マシン・オブ・ザ・イヤー2018
オートポリスで全開走行

2019新型ZX-10RR 204ps初試乗 丸山浩の試乗インプレッション

2018年9月3~4日、九州のオートポリスで新型Ninja ZX-10RRのサーキット試乗会が実施された。本誌からはメインテスターの丸山浩さんが参加し204psの新エンジンを下から上までチェックした。

【1本目】想像していたパッキーン! というパワーとは違う

スーパーバイクに対してこれは誉め言葉かどうか分からないが、非常に乗りやすい! ジョナサン・レイ選手がワールドスーパーバイクで3連覇しているのは、やっぱり乗りやすくなければダメなんだろうなと感じた。先ほどレイ選手にインタビューした時に、シャーシの方に何か新しいものは欲しくないのかと聞いたら、「シャーシはもう十分だ」と。あとやっぱりパワーだけということで、そのスピード感がどのくらいなのかと思い試乗したのだが、高回転域でパッキーンとパワーが出るというよりは、下から全体的にトルクを乗せてきており、パッキーンとうい感じではない。全体的にパワーが上乗せされているという形で、その分乗りやすいのだ。

例えば0→1000mの加速をする時に、高回転だけにパッキーンとパワーが集中するとフロント浮き気味になったりして、それが速いという印象にも繋がることもある。もちろんレイ選手は、コーナーの中らから速くなければいけないと求めており、それをするにはフィンガーフォロワーバルブは、入れることによって高回転も必ず出るのだが、中速域を殺さずに全体的にパワーを乗せている。それが、今回の一番やりたかったとだいうことを乗ってみてまず最初に感じることができた。どこかでパッキーンときてフロント浮き気味になってしまうというのがほとんどない。本当にきれいに立ち上がってどこまでも伸びていくという感じで高回転の伸びもいいという第一印象。乗りやすい。

そして、前モデルと比較して何が変わったかということだが、全体的に乗りやすいのでそれがすごく分かりにくい。だが、これで走ってタイムが出るのだったら、ライダーは苦労しなくて済むだろう。例えば、ストレートのスピード勝負ではライダーがどんなに頑張ってもカバーできないので、パワーはどれだけあっても足りるということはない。乗りやすさを損なわずさらにそこの上にピークパワーを上乗せするのはありがたいはずだ。

あと、クイックシフターもよかった。今回はアップ&ダウンがシリーズ全車に装備されたのだが、サーキットを走るのにクラッチは握らなかったと言ってもいいくらいだ。出て行って最初のうちはクラッチ握りながら様子をみて何回かやった後は、ブレーキに専念するだけでクラッチレバーを握らずにほとんどクイックシフターに任せて走れる。アップ&ダウンがほとんど気兼ねなくできるというのは、戦闘力としてはプラスだ。

【2本目】シャーシのフィーリングも自然で、ラインの自由度も高い

2本目もドライで走行。コース状況も分かってきて、全開全開で攻める感覚で走ることができた。まず、シャーシに関しても非常にスムーズでフィーリングいい。試乗したのは10RRなので装着されているピレリタイヤとの相性もあると思うが、攻めても攻めても足まわりが柔らかく感じられる。すごく動いているように感じるのだ。今回はチタンコンロッドによる軽量化によるハンドリングの変化から、サスペンションはダンピングを効かせてきたということだが、それでも柔らかく感じる。コーナーに入っていってフロントブレーキを引きずっている時は前下がりになるし、アクセルを開けていけばきっちりリヤが入るみたいな、そういう動きが分かりやすいのでマシンを扱いやすい。コーナーに入って向きを変えようかとか、行き過ぎたとかというのを調整できるレベルでマシンが動いてくれる。一発のラインしかないというのがなくて意外とラインに自由度があるというのもいいところだと感じた。

