オートポリスで全開走行 パート2

2019新型ZX-10RR 204ps初試乗 丸山浩のエンジン解説

2018年9月3~4日、九州のオートポリスで新型Ninja ZX-10RRのサーキット試乗会が実施された。本誌からはメインテスターの丸山浩さんが参加し204psの新エンジンの内部をチェックした。

直接バルブを押さないフィンガーフォロワーで大きな効果

今回のパワーアップのキモとなるのがフィンガーフォロワーロッカーアーム。ロッカーアームには中心点に対してシーソー式のものがあるが、これは片側で押している。フィンガフォロワーの上面の滑らかな部分をカムシャフトが押してその反対側でバルブを押し下げるというシステムで、直でカムシャフトがバルブを押すのではなくて、中心点からずれたとこで押してバルブを押し下げる。これを使うことによってリフト量を増やし、カムシャフトのプロファイルを変えて中低速及び高速まで出せるというメカニズムだ。従来の直押しタイプでは、カムシャフトのリフト量とオーバーラップを確保するための幅の広さだけでパワーアップして高回転型になってしまうところを、フィンガーフォロワーを使うことによって全域をカバーできるパワー特性を作れるというところが今回のキモと言える。これで今回のZX-10Rは高回転のピークで3psアップ。なおかつそこに至るまでの低中速も全域でアップしているのが、フィンガーフォロワーバルブシステムの効果となる。

フィンガフォロワーをテコにして実際のカム山の高さ以上にバルブのリフト量を増やすことができるだけでなく、従来のタペット直打式に比べてバルブの往復運動の質量を20%低減させることができるようになり、最高出力発生回転が500rpm上昇している。
新型10Rシリーズのカムシャフト。従来の直押しタイプでは、リフト量を増やすためにはカム山を高くする他なく、限られたシリンダーヘッドのスペース以上に盛ることができなかった。ZX-10RRの従来型は、レース用のハイリフトカムを装着できるようにするためにヘッドを部分的に削って対応していたが、新型は全シリーズが無加工で装着できる。

パワーとハンドリングの改善に寄与するチタンコンロッド

さらに、もう一つキモとなるのはチタンコンロッド。スチールコンロッドと比べて持ってみても軽い。単体で102g、4本合わせて408gの軽量化が高速回転で回った時の慣性マスを減らすことができる一方、エンジンブレーキではよりクランク回転による慣性マスを発生させ、前輪に荷重を置くことができるという。軽くなるだけでなくフリクションを軽減させるなどして1psアップを獲得。だが、本来はハンドリングや加減速に対するレスポンスの方に恩恵をもたらすのがチタンコンロッドで、ZX-10RR=ホモロゲモデルの方に追加されている。現物には、パンケル社の刻印も確認できた。ピストンピンはスチール製、ピストンは特に圧縮比は変えていないが、形状は多少変えて新しいヘッドに合わせるようになっている。

上段の写真は上がRRのチタンコンロッドで下がSTDやSEのスチール製。下段は持ち比べたときの様子で、映像からもチタンコンロッドの方がかなり軽そうな様子が見て取れる。

ファンネルは2段式で全回転域に対応

もうひとつ、エアクリーナーボックスも変更されている。おむすび型のファンネルに対して吸入口は丸くなっており、中低速域は長いおむすび型のファンネルから吸気し、高回転域になると根本のすき間の部分からも吸って高回転のパワーも出すというもの。従来モデルでは通常のファンネルだったのだが、さらに前のモデルはこの2段式のファンネルを使っていたという。中低速域も持ち上げるという目的で再び採用されており、改めて今回のエンジンにはこの2段ファンネル仕様がよかったのだろう。さらに今回、エアフィルターもより空気抵抗の少ないエレメントを採用。もちろんレース用はもっと空気抵抗の少ないものを使っている。

ヤマハのYZF-R1は回転域によって高さが変わる電子制御の可変ファンネルを使用するが、ZX-10Rシリーズはシンプルな構造で同じ効果を狙った2段式を採用している。
【KAWASAKI Ninja ZX-10R 2019年型 国内仕様発売時期:2019年春頃】カラバリは写真のライムグリーン×エボニー×メタリックグラファイトグレーとパールストームグレー×メタリックフラットスパークブラックの2色。最高出力が203psになった他クイックシフターを新採用した。
【KAWASAKI Ninja ZX-10RR 2019年型 国内仕様発売時期:2019年春頃】カラバリはライムグリーンのみ。世界500台限定で発売される。チタンコンロッドを採用した204psのエンジンが特徴。
【KAWASAKI Ninja ZX-10R SE 2019年型 国内仕様発売時期:2019年春頃】カラバリはメタリックカーボングレー×ニュートロンシルバー×ライムグリーンの1色。昨年型から同じ色に見えるが色名も異なる新色。電サスに加え自己修復塗装を新採用した最上級グレード。


解説:丸山浩
「2019新型ZX-10RR 204ps初試乗 丸山浩の試乗インプレッション」記事はこちらへ。
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