昨年のEICMAなどの海外ショーに展示されてきたプロトタイプ「T7」が、テネレ700となり、ついにその市販予定車が登場。スペインで行なわれた試乗会に、「オフロードマシン ゴー・ライド(偶数月6日発売)」でコラム連載中のパリダカ・レジェンド三橋淳氏が参加。テネレ700をテスト&インプレッション!
シンプルにこだわりながらも、あらゆるシーンで楽しめる! 新型オフロードツーリングマシンだ
ビッグタンクに明るいライト。500〜600ccクラスのビッグオフロードマシンにそれらの装備を施したのが、80年代前期のパリダカの主流だった。どこでも走れるオフロードバイクの巡行距離を伸ばすことが、ツーリングマシンとしての優位性を高めた。その流れを汲んだヤマハのモデルが、XT600テネレだった。
さらに、高速走行できるように2気筒モデルが登場する。それがスーパーテネレだ。シングルエンジンのテネレと2気筒のスーパーテネレ。今回発表されたテネレ700は、2気筒だからスーパーテネレの流れを汲むと思いきや、そうではなく、テネレの後継モデルとして登場した。
YAMAHA TENERE700
従来のスーパーテネレは、他の2気筒オフロードマシンの例に漏れず、モデルチェンジするたびに巨大化し、オンオフモデルではあるものの、積極的にオフロードを走れるような車格ではなくなってしまった。
それを昔のコンセプトに引き戻したのが、テネレ700といえる。2気筒ではあるけれど、オフロードマシンにビッグタンクをつけた、あの頃のようなシンプルなバイクとして誕生したのだ。
TENERE700 RALLY
それはフォルムからも見て取れる。細くスリムなボディラインには、大型のキャリアもグラブバーもない。スクリーンも大型のものではない。そして電子制御はABSだけ。トラクションコントロールの類はついていない。本当にシンプルな設計だ。
「トラコンなんてエンジン特性がよければ、必要ないです」とエンジニアがきっぱりいい切るエンジンは、MT-07のそれだ。「このエンジンが完成した時に、その特性から、これは絶対にオフロードマシンに合う」と思っていた自信のエンジンでもある。
実際、このエンジンはとても乗りやすい。ギヤレシオと吸排気を若干変えている程度で、まさにオフロード向けのフラットな特性。山もないが谷もない。つまりとても乗りやすい。エンジニアが「自信がある」というのも、うなずける。フラットな特性は、裏を返せば面白味にかけるものだが、オフロードマシンとしては、5000回転からのトルクで気持ちよく加速する。この加速を遅いと感じるライダーはいないだろう。
700ccクラスとあって、他の2気筒アドベンチャーマシンに比べれば圧倒的に軽くてスリムだ。ハンドルはシッティングポジションでは高いが、ステムの位置とハンドルの位置がオフセットされておらず、スタンディングポジションでサスペンションを抑える動作がしやすい形状だ。シート高はスペックから感じる印象より低く、私だと膝が曲がるほど低い。標準体型の日本人なら、充分に足が届くはずだ。
しかし、重心は高めの印象だ。マシンが動いていればそんな印象はなく、1000ccオーバーのライバルと比べれば、これならオフロードで扱える、というイメージをライダーに与えてくれる。それに加えて扱いやすいエンジン。そしてスタンディングがしやすいのだから、オフローダーにとっては、さほど身構えなくていい2気筒バイクになっている。
それならモトクロスコースも攻められるのではないか? という問いには、NOといっておく。激しいジャンプなどでは、サスペンションが衝撃を吸収しきれないからだ。だが、そもそもこのテネレはそれを想定していない。あくまでも市販モデルとして、オフロードライディングを楽しむために作られているからだ。一部マニアのハードユースは想定していない。
つまりテネレ700は、昔のXT600テネレと同じく、長距離ライドができ、オフロードを難なくこなし、そして高速巡行もできてしまうオフロードツーリングマシンとして、進化を果たしたモデルというわけだ。
TENERE700 EXPLORER
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