマハが、レースでの勝利を狙って送り出した渾身作こそ「FZ750」だ。
メカは革新技術のオンパレードで、吸気×3、排気×2という世界初の5バルブ直4エンジンが目玉。中低速トルクを増強し、高回転化にも有利という夢の機構だ。以降も5バルブはYZF-R1や’00年代のモトGPマシンにまで継承され、ヤマハを代表するメカとなった。
さらに、全てをトータル性能のために集約する設計思想「GENESIS」(ジェネシス)を初採用した。これにより前傾45度エンジンによるパワーと優れた前輪荷重を実現。現代に通じる車体設計を先取りしていたのである。
ヤマハは、デビュー間もないFZをベースにしたFZR750を’85鈴鹿8耐に送り込み、伝説のドラマを生むことになる。それでいてレプリカらしからぬストリート感溢れるデザインも魅力。走りはズシリと重いものの、鋭さを感じさせ、昔ながらのレーサーという希有な味わいを示す……とストロングポイントが多々あるにもかかわらず、現代の相場は低め安定。タマ数が少なく選びにくいのがネックだが、いい個体があれば狙い目と言える1台だ。
FZ750:各年式のポイント
1. ’85モデル:ジェネシスの幕開け
専用設計の5バルブ+ダウンドラフト直4を鋼管フレームに搭載してデビュー。国内仕様が存在したが、1代限りで殿堂入り。
【あのテック21号ベース車】’85鈴鹿8耐に、FZベースのFZR750を投入。映画『汚れた英雄』で人気頂点の平忠彦、キングケニーが快走するも無念のリタイヤで伝説に。
2. ’87モデル:フルカウル化
欧州仕様は’87年型でフルカウルと集合マフラーを獲得し、レプリカスタイルに変身。前後ディスクは穴開きタイプとなった。
3. ’89モデル:足まわりを強化
中空3本ホイールや4ポットキャリパー投入。海外で人気は高く、’94年までに世界で3万9000台が生産されるロングセラーとなった。
輸出仕様は装備が違う
海外版は年式を問わず、シングルシートカウルを装備。初期型は、国内版のフレーム塗色がガンメタなのに対し、輸出仕様は黒となる。
実例物件サンプリング〈FZ750〉もっと評価を高めて多くの個体を残したい
- 相場:60万円前後(約30~90万円)
- タマ数:少ない
国内では常に一定の支持を受けているものの、相場はおとなしい。問題はタマ数。’90年当時のデータによると、国内登録台数は3000台以下。海外人気が高かったため、国内から輸出されたものも多く、日本に現存しているタマは激減しているのが現状だ。FZの貴重さが知れ渡れば、個体数をキープでき、恐らく相当数が眠っている海外から逆輸入される可能性もあるだろう。
サンプル1:カスタム車の場合
フロント17インチに換装。SP忠男コンバットマフラーやオーリンズリヤサスペンション、ブレンボのフロントキャリバーで武装し、パイプハンドルにカスタム済みだ。
サンプル2:足回りノーマルの場合
上と同じショップの販売車両。こちらの足回りはSTDのフロント16インチ。マフラーやハンドル、ステップ回りはカスタムされる。
サンプル3:逆輸入車の場合
フルカウルの最終FZ。特徴的な3本スポークホイールのスタイルを崩さない、FZR1000の純正足回りをインストールした流用カスタム。
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