本当に人間が乗れるシロモノなのか!? そう思わせるド迫力のトライアンフ ロケット3 Rがついに日本に上陸した。2019年にフルモデルチェンジが発表された、縦置きクランクの直列3気筒エンジン、2500ccを謳うメガクルーザー。さっそく試乗する機会を得たので速報レポートをお届けしたい。
300kgオーバーの重さを感じるのは最初の一歩だけ
新型ロケット3 R(ROCKET 3 R)を目の前にすると、あまりの威容に笑ってしまう。[2500cc]のエンブレムが装着されたエンジンは、原動機というよりも巨大な金属の塊に見え、240mm幅のリヤタイヤは見た目のためではなく、必要だから装着したのだろうな……と思わせる。ありえない話だが、アクセルを開けたらホイールスピンでもして吹っ飛ぶか後ろにひっくり返るのでは、というイメージが勝手に膨らみ、否応なしに緊張感を植え付けられる。
ところがサイドスタンドを払い、車体を引き起こすと、拍子抜けしてしまった。国産ビッグネイキッドと変わらないか、下手をするとロケット3のほうが軽く感じられるほど。装備重量で300kgを軽く超えるはずの車重を実感するのは、押し歩きの最初の一歩だけだ。あとはフリクションも感じさせず、スルスルと前に進むことができる。重心は低く、押し引きをしながら切り返すような場面でも、ライダーに緊張を強いるような雰囲気はほとんどなかった。
そういえば、2004年に登場した3気筒2294ccの初代ロケットIIIも、その巨体から想像するよりもはるかに扱いやすく、スポーティな走りもクルージングも余裕でこなすマシンだった。
アイドリングのまま6速まで加速していくモンスターエンジン
エンジンを始動すると、初代が重厚かつ柔らかい回転フィールだったのに対し、新型は厚みを残しつつも軽快なフィーリングだ。いくらでも鋭く強烈なトルクを発生できるところを電子制御でコントロールしているような印象で、フリクションを感じさせない軽いタッチの吹け上がりながら、回転上昇はスムーズそのもの。マフラーから太く音圧のあるサウンドが発せられてはいても、だいぶ緊張感は薄らいできた。
やや広めなハンドルバー以外は自然に感じられるライディングポジションに収まり、1速に入れてアイドリングでクラッチをつなぐ。スルスルと前進していくのは想定どおりなので、そこからアイドリングのままシフトアップしてみた。
2速、3速、4速では、シフトアップのたびにグイッと車体が前に出るのがわかる。5速では、少し“グイッと感”が薄まるが、エンストしそうな気配はない。
6速に入れると、さすがにエンジンはやや苦しげな気配を見せた。だが、それも最初の一瞬だけで、下がった回転はすぐに回復していく。平地では45km/hまで加速し、緩やかな坂も登って見せた。これ、仮に裏通りに入ったら速度オーバーである。アクセルは一度もひねっていないのに……。
「意外とフツー」な街乗りと高速道路のインプレッション
しばらく街乗りをしてみて、これは“普通のバイク”だとわかった。いや、いろいろと普通じゃないんだけれども、一般的なロードスポーツのように普通に乗れるのである。縦置きクランクの効能もあって、ロール方向の動きは1000ccクラスの軽さだ。ホイールベースが長く小回りが利きにくいのと、ライディングポジションがやや大柄なことを含めて言えば、“巨大なストリートファイター”といった風情である。
ブレーキも扱いやすく、普通に加速して減速、停止、交差点を曲がるといったシーンのすべてで、難しさを感じずに走ることができる。しいていえば、乗り心地は(クルーザーとして見れば)やや硬めだろうか。
エンジンは、始動時の印象そのままにスムーズな回転フィールが続く。パワーモード切替も試してみたが、もっともレスポンスのいい“スポーツ”でも十分に扱いやすい。いずれにしても、街中を常識的に走ろうと思うと1500rpmまでですべてが事足りてしまう感じだった。
ちなみに高速道路において、6速で100km/h巡行時の回転数は2300rpmほど。流すように走っていたこともあって、渋滞などで速度が落ちたときを除けば、シフトダウンの必要を感じる場面は皆無だった。