全開で走行すると、オートポリスでは2速以上を使うのは高速コーナー1つと、あとは2つのストレートくらいであとはほとんど1速で走れてしまう。エンジンは低中速があるから2速でも走れるのだが、1速でも上の方に回しても扱いにくさがない。ギャンギャン回ってギクシャクする感じがないの1速で引っ張り切っていても走れる。そして最後のもうひと引っ張りもできるので1速でも結構コーナーを回っていける。普通、上の方をあまり回しすぎると結構扱いづらくなってしまうもので、パワーは出ていてもコーナリング中に走りにくくなってしまうのだ。だが10RRは、ヘアピンだけでなく高速域まで行ってもそのまま高回転でずっと回っている時に、あまりギクシャク感がでない。これも幅広いトルクでどの回転域でも走らせられるという、そういったところでレースでもかなり勝負できるのではないかと思う。

トップエンドの回転を細かくチェックするとメーターでは1万3800回転あたりからレッドゾーンが切られるのだが、そのあたりをもうひと伸びさせている。本当にそこはスムーズに回って1万4400回転くらいで回転リミットがかかる。スーパーバイクのレギュレーションが、レース用ECUを使用した時でも回転はそこからプラス3%の範囲までということなので、元の回転リミットを少しでも上げたかったというのがあるだろう。そして、そこに至るまでの回転というのは十分に引っ張り切って使えるもので、ストレートエンドで思いっきり引っ張っても頭打ち感がない。とにかく引っ張って、引っ張ってレッドゾーンに入ってしまうという、トップエンドの回りの素晴らしさがある。さらに、エンドの最後絞り切ったところを使っているという感じがしない。普通に使っていけるというレベルで振動も少ないし、スムーズにモーターのように回っているところで1万4000回転くらいをと使うという、どの回転でも使ってくださいというところが素晴らしいエンジンに仕上がっている。

【KAWASAKI Ninja ZX-10RR 2019年型 国内予想発売時期:2019年春頃】オートポリスに登場したのは新型のZX-10RR。これまでのRRは黒くペイントされていたが、新型は原点のシンプルなライムグリーンを身に纏う。チタンコンロッドを採用しシリーズで最高の204psのパワーを発揮。世界500台限定で発売される。

【まとめ】新型ZX-10RRは勝負に徹している

エンジンパワー的には今までS1000RRが凄かった。あとはR1。CBRはそうでもないと思っていたが、2017年モデルでかなりパワーを出してきた。GSX-Rも基本乗りやすさでずっと勝負していたが、最新型ではさらにパワーが乗ってきている。カワサキはそういう意味ではパワー的に遅れていたのかも知れないが、今回やってきたのはピークパワープラス低中速も非常に重視するということで、ギミックではなく本当に全体の中で戦闘力を乗せようとしている。そう、10RRにはギミックは何もない。それでも勝てるマシンを造るというところがいいのでないかと思う。逆に言うと他のマシンたちは色々と付加価値を盛り込んでいる。メーターはテレビモニターみたいで何でも表示できるが、レースの時はそれらはほとんど見ないものだったりするのだ。

今他メーカーに対して本当に勝ちを狙えるものをカワサキのエンジニアは採用している。というかワールドスーパーバイクでは勝ち続けており、追い越されないようにするためにという、そこが凄いところだろう。そのために必要だったものがフィンガーフォロワーとチタンコンロッドだったのだ。今まで勝ち続けてきたマシンにさらにあと何をしようかというポイントを見ると、エンジンというものはどういうもので構成されていて何で勝とうとしているのかということがよく分かってくる。

シート高は835mmで先代と変わらず。足着き性はスーパースポーツの中では悪い方ではない。ライダーの身長は168cm、体重は61kgだ。

テスター:丸山浩
撮影:宮田健一/カワサキ
「’19新型NinjaZX-10R(ニンジャZX-10R)は3~4psアップを達成」記事はこちら
「【動画&解説】2019新型ZX-10RRがオートポリスでデモ走行」記事はこちら

いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)

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