二輪整備士の就職率はほぼ100%

バイク業界の将来を担う、二輪整備士を目指す若者たち

  • 2019/7/17
二輪整備士を目指す若者たち

バイクのメンテナンスや修理を行う業務は、顧客の財産と安全を守る大事な仕事だ。分解整備を行うには国家資格が必要で、整備専門学校などに通って学び、資格を取得する若者が多い。そのような志に対し、二輪車メーカーと提携しての授業や課外活動に特色を打ち出し、二輪整備士の養成施設として学生の人気を呼んでいる学校がいくつかある。それらの学校を訪ね、二輪自動車整備士(二輪整備士)を目指す学生たちに将来への夢を語ってもらった。

二輪整備士の就職率はほぼ100%

バイクの分解整備を行う事業者になるには、全部で14種類ある自動車整備士の資格のうち、「二輪自動車整備士」以外の資格でも可能だ。しかし、バイクの整備を生業にするならば、やはり二輪に特化した二輪自動車整備士の資格(三級ないし二級)を取得することが望ましいだろう。

国土交通省自動車局整備課によると、二輪整備士の試験合格者は過去累計で三級資格が約3万人、二級資格が約1万4,000人(*注)。2018年一年間の試験合格者数をみると、三級が約190人、二級が約480人という実績だ。同課では、「自動車整備士全体の受験者が年々減少しているなかで、二輪整備士は過去15年間をみても一定の水準で推移しています」と話しており、人気は安定している様子。

また、今回訪ねたどの整備専門学校も「二輪整備士となれば就職率はほぼ100%」と話しており、就職先に困らない安心感が人気の追い風になっているようだ。

(*注)整備士の資格は更新制ではないため、永久付与となる。このため資格の保有者数は不明。

二輪整備専門の学科が人気――YIC京都工科自動車大学校

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YIC・二輪自動車整備科が人気

自動車整備の実務経験がない人を対象にした整備士養成施設は、専門学校など全国に約230校が指定されている。このうち、二輪整備士を養成可能な施設は約80校あるが、二輪車に特化した学科を持つ学校はわずか数校しかなく、そのひとつが「YIC京都工科自動車大学校」(京都市下京区)の二輪自動車整備科(2年制)だ。

同校教務課長の喜多好洋氏は、「この学科では国内外の種類豊富なバイクを教材にしており、さまざまな整備実習を積んで知識と技能を習得することができます。バイクの整備に特化しているので、将来バイク業界で働きたいという学生に最適です。大手二輪車メーカーや大手販売会社にも毎年人材を輩出しています」と話す。

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スズキ二輪技術講習会

同校では、近年、二輪車メーカーとの提携を積極的に行っており、スズキからは講師を招いて、同社の最新鋭のスポーツバイクを教材にした「スズキ二輪技術講習会」を実施し、学生から好評を得ている。

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校内で開かれるヤマハの企業説明会

また、ヤマハの主催による「企業説明会」も校内で実施されており、二輪自動車整備科のみならず大勢の学生が参加している。このガイダンスは毎年実施しており、同社の開発部門や整備部門へ採用される学生も出てきている。

「自動車整備に限らずいろいろな分野の専門学校に言えることですが、目標を持たずになんとなく就職対策で入学してくる学生も少なくありません。しかし本校の二輪自動車整備科は、どの学生も“バイク大好き”というのが伝わってきて、やる気が違うなと感じます」(喜多氏)

得意の英語を活かして海外にも挑戦したい

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少年期にカナダでひとり暮らしも経験したUさん

二輪自動車整備科2年のUさん(奈良県生駒市・21歳)は早くからアイスホッケーに親しみ、14歳でプロ選手を目指して、単身でカナダへ留学。スポーツ専門学校に通いながらひとり暮らしをしたという。「まったく言葉もわかりませんから、生きていくために必死で英語を勉強しました。炊事も洗濯も自分でやりました」 4年間をカナダで過ごし、英語力はネイティブ同然に。アイスホッケーで鍛えた屈強な身体ができ、生活力も身に付いた。

しかしプロ選手への壁は高く、Uさんは18歳で帰国。昔バイクに乗っていた両親の写真を実家でたまたま見つけ、「バイクかあ、いいなあ」と思ったそう。すると両親もバイクを積極的に勧め、Uさんはさっそく免許を取得して250㏄スポーツを購入、走る楽しさにのめり込んだ。「ところがあるとき故障して動かなくなったんです。自分の愛車をどうにもできないのが悔しくて、自分で原因を突き止めて整備できるようになりたいと、この学校を選びました」と言う。Uさんは「再び自分が打ち込める道を見つけた。いま、バイクの整備に没頭する毎日が楽しくて仕方がない」そうだ。

