トライアンフのモダンクラシックシリーズの中で、ベーシックモデルと位置付けられる2台が、初のモデルチェンジを敢行。堅実な熟成が行われた’19年型ストリートツインとストリートスクランブラーは、ベースは共通だがまるで別物のように見事に作り分けられ、大幅なレベルアップを果たした。両車の試乗比較インプッション〈後編〉をお届けする。
↓【試乗比較〈前編〉を読む】↓
トライアンフのモダンクラシックシリーズの中で、ベーシックモデルと位置付けられる2台が、初のモデルチェンジを敢行。基本的な素性は従来型を引き継いでいるものの、堅実な熟成が行われた'19年型ストリートツイ[…]
試乗比較〈後編〉:似て非なる資質を備えたベーシックモデル
【TESTER】中村友彦(なかむら・ともひこ):新旧トライアンフに精通した、雑誌業界23年目のフリーランス。かつては、’76年型T140ボンネビルや、’10年型デイトナ675を愛用。
前編ではストリートツインとストリートスクランブラーに通じる印象を述べたものの、この2台の乗り味はほとんど別物である。以前から僕はそう思っていたのだが、今回は同条件で試乗することで、今まで以上に2台の差異を明確に理解できたと思う。
まず体格や技量を問わず、誰にでもオススメできるのは、ハンドルとシートが低く、車体姿勢の変化が控えめに設定されたツインだ。現在のモダンクラシックシリーズの中で、’59〜’80年代に生産された旧ボンネビルに最も近い資質を備えるこのモデルは、車格が小さいおかげで気軽に乗ってみたくなるし、混雑した市街地での扱いやすさは、明らかにスクランブラーより1ランク上。
ちなみに、今回試乗した2台のエンジンは基本的に共通だが(ただしスクランブラーの最大トルク発生回転数は、ツインより600rpm低い3200rpm)、排気音がしっとり&重厚なためか、巡航はツインのほうが気持ちよかった。一方のスクランブラーは、回転上昇&下降に伴う排気音の変化を楽しみたくなる特性で、実際にその特性を満喫しながら走っていると、車体にはツインより大きめのピッチングが発生する。
と言ってもその挙動は、マフラーの構成とライポジの違いによる、重心位置の高さを抜きにして語れないものの、スクランブラーは乗り手の操作に対する反応が明確だから、積極的にスポーツライディングを楽しみたくなるのだ。そしてそういう意識に対して、アルミ製のテーパーハンドルや、ツインよりやや硬めの前後ショック、オン/オフ指向の前後タイヤ(メッツラー・ツアランス)などが、実にいい仕事をしてくれる。もちろんツインだって、新型は従来型よりスポーツライディングが楽しめるのだが、操る手応え、コーナーを攻める喜びという面では、スクランブラーに軍配が上がるだろう。
余談だが、今回の試乗で僕がビックリしたのは、2台のステップが、形状が異なるだけではなく、位置もわずかに異なっていたことである。他メーカーがこの種の兄弟車を製作する場合は、ハンドルバーやシートを専用設計しても、ステップ位置は共通というケースがほとんどなのに……。もっともツインとスクランブラーには、その他にも数多くの相違点が存在するのだけれど、ハンドリングの要となるステップ位置を通して、僕はトライアンフのモダンクラシックシリーズにかける意気込みを、改めて実感したのだった。
●文:中村友彦 ●写真:真弓悟史
※ヤングマシン2019年2月号掲載記事をベースに再構成
このバイクに関連する記事/リンク
トライアンフのモダンクラシックシリーズの中で、ベーシックモデルと位置付けられる2台が、初のモデルチェンジを敢行。基本的な素性は従来型を引き継いでいるものの、堅実な熟成が行われた'19年型ストリートツイ[…]
2018年10月のインターモトショーから11月のミラノショーにかけて、世界のニューモデルが一気に登場したことは記憶に新しいだろう。WEBヤングマシンでは新車情報を逐一お届けしてきたが、本特集「2019[…]
トライアンフ モーターサイクルズ ジャパンは12月15日より2019年モデルの『ストリートツイン』と『ストリートスクランブラー』の販売を開始する。2車の最も大きな変更点は、10馬力(18%)のパワーア[…]