筆者憧れの存在、その最新版に試乗

進化を続ける究極のハーレーコンプリートマシン【サンダンス スーパーXR1200-5】

冒頭から興奮し、勢いに乗ってまくし立ててしまったが、スーパーXRについて順序立てて説明しなければならない。

まず1983年、AMAロードレース選手権に復帰するハーレーダビッドソンは、ホモロゲーションを獲得するためにXR1000を発売する。前後各シリンダーに1つずつ装着されたデロルト製キャブレターと、左2本出しアップマフラーを備え、市販型は最高出力70PS、レースキットを組み込めば90PSを発揮した。

わずか2年間だけ生産されたXR1000は、ハーレー史に残るハイパフォーマンスモデルのひとつであることは間違いないが、スーパーXRはそのウィークポイントをことごとく解消し、柴崎氏によればH-Dワークスマシン「ルシファーズ・ハンマー」をも凌ぐポテンシャルを持つ。93年から開発&テストをスタートし、95年に正式発表している。

スポーツスター4カムエボリューション5速ミッションの腰下に、アルミ材削り出しのシリンダー、オリジナルのキャスティングで製作したシリンダーヘッド、軽量ピストンなどを組み合わせ、ボア・ストローク(排気量1200cc)をそのままに後軸100PS(トルク13kg-m)/エンジン出力120PSを発揮。

97年に製作すると、98年の鈴鹿8時間耐久レース参戦を果たし、その後のデイトナを2度制している同社の「デイトナウエポンII」にも積まれた、唯一無二の最強4カム・モーターである。

ハーレーでレース。そんなことは途方もないと言われた88年から始まったレース活動で培われた経験や技術、数々のXR1000を対策修理してきたことにより蓄積されたノウハウが注ぎ込まれ、独自のロッカーアーム比やバルブ挟み角などを採用。バルブ径は吸気49/排気42mmとし、圧縮比は当初11:1だったが、市場で出回るハイオクガソリンのオクタン値が下がってきたことで、現在は9.5〜9.8程度としている。

柴崎氏に教えてもらったのは、ポート形状の違い。XR1000は丸いが、スーパーXRでは慣性過給によって効率良くエアフローが得られる楕円ポートを採用し、低速から高速から幅広くトルクが得られ、一般公道でも扱いやすい出力特性を実現した。

ちなみに、レーサーであるXR750ではDポートが用いられ、弧を描くポート内のイン側とアウト側で生まれる流速の差を小さく抑える効果が楕円ポートやDポートにはあるという。

効率の良いエンジンは燃費にも優れ、23〜24/Lと実によく走る。つまり実用性に長け、普段乗りにも最適なロードスター。自在に操れて懐の深いスポーツスター本来の持ち味を失っていない。手段がもしあるのなら、20年以上前の自分に教えてあげたい。スーパーXRは君が見込んだとおり、素晴らしいぞ、と!!

豊富なレース活動、そして数々のXR1000を修理し獲得したノウハウや技術によって生み出された、サンダンスSUPER XRエンジンのロッカーアームカバー、シリンダーヘッド、シリンダー。エンジンフィーリングを司るといっても過言ではないシリンダーヘッドは、オリジナルのキャスティングで製作され、シリンダーは高強度ハイシリコン系のアルミ材削り出し。独自のロッカーアーム比やバルブ挟み角などを採用し、ボア89×ストローク96.8mmの1200ccで軸出力120PSを発揮する。バルブ径は吸気49/排気42mmで、XR1000(IN45/EX38mm)やXR750(IN44/EX37mm)より大きい。ポート形状は楕円型で、カーブするポート内部で起こる流速の変化を極力抑え、効率よく吸気できる。

今回、これまでニカジルメッキだったシリンダー内壁のコーティングが、摩擦抵抗1/7、硬度もより高い「Tスペックコート」(仮名)に進化した。シリンダーの中をのぞくと鏡面フィニッシュでピカピカ、見るからに摺動抵抗がないのがわかる。

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