レッドライン1万7000rpm、レブリミットは1万8000rpm!

ZXR250超えのショートストローク!カワサキ「ニンジャZX-25R」機械加工はH2やZX-10R並み【エンジン解説】

ニンジャZX-25Rの正式発表されたスペックは、クラス最強数値の45ps/15500rpmを示し、官能的な超高回転サウンドを約束している。一度は途絶え、現代に唯一の4気筒マシンとして蘇ったZX-25Rは、いかにして超高回転ハイパワーを得ているのだろうか。そしてクラス初採用のトラクションコントロールの威力とは?

車種別アーカイブ:カワサキ ニンジャZX-25R

インドネシア仕様の発表でスペックがある程度判明した段階から、このニンジャZX-25Rの4気筒エンジンの設計はヤバイ(いい意味で)ことになっているとわかっていた。なにしろ、まず異様なまでのショートストローク設計なのだ。

1989年に登場した初代ZXR250はボア×ストローク:48.0×34.5mmで、最高出力は45ps/15000rpm。1991年でモデルチェンジした際に49.0×33.1mmとし、燃焼室形状を変更することで燃焼効率を向上した。この際にも最高出力は当時の自主規制値いっぱいの45psをキープしていた。のちに自主規制値が変更されて40ps/15500rpmになったものの、これは当時の250ccレプリカで最もショートストロークな設定だった。

ところがニンジャZX-25Rの4気筒エンジンは、これをさらに上回る50.0×31.8mmという超ショートストローク設定になっているのだ。ボア×ストローク比は1.572となり、最高出力は45ps/15500rpm(ラムエア加圧時46ps/15500rpm)。タコメーターのレッドゾーンは1万7000rpmからで、レブリミッターは1万8000rpmで作動するという。

以前の記事ではZXR250(最終モデルは1993年)とニンジャZX-25Rのエンジンを外観から比較。シリンダーの長さが3mm短いことから、ショートストローク化の可能性を予見していた。

ボア×ストローク比で言えば、ZXR250(1991年以降)の[49×33.1mm(ボア×スト比1.480)]に対し、ニンジャZX-25Rは[50×31.8mm(ボア×スト比1.572)]。モトGPマシンと同じ異次元のボア×ストロークと言われるドゥカティ・パニガーレV4Rは[81×48.4mm(ボア×スト比1.674)]で、ほぼ同等のホンダCBR1000RR-Rは[81×48.5mm(ボア×スト比1.670)]。次にショートストロークなBMW・S1000RRは[80×49.7(ボア×スト比1.610)]だ。そして、その次にあたるヤマハYZF-R1の[79×50.9(ボア×スト比1.552)]をニンジャZX-25Rは超えている。ちなみに、レースで超高回転が求められるニンジャZX-6R(599cc)は67.0×42.5㎜で、ボア×スト比1.576だ。

ただし、現代のエンジン造りから言えば、単純に超高回転をすために超ショートストローク化を選ぶのではなく、必要なバルブ径(とポート径)を得るためにピストンボアを大きくしている側面もあるようだ。いずれにせよ、今までにないボア×ストロークの設定値が重要な要素となり、結果として超高回転エンジンを成立させていることに違いはない。

一方で、ニンジャZX-25Rの圧縮比は11.5とされ、CBR250RR(11.5)やニンジャ250(11.6)と同等。これはレギュラーガソリン指定という理由に加え、スムーズな吹け上がり&エンジンブレーキ特性も狙っているのではないだろうか。排気量の違いもあるので一概には言えないが、V4R(14.0)やRR-R(13.2)に比べると、インドネシア仕様のフルパワー50psに加えて、さらなるチューニングの余地もあるのではと思えてならない。

オールアルミシリンダーに鍛造カムシャフト、インコネル製の排気バルブ!

国内仕様の最高出力は45psだが、インドネシア仕様では50ps/15500rpm(ラムエア加圧時51ps/15500rpm)を発揮する。この数値がこのエンジンの基本的なポテンシャルだと考えれば、まさしく史上最強の250cc4気筒エンジンといって差し支えないだろう。

このパフォーマンスを造り込むために各部へと投入した技術もまたハンパない。ピストンは軽量なアルミ鋳造で、アルミシリンダー内壁にはスーパーバイク世界選手権で5連覇中のチャンピオンマシン・ニンジャZX-10Rと同様のメッキ処理が施されている。また、カムシャフトは鍛造で製作され、排気バルブにはカワサキが誇るスーパーチャージドエンジンのニンジャH2と同じインコネル材を使用。バルブ挟み角は28度と立てられ、吸気ポートには10Rが採用している2段階の機械加工を施して混合気のスムーズな流れを促進。さらに燃焼室にも容量誤差を減らすための機械加工が行われる。