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課外実習で8耐のピット作業を体験

「忘れられないのは、昨年、課外実習で参加した鈴鹿8耐です」 地元京都の「山科カワサキKEN Racing」の好意で、同校の学生が8耐のピット作業を手伝うという実地学習に選ばれたのだ。Uさんら6名の学生クルーは、ピットインするマシンの給油とタイヤ交換を担当した。「独特なレースの雰囲気とライダーやスタッフの気迫に、ものすごいプレッシャーを感じました。絶対にミスしちゃいけないと、とにかく集中するのが精いっぱい。8時間を完走してマシンが無事帰ってきたときには、涙が止まらなかったです」と話す。チーム作業の厳しさと喜びを身をもって学ぶ、貴重な体験になったようだ。

Uさんは、来春から大手の二輪車卸販売会社への就職が内定した。「仕事を通じて、バイクの魅力を国内外に発信していくのが夢ですね」と、目を輝かせた。

Hondaのカラーが魅力――ホンダ テクニカル カレッジ 関東

「ホンダテクニカルカレッジ(HTEC)」は、本田宗一郎が設立した整備士養成の専門学校で、関東校(埼玉県ふじみ野市)と関西校(大阪府大阪狭山市)がある。

関東校を訪ねた。学科は4年制の一級自動車研究開発学科と2年制の自動車整備科があり、どちらの学科も二級二輪自動車整備士の技能を身に付けることができる。

教務部サービスエンジニア課 課長・熊原文人氏は、「本校では、ホンダのエンジニアが講師を務め、教材となる車両にはホンダのクルマとバイクを豊富に揃えています。ほかにも、開発工程の現場見学、サーキットでのレース観戦、モータースポーツイベントへの参加など、グループ企業のつながりをフルに活用した学校運営をしています。そして卒業生の8割がホンダ関連企業へと就職していきます」と、学校の特色を紹介する。

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クラブ活動に励むHTECの学生たち

キャンパスを案内してもらうと、校庭の一角にクラブハウスがあり、レースに出場するバイクや、燃費競技会に出場する車両づくりに、放課後の学生たちが楽しそうに取り組んでいる。クラブ活動が盛んなことも、学校の大きな特長とのことだ。

社会人としてのマナーが身に付いた

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Sさんはオフロード部で活躍中

自動車整備科2年のSさん(福島県出身・20歳)は、二輪整備士を志望しており、二輪車販売店への就職も内定している。「この学校を選んだのは、ホンダのブランドに魅かれたからです。ホンダのクルマやバイクが大好きです」

学校行事の一環で行われた「二輪車安全運転講習」は、自分が変わるきっかけになった。「安全についてしっかり考えるようになって、何か行動するときのマナーにも気をつけるようになりました」と話し、自分自身の成長を感じている。「仕事に就いたら、大好きなバイクを通じて、お客様と家族のようなつながりを持ちたいし、バイクに乗ったことがない人には楽しさを広めたい」と、いまから仕事に就くことを楽しみにしている。

アジア向けのコミューターを開発したい

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ミニバイクレースで表彰台を狙うSさん

「この学校にいると、いろいろなことにチャレンジしたくなるんです」と話すのは、一級自動車研究開発学科2年のSさん(福島県出身・19歳)。クラブ活動ではミニバイク部に所属してレースに出場しており、3年生になったら海外で行われるヒストリックラリーへ参戦したいという。入学当初は2年制の学科を選択していたが、もっと学んでキャンパスライフを楽しみたいと、4年制の学科に変更したそうだ。

「先生方の話を聞くうちに、バイクの世界のいろいろなことがわかってきて、興味が湧いています。将来はバイクの研究開発に携わりたいのですが、アジアの国々の暮らしに役立つようなコミューターを開発してみたいです。日本とはガソリンの品質が違うので、対応するタフなエンジンを研究したい」 自分のやりたい仕事がしっかり見えており、じつに頼もしいSさんだ。

難しい修理ほどやる気が湧いてくる

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クラブ活動ではジムカーナに励んでいるSさん

一級自動車研究開発学科3年のSさん(埼玉県出身・21歳)は、父親の影響でバイク整備に興味が湧き、メカニックを目指すことは自分にとって自然な成り行きだったと言う。「私は機械を見ると、なぜ動くの? とか、なぜ壊れたの? と”なぜ?”が止まらないんです。原因究明が面白いんですよね」

Sさんが一級の整備士を目指す理由も、上位の資格があるならその中味を身をもって知りたいからだ。「私は文系なので、難しい計算とかは苦手なんですが、突き詰めることで理解はできると思うんです。バイクの整備にしても、いわゆる”難修理”に取り組むのが好きで、手に負えない故障であればあるほどやる気が湧いてきます」 卒業したら、二輪車メーカーのメンテナンス部門の中でも奥の深い領域で仕事をしたいと考えているようだ。女性の二輪整備士はまだまだ少ないが、Sさんが道を一本切り開いてくれると期待したい。