スポーティに走った際のハンドリングや電子制御の詳細については、丸山浩さんのレポート(3月号に掲載予定)をお待ちいただきたい。筆者の印象としては、ニュートラルな扱いやすさがあり、バンク角も十分。車重があって前後に長いぶん、走行ラインの修正にはやや気を遣うか……といったところだった。
[参考]ロケット3 RとVMAXの燃費
丸山浩さんのテスト時の燃費は下記のとおり。ロケット3はワインディングと高速移動を中心にした場合、10.025km/Lだった。同条件のVMAXは11.88km/L。高速道路の巡行を中心としたロケット3の燃費は17.75km/Lだったが、VMAXは同条件の燃費を計測していない(車両返却スケジュールの都合上……)。
2020年1月18日(土)より新型ROCKET 3 Rデビューフェア開催
2020年1月18日~2020年2月2日に開催される「トライアンフ新型 ROCKET 3 Rデビューフェア」では、ディーラーへの来場者にステッカーやオリジナルのサーモステンレスボトルなどがプレゼントされる。
1)来場記念品:新型 ROCKET 3 R オリジナルステッカー
フェア期間の2020年1月18日~2月2日、トライアンフ正規販売店来場者に新型 ROCKET 3 R オリジナルステッカーをプレゼント。※枚数限定
2)抽選でプレゼント:トライアンフオリジナル・サーモスステンレスボトル
フェア期間の2020年1月18日~2月2日、トライアンフ正規販売店来場者から抽選でトライアンフオリジナル・サーモスステンレスボトルをプレゼント。※点数限定
リヤタイヤ240mm倶楽部(勝手に命名) ※余談です
さて、丸山さんが比較試乗しているVMAXはリヤタイヤが200/50R18なので置いておくとして、ロケット3と同じ240mm幅のリヤタイヤを装着しているマシンは、ほかにいくつかある。
まずはドゥカティのディアベル1260&Xディアベル(240/45ZR17)だ。そして、ハーレーダビッドソンのFXDR 114やブレイクアウト114(ともに240/40R18)など。ほかにスズキのブルバードM109R(240/40VR18)もある。
この中で、筆者が試乗した経験を持っているのはドゥカティとハーレー。それぞれとのざっくりとした違いを申し上げてみたい。
まずドゥカティの2台は、やはりイタリアのスポーツバイクメーカーらしく、なかでもディアベル1260Sはライダーとの人馬一体感がハンパない。240mm幅の極太タイヤでもハンドリングを違和感なくまとめているのはロケット3と同じでも、乗り手が能動的に働きかければさらに活き活きと走りだす。1300cc近いLツインエンジンもトルク、パワーとも十二分であり、国産ビッグネイキッドに近い感覚で街乗り、ワインディング等を楽しめる。
ハーレーの2台は極太リヤタイヤの主張がやや強めで、一体感というよりは45度Vツインがリヤタイヤを通して大地を蹴る感触をとことん楽しむタイプ。とはいえ、スポーティに走らせるにはややコツがあるものの、思い通りに曲がれたときの充実感はかなりのものだ。
新型ロケット3はというと、巨大なものに跨っている充実感がまず大きく、それが思いのほか普通に乗れてしまうことに驚く。難しく考えなくても充実した走りが得られるが、巨体ゆえに挙動を乱さないような繊細な操作は必要だ。強大なトルクは電子制御によって調教されているので、2500ccという数字を必要以上に気にすることはないだろう。唯一採用しているシャフトドライブも、トルクリアクションのクセなどは全く気にならなかった。
いずれも大排気量を持つ巨大なバイクでありながら、ライダーに寄り添う特性に仕上げられているのは全車に共通しているところ。そのなかでも、2500ccの直列3気筒という他にない個性を持つロケット3は、代えがたい魅力を放っているといえよう。
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