オフロードマシンライダーなら林道ツーリングに行きたくなるものだが、ひとりで行く場合、様々な危険と隣り合わせになることも多い。『オフロードマシン ゴー・ライド』の連載でおなじみ、プロライダーの内山ユータロー先生が、林道ソロツーリングの心構え、事前準備や装備など、安全に楽しむための心得を指南。今回はコーナリングのテクニックと転倒時の注意点について解説する。
●文/まとめ:ゴー・ライド編集部 ●写真:関野温 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
(前ページより続く)
安全に走る=転ばないためのライテク
今回解説する心得は、「ソロで林道に入る危険」からいかに自らを守り、備え、どれだけ危険の芽を摘んでいけるかに重きを置いている。ここで挙げている林道走行のライテクも、いわゆる技巧的なライテクやレース走行のようなものではない。基本的に「転ばないように走る」ために重要なものばかりだ。
なぜなら、転ばないことこそがトラブル回避の一番の近道であるからだ。初心者はもちろん、これからソロ林道に挑戦してみたい林道ライダー、林道ソロツーリングには十分慣れているライダーでも、この「転ばないように走る」という目的の下で、一番自然体で無理のないライディングポジションやコーナリング、状況に合わせたボディアクションなどを、今一度しっかりと見直してみてほしい。技巧的なライテクやスピードの速い状況でのボディアクションなども、一番の基本である姿勢や動きがきっちりと身についていれば、マシン挙動の変化を頭と身体両方で理解できるようになり、さまざまな状況に対応できるようになるはずだ。
それでも、やむなく転倒してしまうことは往々にしてある。純粋に操作ミスやちょっとしたアクシデントなど防げない要因はどうしようもない。だが転倒してしまう要因の中から、自分で事前に予防できることをやっておくことはできる。たとえば集中力を切らさないための十分な休憩や補給などだけでも、転倒の確率を下げることが可能になるだろう。
心得その7:舗装路から林道へ入る注意点=”急”のつく動きをしない
林道においては、ダートはもちろん舗装されていたとしても、いわゆるオンロードと同じような走りをすると転倒の確率が上がってしまう。なぜならば、「林道」の名のとおり、舗装林道には落ち葉やコケや浮き砂、木の枝や小石などが散らばってることがあり、状況によってはダートよりも滑りやすく転倒の危険度が高いからだ。
舗装林道は舗装といえども自然の落下物やコケなどで非常に滑りやすい。普通の水たまりに見えても底面がヌルついてる場合もあり、注意が必要。
では、林道のダートを想定してのコーナリング実験。赤いコーンをコーナー入口に見立てて、コーナリング直前でブレーキングをした場合と、コーナリング前までにエンジンブレーキで減速した場合での車体の安定性を見てみよう。
[×]コーナー入口直前で一気にブレーキング
[1]スタート。アクセルを一定を保ち進む。[2]コーナー入口が近づいたのでブレーキを一気にかけ始める。[3]コーナー入口で減速完了するが、フロントに荷重がかかりすぎている。サスが完全に縮み切ってしまっており、タイヤがギャップを拾った場合には突き上げをくらい、フラついてしまうだろう。
[◯]コーナー入口までにエンジンブレーキで速度を落とす
[1]スタート。[2]一定に保っていたアクセルを戻し始める。[3]ブレーキは使わずエンジンブレーキのみで減速。制動距離は長くなるが、エンジンブレーキで減速できているので、フロントサスに余裕がありギャップにも対応できる。
心得その8:転倒時の注意点・対処
頑強なはずのオフロードマシンといえども、ちょっとした車両の破損で走行不能に陥る危険性がある。転倒時には車両よりも身体を優先して逃げるわけだが、その結果車両のどこかしらに不具合がでてしまうこともある。
分かりやすい破損はもちろん、その不具合に気づかぬまま林道を進んでしまうと、いきなり走行不能状態まで破損が進んでしまうこともある。もちろん林道ソロツーリング中にそうなっては進退窮まってしまう。そこで、転倒時にまずチェックしておきたいポイントを押さえ、最低限の対処を知っておこう。

クラッチレバーは折れた場所によっては走行が非常に困難に。通常走行ならばムリに走れる可能性もあるが、林道では転倒の可能性が増す。破損具合をまずチェック。

転倒でグニャリと曲がったクラッチレバー。ムリに直そうとすると折れるので、走れるようならそのまま走ろう。クラッチレバーは予備で1本持っていこう。
ハンドルバー自体が激しく曲がると通常走行は難しく、転倒の危険性が上がる。目視でチェック。
シフトペダルが内側に曲がってクランクケースに当たっていないかなどをチェック。
FI(インジェクション)車には転倒したことを感知する転倒センサーがついている。一度キーをオフにしてセンサーをリセットしないとエンジンがかからないので注意。
転倒時は無意識にキルスイッチを使ってエンジンオフすることが多い。エンジンをかける前にキルスイッチがオフになっているか確認しよう。
ラジエターが破損して液漏れなどが起きていないかチェック。下部が衝撃で外れていたり、転倒時に岩などに乗り上げひしゃげたりしていないかなど。
ラジエターホースが外れたり亀裂が入ったりしていないかチェック。ラジエターなりラジエターホースなりの破損が激しいまま気づかず走り続けるとオーバーヒートの危険性がかなり高まる。
灯火類の破損、点灯の有無をチェック。一般道での走行に支障をきたしたり、違反につながる可能性も。
〈補足〉フロントフォークの軽いズレはこれで直そう
ハンドルをまっすぐにしているのに、タイヤが少し曲がっているような状態なら、フロントフォークのクランプ部分の軽いズレが原因。直し方は2通り。
しっかりと両足で前輪をまっすぐに挟み、両腕でハンドルの位置をまっすぐに修正する。
ハンドルをまっすぐにした時にタイヤが右に曲がっているようなら、ハンドルを左に切って右サイドから前輪を足で押す。この時、蹴らずにジワっと押すのがポイント。
あなたにおすすめの関連記事
(前ページより続く) オフロードマシンのライディングフォームやポジションは、オンロードマシンとはまったく別モノ。オン歴の長いライダーなどは最初、その違いにとまどうかもしれない。またオフに乗り慣れている[…]
「最初のモデルに比べ大幅に乗りやすく、しっかりとオフロードマシンになっています。低速のトルクが扱いやすく、ゆっくりなスピードでも走れ、滑る路面でもエンジンのパワーがそのまま路面に伝わっていました。林道[…]
激軽の乾燥重量104kgが公道でもしっかり生きている! 実際、エンデューロレーサーをはじめとするコンペモデルを公道に連れ出すと、思いのほか拍子抜けすることが多い。伸びが足らず頭打ちの早いエンジンは、ギ[…]
今や、デュアルパーパスツーリングモデル、通称"アドベンチャー"というカテゴリーは完全に定着して市民権を得た。大排気量で背の高いのを皆さん器用に乗りこなしているけれど、やっぱり平均的日本人体型にはデカい[…]
手のひらに装着するだけでマメを防止 筆者がオフロードライディングをすると、小指の付け根辺りに必ずマメができてしまう。ハンドルグリップの握りかたが悪いせいなのだが、意識して握りかたを変えてみても、マメは[…]
最新の記事
- 1
- 2