カワサキコースを新設――日本モータースポーツ専門学校

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カワサキコースの学生と講師

「日本モータースポーツ専門学校(JMC)」(大阪市大正区)は、クルマのドライビングテクニックやメンテナンスに関する知識と技術を学べるユニークな学校だ。もともと三級自動車整備士を養成する学科のなかに「二輪レースメカニックコース」(1年制)があるが、2017年には二級整備士を養成する学科に「カワサキコース」(2年制)を新設した。

兵庫県明石市にメーカーと卸販売会社があるカワサキは、二輪整備士の育成に寄与し、若い人材の確保につなげるため、同校に対して一部インターシップ制度の導入をはじめとする協力を行っている。

JMCで教務リーダーを務める平井愼司氏によれば、「本校としては、学科にカワサキブランドを掲げることで、バイク好き・カワサキ好きの若者に注目してもらうことができます。講義にはカワサキから講師を招き、教材には最新機種のバイクを協力してもらっています。さらには、二輪車安全運転講習会の実施、開発現場や車検工場、販売店の見学、カワサキが主催するイベントへ本校のPRブースを出展するなど、密度の濃い連携協力をいただいているところです」

バイクの安心と楽しさをお客様に届けたい

二輪整備士を目指す若者たち

講義内容を振り返るFさん

カワサキコースの2年生・Fさん(大阪府八尾市・19歳)。「高校1年で二輪免許を取得して、初めて自分で中古の250ccスポーツを安く購入しました。ボロボロのバイクだったので、結局いろいろな装置や部品を自分で交換するハメになり、バイトで貯めたお金は全部バイクにつぎ込みました。でもそのおかげで、本気で整備を勉強する気持ちになったんです。ちょうどそんな時期に、この学校にカワサキコースができたと知って、入学を決心しました」

Fさんは就職も内定し、これからは実習の授業もいっそう本格的になる。「やはり自己流の整備でなく、先生に教わると、新しい発見がたくさんあります。整備の腕を磨いて、仕事ではバイクの安心と楽しさをお客様に届けたい」と話してくれた。

将来は自分のバイクショップをもちたい

二輪整備士を目指す若者たち

技術を極めたいというNさん

「女やから重たいの持てへんやろなあとか思われるんで、逆に見返したろっていう負けん気のほうが強いですね。見とけよ、できるし、みたいな感じです」と笑うのは、カワサキコースの2年生・Nさん(大阪市港区・19歳)。

祖父が二輪車販売店を営んでおり、バイクに囲まれて育った。「親には絶対負担かけへんからって納得させて、バイトして高校1年で免許を取って、新車のホンダ250ccスポーツをおじいちゃんとこで買いました」とのこと。高校時代はバイクで出かけるのが楽しい毎日。故障がなく修理するところはないが、「自分のバイクやし、消耗品を交換したり、ハンドルやステップを好みの位置に調整したり、あとは塗装を変えたくらいやけど、自分でメンテナンスしてます。もっと技術を窮めて、カッコいいメカニックになりたい。自分の店を持つのが夢なんです」

カワサキコースで指導に当たる株式会社カワサキモータースジャパン技術指導部の澤合高廣氏は、「この学科を選んだ学生のみなさんには、ぜひ二輪業界で活躍してもらいたいという思いがあります。カワサキコースを卒業したことを誇りに思ってもらえるように、もっと授業を充実させていきたい」と語る。

今回の取材のなかで学校の担当者は、「自動車産業と二輪車産業は、日本のモノづくりを守る”最後の砦”です。この業界を支えてくれる若い人たちをもっと増やして、しっかり育てなくてはなりません」と話し、教え子たちに大きな期待を寄せていた。

国土交通省自動車局整備課:03-5253-8111 http://www.mlit.go.jp
YIC京都工科自動車大学校 :075-371-4040 https://www.yic-kyoto-technical.ac.jp
ホンダ テクニカル カレッジ 関東:049-264-0121 http://www.hondacollege.ac.jp
日本モータースポーツ専門学校大阪校:06-6555-0150 http://jmc.ac.jp

※モーターサイクルインフォメーション2019年7月号(日本自動車工業会)掲載記事をベースに再構成

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カサ

カサ いわゆる"Web担"的黒子

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研二くんのゼッツーに憧れるも手が届かずZ400GPで卒輪(そつりん)した"自二車は中型二輪に限る"世代。あれから30余年を経てまさか再び二輪の世界に触れることになろうとは人生何が起こるかわからんもんだ(笑)