高性能化には必然のダウドラフト吸気がよくわかるアングル。バルブは直打式で挟み角は28度。ダイレクトイグニッションなども判別できる。主要3軸は水平配置となっているが、エンジン自体が小さいため、フレーム搭載の自由度やスイングアーム長の確保に問題はないはず。スリーブレスのアルミシリンダーも左右幅の抑制に貢献し、2気筒並みのボディサイズに収めることに成功している。(画像提供:Webike THAILAND)

ZX-25Rのスゴさはエンジン内部にとどまらない。10Rと同じセンター吸気のラムエアインテークを配置しながら、フロントフォークの左側を迂回するニンジャH2と同様のダクトレイアウトを採用。ライドバイワイヤで駆動されるスロットルバルブはφ30mmという大径だ。250ccクラス初採用となるトラクションコントロールシステム(KQS=カワサキトラクションコントロール)は3段階に切り替え可能なほか、フルパワー/ローパワーを切り替えられるパワーモードも備える。SEに標準装備されるKQS(カワサキクイックシフター)は、ライドバイワイヤだからこそ実現できるアップ/ダウン両対応だ。

ほかにも、30段の大型ラジエターやアシスト&スリッパークラッチ、大容量チャンバーによって実現したショートマフラーなど、クラスを超えた装備は枚挙にいとまがない。

エキゾーストパイプは集合部までの中間地点あたりで連結し、低中速トルクを増強。クランクはZXR250より軽量になっているが、FI採用で大容量化したACGなどと組み合わせることで、回転質量としては同等だという。(画像提供:Webike THAILAND)

KTRC=カワサキトラクションコントロールは、250ccクラスに初めて投入された先進システム。3つのモードで幅広いライディング条件をカバーする。IMU(慣性計測装置)は搭載していないが、ソフトウェア的に車体の傾きなどを動的解析し、コーナーの傾きや勾配などに適応するというからスゴイ。

モード1はシステムの介入がもっとも少なく、コーナリング中のトラクションを制御。スポーツライディングで最も効率のいい駆動力を得る。モード2は、より早いタイミングでシステムが介入するバランス型だ。モード3では滑りやすい路面や悪路を想定した出力制御を行い、安心して走ることができるという。

クラス超えの高回転パフォーマンスを実現したディテールとは

2気筒のニンジャ250とパワーカーブを比較したところ。まったく別のクラスのバイクに思えるほどだ。ただし、ニンジャ250は低中速トルクが厚いので、扱いやすさや街中でのフレキシビリティでは勝るだろう。とはいえ超高回転域はニンジャZX-25Rが圧巻だ。

Ninja ZX-10Rと同様に吸気ポートの出口を2段階に加工。軽量な鍛造カムシャフトを採用し、φ18.9mmの吸気バルブとφ15.9mmの排気バルブを駆動する。排気バルブは高熱に強いインコネル製としたほか、3段レートのバルブスプリングを採用し、高いレブリミットを実現した。

メインキーと一緒に置くとピストンやバルブの小ささがわかる。アルミ鋳造ピストンはφ50.0mm、一番手前は吸気バルブ、その奥が排気バルブだ。直打式を採用することでバケット重量が加算されるが、パーツ自体が小さいことから、大排気量車のようにフィンガーフォロワーロッカーアームを採用しなくても超高回転を実現している。

センターレイアウトのラムエアインテークからフロントフォークの左側を迂回してエアボックスへと導かれるダクトレイアウトを採用。これはニンジャH2にも見られるレイアウトで、雨天時に水の侵入を防ぐ効果もあるという。

3次元的に湾曲して管長を整えたエキゾーストパイプを中間部で連結。低中速トルクを確保している。

4.5Lの大容量チャンバーを採用することにより、サイレンサーの小型化を実現。これにより、低重心化とマスの集中、さらには左右重量バランスも整える。サウンドチューニングも施され、ハスキーさをともないながら泣き叫ぶような超高回転サウンドとした。

駆動時には圧着、エンジンブレーキ時には離れるような力が働くことで、レバー操作力の低減と過度なエンブレ時のリヤのホッピングを防ぐアシスト&スリッパークラッチを採用。

車種別アーカイブ:カワサキ ニンジャZX-25R

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