BMW、ドゥカティ、KTMらによる1200cc超のハイエンドモデルが居並ぶ。いずれも電子制御と先進メカを駆使したゴージャス仕様だが、今年はR1200GSが進化。その走りに注目が集まる。アッパーミドル系ではKTMが新作を投入し、BMWとガチンコ対決。少しずつ数を増し、トレンドになりつつあるクラシカル系にも注目だ。
- 1 足まわりを差別化したバージョン違いにも注目
- 2 BMW R1250GS/HP/Adventure[王者に相応しい貫禄]上質、従順、安全。街から大陸横断まで
- 3 ローダウンも違和感なし
- 4 DUCATI Multistrada 1260S[速い、でもジェントル]ノンビリもイケイケも
- 5 BMW S1000XR[ネイキッドの運動性能]あきれるほどにスポーティ
- 6 KTM 1290 SUPER ADVENTURE S/R[どっちも超一流]仕様でキャラを特化
- 7 KTM 790 Adventure/R[Rはダート最強級]600ccオフの自在感
- 8 BMW F850GS[圧倒的万能感]この車格と特性なら扱える
- 9 BMW F750GS[どこまでも淡々と]手の内に収まる強さ
- 10 MOTO GUZZI V85TT[意外性のカタマリ]親しみやすい新世代
- 11 ROYAL ENFIELD HIMALAYAN[心くすぐる味と走破性]レアな空冷シングルADV
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足まわりを差別化したバージョン違いにも注目
海外勢アドベンチャーのトップモデルは、1200cc+αの大排気量を誇り、国産勢よりデカイ。そして、装備も飛び抜けて豪華だ(もちろん価格も)。トラコンやコーナリングABSなど電子制御をふんだんに搭載し、ライダーを手厚くサポートしてくれるため、巨艦ながら、安心感もあるのだ。
昨年はムルティストラーダ1200が1260に、今年はジャンルの立役者であるR1200GSが1250にプチ排気量アップ。2台とも可変バルブタイミング機構を導入しており、中低速トルクの厚みが自慢だ。
また、外国車ADVは、基本構成を共通としながら、足まわりを変更することで、オン向きとオフ仕様のバージョン違いを揃える場合が多い。この辺もライダーとして選び甲斐がある。
新作では、KTMの790アドベンチャーが登場。V85TTとヒマラヤンは、少しずつ増えてきたクラシカルADV。外観に反し、基本性能は高い。
BMW R1250GS/HP/Adventure[王者に相応しい貫禄]上質、従順、安全。街から大陸横断まで
モデルチェンジで1254ccに排気量アップし、11ps増を果たしたADVの代表格。従来から+84ccの排気量と5000rpmを境にバルブタイミングが切り替わるシフトカムにより、中低速トルクの厚みが確実に増し、ミッドレンジの加速も一段と重厚に。単純な怒濤のトルクではなく、緻密かつ上質。実に扱いやすいスムーズなトルクなのだ。パワーカーブは高回転域までシームレスで、カムの切り替えを強調する演出もない。また、メカノイズと排気音が抑えられ、ジェントル感が増した印象だ。
この巨体にしてハンドリングも思いのままだ。セミアクティブサスの追従性が秀逸で、オンではたとえ荒れた路面や多少のギクシャクしたアクセルワークでも挙動を乱すことなく、軽やかに自然に向きを変える。鋭すぎずダルでもなく、コーナーの大小を問わず、常に安心感にあふれる。峠では腕さえあれば相当な速さを見せつけ、街乗りでは取り回しのしやすさもある。そしてオフではトラクションをつかみやすく、コントロール性に優れるため、意外に軽快。もちろん高速道路を悠々と流すのも得意だ。ブレーキに関しても、テレレバーサスと相まって、強力なだけでなく、コーナリングABSなどとの組み合わせで安心。このバイクまかせによる安心度は当ジャンルでも随一だろう。
ローダウンも違和感なし
スポークホイールのHPに加え、キャストホイールを採用した標準車「プレミアムライン」とローダウン仕様の「プレミアムスタンダード」を展開。50㎜シート高が下がるローダウン版はサスストロークを短縮しながら、違和感は皆無。車体の重さは特に感じなかった。
DUCATI Multistrada 1260S[速い、でもジェントル]ノンビリもイケイケも
エンジンやサス設定を連動して変更できる4つの走行モードを備え、劇的にキャラクターが変わる本作。可変バルブ機構のDVTを採用したLツインは実にトルクフルだ。開け始めはマイルドながら、中速域から分厚いトルクが持続し、7000rpmからさらにもうひと伸びを見せる。回さなくても頼もしいので落ち着いた走りもできるし、ドゥカティらしいパワーを自在に引き出すことも可能だ。
車体に関しては、2018年型でホイールベースを56mm延長した効果もあり、挙動が穏やか。シャープ過ぎた1200時代に比べ、マシンとの一体感とフレンドリーさを兼ね備える。また、セミアクティブサスを採用したSは、洗練された乗り心地。ロングランでは確実に疲労を軽くしてくれる。
BMW S1000XR[ネイキッドの運動性能]あきれるほどにスポーティ
