第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

連載:青木宣篤完全監修『上毛GP新聞』

モトGPの技術進化に思うこと【青木宣篤の“青きの眼”】

  • 2019/1/31
青木宣篤の上毛GP新聞

電気次第で急に速くなったり、下位に沈んだり……。今や「電気のチカラ」で勝負が決まるモトGP。走って気持ちいいかは別。

青木宣篤の上毛GP新聞

青木宣篤(あおき・のぶあつ):1993年よりロードレース世界選手権GP250にフル参戦を開始。GP500に昇格した1997年にはランキング3位でルーキーオブザイヤーを獲得した。1998年にそれまでのホンダからスズキへと移籍し、以降は2002~2004年のプロトン・チームKR時代を除いてスズキひと筋。2005年以降は主にテストライダーを務めている。

技術の進化は良い面も多いが失うものもある

いつの時代も、マシン開発に規制が加えられると、メーカーはいろんな「工夫」をするものだ。ライバルを出し抜くのがレースだから、開発努力も当たり前だ。

一方で、できるだけマシン開発費の高騰を抑えようというFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の考え方も分かる。というのは、電気まわりの開発はできる範囲が広いがゆえに、ベラボーにお金がかかってしまうからだ。

今や電子制御は、マシンパフォーマンスのうち相当に大きな割合を占める要素。トラクションコントロールやウイリーコントロールなどのいわゆる制御はもちろん、A/F(空燃比)や点火時期の進角遅角、マッピング、さらにはスロットル開度に対する実際のバタフライの開き方まで、エンジンにまつわるすべてを緻密にセットアップできる。しかも距離計算で場所を特定し、そこに合わせたセッティングまで可能だ。

たとえばスロットル開度ひとつとってみても、コーナーやストレートによってバタフライの開き量を変えることが可能だ。「ツインリンクもてぎのV字コーナーではライダーがスロットル全開にしてもバタフライはX%閉じておきましょう」といった具合に、本当に細かく制御できてしまう。

スロットル開度だけでも際限なくセットアップできるのに、とにかくもう、この調子で全部が全部細かくいじれてしまうのが最新モトGPマシンなのだ。

こうして緻密になるほどセットアップに莫大な時間とコストがかかる。ワンメイクタイヤ、共通E CUになった今も、結局はごく一部のファクトリーマシンにしかほとんど勝機がないのは、電子化の難しさの表れだ。

だから規制を強める。その網の目をかいくぐり新たな「工夫」する。さらに規制が強まる……。いたちごっこは延々続く。

さて、ライダー目線から電子化されたモトGPマシンについて語らせてもらうと、正直、気持ち悪い(笑)。何らかの制御が介入しているだけにバチッとしたダイレクト感は薄く、フワッとした不思議なフィーリングだ。

ラップタイムを見ても昔のグランプリマシンに比べてめちゃくちゃ向上しているから、確実に性能は上がっている。でも、失っているものも確実にある……。

ワタシ個人としては「キャブレター最高!」と言いたい。効率や性能ではFIに敵わないキャブだが、余分に噴いていた燃料が「味」になっていたんだろう。無駄な部分にこそ、操っていて気持ちいいと感じる人間味があるのだ。

※ヤングマシン2019年1月号掲載記事をベースに再構成

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高橋 剛

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カート上がりのバイク野郎。心震わす原稿が得意で、あのスポーツ名門誌・Sports Graphic Numberにも寄稿したりしなかったり。セッティングさえ出れば怖いものなしの隠れ文豪。