先代S1000RRをベースに持つクロスオーバー。このジャンルの外国車として唯一の直4は、低中速寄りにリファインしながら実にパワフルだ。車高が高く、バンクさせるにはそれなりの入力や操作が必要だが、それ以外はネイキッドのS1000Rと錯覚するほどハンドリングがスポーティ。車格は大きいものの、それを意識させない一体感がある。電サス、オートクルーズ、大型スクリーンにより高速巡航も快適。高い重心と出力特性のため、ダートは手強い。
KTM 1290 SUPER ADVENTURE S/R[どっちも超一流]仕様でキャラを特化
2気筒ながら、S1000XRに次ぐ160psを発生。パワーバンドが広く、速度域を問わず巨体を押し進めてくれる。走行モードは4種あり、最強の「スポーツ」ではSS並みのパワーが炸裂。F19&R17インチのキャストホイールとWP製の電サスを採用するオンロード向けのSは、モードに連動して足が硬めに調整され、フットワークも俊敏に。大柄な車体ながら、峠でもハイペースに駆け回れる。ハイスクリーンの防風効果も良好で、上体を起こしたままでも高速クルーズが快適だ。
Rは、F21&R18スポークホイールに機械式サスを搭載したオフ仕様。オンもこなすが、不整地での接地感と安心感が抜群だ。オフロードモードを試すと、ある程度の滑りを許容しながら安定して走行できた。
KTM 790 Adventure/R[Rはダート最強級]600ccオフの自在感
ついに登場したKTMのパラツインADV。STDはオン寄り、より足が長く太いRはオフ仕様だ。790デューク譲りの心臓は低中速向けに調教済み。音とパルス感はそのまま下のトルクが増しており、扱いやすい。が、その気になれば、やはり激しい。なじみやすいライポジと軽やかな車体は、600㏄オフ車に近い感覚。従来のシリーズにない自在感が楽しい。Rはウォッシュボードでも足が破綻せず、オフ性能ではクラス最強レベルだろう。
BMW F850GS[圧倒的万能感]この車格と特性なら扱える
2019年モデルでフルチェンジを受け、パラツインは793→853ccとなり、360→逆回転270度クランクに。フレームも一新した。心臓は、低速域でブロロロというVツイン的な鼓動を発しつつ、豊かなトルクを生む。リヤがしっかり路面を捉える感覚が強く、スロットルと直結したように車体を前に押し出してくれる。100km/hでは6速3800rpm程で振動も消失。レッドゾーンは9000rpm以降なので余裕があり、ここからの加速もスムーズだ。
F21&R17インチのため、ハンドリングは穏やか。過度なピッチングは抑えられているが、車体の切り返しは軽い。オフでは、軽量コンパクトな車体と厚いトルクで水を得た魚状態。1250GSではためらう寄り道も、コイツならその気にさせてくれる。
BMW F750GS[どこまでも淡々と]手の内に収まる強さ
F700GSが2019年モデルでF850GSと同様の270度クランク853ccパラツインを搭載した。前作より鼓動を伴いつつ低速域で粘り、4000回転から力強く加速。6000回転でさらにひと伸びする。開け始めのトルクがやさしく、全体にフラットな特性だ。F19インチのキャストホイールはロール方向の倒し込みが軽快で、リヤを中心に回り込むオフ車的な特性。高速域では直進性が高まる上に、振動が収まる。とにかく疲れない、ロングラン向きの性格だ。
MOTO GUZZI V85TT[意外性のカタマリ]親しみやすい新世代
同社自慢の縦置きOHV空冷Vツインを搭載したレトロ風味ADV。ライポジはオフ車的なアップライトで、着座位置も前気味。足着きも悪くない。心臓部は、吸気側にチタンバルブを採用するなど大きくメスが入り、3種類の走行モードも採用。総じて扱いやすい特性で、スムーズに高回転まで上昇する。スロットルの開け始めではタメがあり、大らか。振動や特有のトルクリアクションはグッチにしてはマイルドだ。
ハンドリングも、グッチらしいリヤを操る後ろ乗りではなく、意外にも前輪荷重で乗る現代的なものだった。なお、オフロードモードではリヤのABSがカットされ、フロントのABS介入がよりオフ向きに変更。テールスライドも可能で、これまた意外にもオフ性能が高いのだ。
ROYAL ENFIELD HIMALAYAN[心くすぐる味と走破性]レアな空冷シングルADV
現存する世界最古の2輪ブランドが初めて開発したSOHC単気筒を搭載。ロングストローク設定とフライホイールマスの重さからか、とにかく低回転域で粘り強い。レスポンス、吹け上がりはともに牧歌的。レッドゾーン付近まで回してもSR400ほど微振動が出ないのはバランサーのおかげだろう。車体はF21&R17インチにロングトラベルの前後サスを組み合わせる。サスの動きはやや硬めだが、砂利道や林間コース、舗装の峠道も不満なく走破できた。ブレーキは、舗装路での絶対制動力に少し物足りなさを感じるが、オフでのコントロール性は良好だ。エンジンは味わい深く、車体の基本性能も決して低くはない。空冷シングルを積む稀少ADVとして、付き合うほどに愛着が湧きそうだ。
【掲載インプレッションについて】本文は、本誌の膨大なデータベースから、様々なテスターのインプレを統合し、凝縮している。そのため掲載写真のライダーによるインプレとは必ずしも限らないので、ご留意を! また、限られたスペースを有効活用するため、車両の解説は最小限としている。マシンデータは関連記事をサブテキストとして参照されたい。
※表示価格はすべて8%税込です。
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